『みち』 目次
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『みち』 ~道~ 第198回
正道が言っていた 『少しでも動物達を癒せる会話が出来ればと思っているのですが』 それを聞いた時に思い出したのがこの事だったのだ。
「なんて書いてたの?」
「動物と話がしたいって・・・」 それを聞いて呆気にとられたような顔をした暦が
「実家に帰ってさっき言ってた仕事しなさい。 それ以外にないわよ。 自信がないとかって言う問題じゃないじゃない」
「問題じゃないって?」
「あのときのことを思い出してよ」
「えっと・・・考える時間もなくて慌てて・・・他に何かあった?」
「そこよ。 考える時間もなくて書いたっていう事はどうでもいいことを書いたか、心の内を書いたかのどっちかだと思わない?」
「どうでもいいことじゃないのは分かってるけど」
「でしょ? 琴音の心の内を書いたのよ。 そのチャンスが来たのよ。 あの時の司会者が言ってたじゃない、書いた事によってその望みに向かって歩いていますって。 その望みが叶うチャンスが来たのよ。 自信がないなんて問題外よ」
「暦・・・」
「何?」
「説得力あるー」
「茶化してるんじゃないの」 そしてチラッと時計を見て
「さ、それじゃあそろそろ帰るわ」 残っていたお茶を飲み干し琴音の目をじっと見ると
「いい、その仕事をするのよ。 ・・・駄目だったらいつでも私が居るから」
「暦・・・」 胸にジンときた。
「あ、そうだ。 忘れる所だったわ。 これ、洗剤も雑巾も良かったでしょ?」
「暦・・・今の言葉の有難さが薄れるんだけど」
「それはそれ、これはこれ。 ね、良かったでしょ?」
「う・・ん」
「これ琴音の分」
「え? くれるの?」
「有難い言葉を聞かせてあげた私からのWプレゼント。 せいぜい掃除して使ってよ」
「有難う。 暦からもらった物だもの大事にしまっておくわ」
「しまってどうするのよ。 ちゃんと使うのよ」
「はーい」
「またそんな返事をする。 じゃ、今度こそ帰るわね」
「有難う。 助かったわ」 二人で廊下を歩き玄関に向かった。
「こちらこそ。 いい暇つぶしになったわ。 実家に帰った時に会える時間があるといいわね」
「あるといいんだろうけど、うちのお母さんが離さないだろうな」
「そうね、花嫁姿を見せない分おばさん孝行しなきゃね。 それじゃね」
「いらない事言わなくてもいいの! 気をつけて帰ってね。 今日はホントに有難う」
暦が帰った後、正道から渡された本をパラパラとめくりながら
「本当にいいのかしら・・・私で」 いらない事を考えてる間には電話をする所があるだろう?
「実家に帰って、あの土地で・・・実家? あ、電話しなきゃ!」 慌てて実家に電話を入れた。
「もしもし、お父さん? どうしたの? お父さんが最初に電話に出るなんて珍しいわね」
「うーん、まぁな。 それよりどうした?」
「年末に帰る日を言ってなかったなと思って」
「あ、そうか。 そう言えばまだ聞いてなかったな。 いつ帰ってくるんだ?」
「今日大掃除を済ませたからもういつでもいいんだけど、明日にでも帰ろうかしら?」
「あ、ああ・・明日か・・・」 返事がおかしい。
「なに? 出かけるの?」
「いや、そうじゃないんだけど・・・実はこの2週間ほどお母さんが熱を出しててな」
「え? そうなの? どうして電話してくれなかったの」
「お母さんが内緒にしておけって」
「あー、この間家に寄ればよかったわ」
「言うとそうやって家に来るだろうから連絡をするなって言われてたんだよ」
「どうしてよ」 少し怒ったように言い返した。
「お父さんはそんな事はどうでもいいだろうっていってるんだけどな、琴音がこっちへ何か分からん仕事をしに来てるだろう?」
「分からんって・・・説明したじゃない」
「ああ、それはいいんだ。 お母さんにしたら今琴音に熱をうつすとその話がオジャンになって これからも来てもらえなくなると思ってるんだよ」
「もう、お母さんったら、いらない事を考えて・・・。 熱は高いの?」
「いや、もう大分落ち着いて微熱を行ったり来たりだよ」
「お医者さんは?」
「行ったよ。 特に風邪でも何でもないみたいらしいけど薬をもらってる。 まぁ、歳だからそんなにすぐには改善しないだろうって言われたよ」
「風邪でもなくて大きな病気でもないのね」
「ああ、そうらしいから安心していいぞ」
「分かったわ。 時間はまだハッキリといえないけど、とにかく明日帰るから」
「ああ、気をつけてな」 電話を切った。
「お母さんったら・・・」 置いた受話器をじっと見ているといつも横に置いてあるメモとペンがない。
「あ、そう言えばテーブルの上で書いててそのままだったんだわ」 テーブルを見るとメモとペンが置かれたままだ。
テーブルまで行きメモを見た。
「暦の書いた五芒星・・・」 メモの一枚目に書かれたままである。 そのメモをじっと見ていると
「あ? え? もしかしたら・・・えっと、方角的にどうなるのかしら」 ビリっと破って手に取ると紙をクルクル回しだした。
「やだ、だからこんな時に方向音痴は困るのよね」 方向音痴が地図を見るときには、自分を中心として考えなくては分からない。
今の自分の状態、地図をクルクル回す様子のことを言っているのだ。 そしてやっと方向が決まったようだ。
今度は人差し指を使って
「今の私のマンションを出て会社の玄関がこっちの方向でしょ・・・階段を上がって事務所の窓が・・・あれ? どっちになるのかしら」 すると今度は紙を持ったまま自分が回りだし
「えっと・・・この方向ね。 こっちに玄関でしょ、階段をこう上がっていって・・・だから事務所のドアがこっちだから窓が・・・」 そしてようやく
「嘘でしょ。 ・・・でも間違ってないわよね」 もう一度クルクル回って確認をする。
「やっぱり?・・・信じられない」 信じてごらんよ。
「・・・会社から見えるあの山が五芒星の真ん中の五角形の中にある」 気付くのが遅いよ。 見てるこっちの目が回るかと思ったよ。
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『みち』 ~道~ 第198回
正道が言っていた 『少しでも動物達を癒せる会話が出来ればと思っているのですが』 それを聞いた時に思い出したのがこの事だったのだ。
「なんて書いてたの?」
「動物と話がしたいって・・・」 それを聞いて呆気にとられたような顔をした暦が
「実家に帰ってさっき言ってた仕事しなさい。 それ以外にないわよ。 自信がないとかって言う問題じゃないじゃない」
「問題じゃないって?」
「あのときのことを思い出してよ」
「えっと・・・考える時間もなくて慌てて・・・他に何かあった?」
「そこよ。 考える時間もなくて書いたっていう事はどうでもいいことを書いたか、心の内を書いたかのどっちかだと思わない?」
「どうでもいいことじゃないのは分かってるけど」
「でしょ? 琴音の心の内を書いたのよ。 そのチャンスが来たのよ。 あの時の司会者が言ってたじゃない、書いた事によってその望みに向かって歩いていますって。 その望みが叶うチャンスが来たのよ。 自信がないなんて問題外よ」
「暦・・・」
「何?」
「説得力あるー」
「茶化してるんじゃないの」 そしてチラッと時計を見て
「さ、それじゃあそろそろ帰るわ」 残っていたお茶を飲み干し琴音の目をじっと見ると
「いい、その仕事をするのよ。 ・・・駄目だったらいつでも私が居るから」
「暦・・・」 胸にジンときた。
「あ、そうだ。 忘れる所だったわ。 これ、洗剤も雑巾も良かったでしょ?」
「暦・・・今の言葉の有難さが薄れるんだけど」
「それはそれ、これはこれ。 ね、良かったでしょ?」
「う・・ん」
「これ琴音の分」
「え? くれるの?」
「有難い言葉を聞かせてあげた私からのWプレゼント。 せいぜい掃除して使ってよ」
「有難う。 暦からもらった物だもの大事にしまっておくわ」
「しまってどうするのよ。 ちゃんと使うのよ」
「はーい」
「またそんな返事をする。 じゃ、今度こそ帰るわね」
「有難う。 助かったわ」 二人で廊下を歩き玄関に向かった。
「こちらこそ。 いい暇つぶしになったわ。 実家に帰った時に会える時間があるといいわね」
「あるといいんだろうけど、うちのお母さんが離さないだろうな」
「そうね、花嫁姿を見せない分おばさん孝行しなきゃね。 それじゃね」
「いらない事言わなくてもいいの! 気をつけて帰ってね。 今日はホントに有難う」
暦が帰った後、正道から渡された本をパラパラとめくりながら
「本当にいいのかしら・・・私で」 いらない事を考えてる間には電話をする所があるだろう?
「実家に帰って、あの土地で・・・実家? あ、電話しなきゃ!」 慌てて実家に電話を入れた。
「もしもし、お父さん? どうしたの? お父さんが最初に電話に出るなんて珍しいわね」
「うーん、まぁな。 それよりどうした?」
「年末に帰る日を言ってなかったなと思って」
「あ、そうか。 そう言えばまだ聞いてなかったな。 いつ帰ってくるんだ?」
「今日大掃除を済ませたからもういつでもいいんだけど、明日にでも帰ろうかしら?」
「あ、ああ・・明日か・・・」 返事がおかしい。
「なに? 出かけるの?」
「いや、そうじゃないんだけど・・・実はこの2週間ほどお母さんが熱を出しててな」
「え? そうなの? どうして電話してくれなかったの」
「お母さんが内緒にしておけって」
「あー、この間家に寄ればよかったわ」
「言うとそうやって家に来るだろうから連絡をするなって言われてたんだよ」
「どうしてよ」 少し怒ったように言い返した。
「お父さんはそんな事はどうでもいいだろうっていってるんだけどな、琴音がこっちへ何か分からん仕事をしに来てるだろう?」
「分からんって・・・説明したじゃない」
「ああ、それはいいんだ。 お母さんにしたら今琴音に熱をうつすとその話がオジャンになって これからも来てもらえなくなると思ってるんだよ」
「もう、お母さんったら、いらない事を考えて・・・。 熱は高いの?」
「いや、もう大分落ち着いて微熱を行ったり来たりだよ」
「お医者さんは?」
「行ったよ。 特に風邪でも何でもないみたいらしいけど薬をもらってる。 まぁ、歳だからそんなにすぐには改善しないだろうって言われたよ」
「風邪でもなくて大きな病気でもないのね」
「ああ、そうらしいから安心していいぞ」
「分かったわ。 時間はまだハッキリといえないけど、とにかく明日帰るから」
「ああ、気をつけてな」 電話を切った。
「お母さんったら・・・」 置いた受話器をじっと見ているといつも横に置いてあるメモとペンがない。
「あ、そう言えばテーブルの上で書いててそのままだったんだわ」 テーブルを見るとメモとペンが置かれたままだ。
テーブルまで行きメモを見た。
「暦の書いた五芒星・・・」 メモの一枚目に書かれたままである。 そのメモをじっと見ていると
「あ? え? もしかしたら・・・えっと、方角的にどうなるのかしら」 ビリっと破って手に取ると紙をクルクル回しだした。
「やだ、だからこんな時に方向音痴は困るのよね」 方向音痴が地図を見るときには、自分を中心として考えなくては分からない。
今の自分の状態、地図をクルクル回す様子のことを言っているのだ。 そしてやっと方向が決まったようだ。
今度は人差し指を使って
「今の私のマンションを出て会社の玄関がこっちの方向でしょ・・・階段を上がって事務所の窓が・・・あれ? どっちになるのかしら」 すると今度は紙を持ったまま自分が回りだし
「えっと・・・この方向ね。 こっちに玄関でしょ、階段をこう上がっていって・・・だから事務所のドアがこっちだから窓が・・・」 そしてようやく
「嘘でしょ。 ・・・でも間違ってないわよね」 もう一度クルクル回って確認をする。
「やっぱり?・・・信じられない」 信じてごらんよ。
「・・・会社から見えるあの山が五芒星の真ん中の五角形の中にある」 気付くのが遅いよ。 見てるこっちの目が回るかと思ったよ。