『みち』 目次
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『みち』 ~道~ 第231回
それからはワインを飲みながら オードブルを食べ色んな話をしていたが急に暦が
「ねぇ、ところで そっちの・・・動物とのお話? よく分からないけど進んでるの?」
「あ、そうそう。 どうなの?」
「う・・・ん。 何とも言えない」
「なにそれ?」 文香が言うと
「どう言えばいいのかしら。 何となくは分かるみたいなんだけどお話は出来ないの」 そして加藤玲が連れていた犬から感じた、見えたことを話した。
「へぇー 感情が伝わってくるんだ」 暦が不思議そうに言うと
「うん、でもその先なのよ。 だからどうすればいいのかっていう事。 何をして欲しいのか、どうしてほしいのか。 それが分からないと・・・」
「難しいのねぇ・・・私には皆無の世界だわ」 二人の会話を聞いていた文香が
「いいなぁ、そんな事ができて」
「文香ったらまだそんな事を言ってるの?」
「なに? 文香さんもそんな道に進みたいの?」
「暦、違うのよ。 文香は不思議パワーに憧れてるのよ。 私のしていることは不思議な事じゃないのにね」
「何言ってるのよ! 充分、不思議よ。 ねぇ、暦さんもそう思わない?」
「不思議といえばそうだけど・・・どっちかって言うと 私には難しいっていう感じかしら。 言ってみれば、私にはその力を欲しいと思う時がないって言うの? 必要性を感じないのね。 だから難しいと思うのかなぁ?」
「えー、必要性とかそんな事じゃなくて 全然こういう事に憧れないの?」
「憧れ? 残念ながらないわ。 その人その人に必要な色んな力が備わっているから それだけでいいんじゃないかしら?
だから私にあるものは琴音にも文香さんにもなくて、琴音にあるものは文香さんにも私になくて、文香さんも独自の物を持ってて、私はそれでいいわ」
「そんな物なのかなぁ? その人その人に必要な色んな力が備わってるって・・・暦さん、大人の言葉ねー」
「文香が子供過ぎるのよ」 冷たくあしらう琴音の言葉に続いて暦が話を戻した。
「でもその犬、なんなの? 山の中とか引っ付き虫とか」 それを聞いて文香も
「うん。 私もそれは不思議だわ」
「それがね、信じられないわよ」 そう言ってどうして山の中で発見されたか、そしてフードの事を話すと
「えー!」 二人が声を出して驚いた。
文香が
「今まで飼ってたのにどうしてそんな事ができるのかしら!」 怒りが隠せないようだ。
それを冷静に聞いていた暦が
「でもそれって そのレスキューの人の想像でしょ? 本当に飼い主がフードの処理に困って一緒に置いて帰ったかどうか分からないんじゃないの? それにそのフードだってそのワンちゃんのものとは限らないんでしょ?」
「そりゃ、そうだけど・・・でも色んなワンちゃんの色んなシーンを見てきた人よ。 判断は付くと思うわ」
「まぁねぇ、私達と比べられないほど 色んな状況の場数も踏んでるんでしょうけど」
「何においても 山の中に捨てるなんて許せないわよ。 どんな事が待ってるか分からないのに! 今まで可愛がっていてよくそんな事が出来ると思うわ。 信じられない」 文香が割って入る。
「でしょ? それにね」 今度は加藤玲から聞いたもう一つの話、捨てる前に異様なほど食べさせた話だ。
「なにそれ!」 二人が声を合わせて言った。
そして文香が先に
「心があるのかしら!」 そう言うと暦も
「ちょっとそれは酷いわね。 それだけ可愛いんだったら捨てなきゃいいのに。 誰かに貰ってもらうとか他に方法がなかったのかしら?」
「でしょ? 私もその話を聞いてお腹からイラっとするものを感じたくらいよ」
「自分勝手もいいところじゃない」 また文香が言うと今度は暦が
「琴音が珍しいわね」 唐突に言い出した。
「なに?」
「そんな事でイラってするなんて」
「そんな事って! 暦はこの話を聞いてなんとも無いわけ?」
「そうよ。 暦さんは腹立たしく思わないの?」
「そりゃ、腹立たしいわよ。 でもそういう意味じゃなくて。 こんな話を聞いた時の琴音だったらイラって感じてなかったはずじゃないの?」
「どういうこと?」
「その人間に対して感情を持つんじゃなくて、動物の方に感情が向いてたんじゃない?」
「え?」
「ほら、どっちがって言えばそんな話を聞いたら 動物の方の身体を心配したりしてたんじゃない?」
「あ・・・そう言われればそうよね」
「その時に何かあったの?」
「分からない。 でもそうだったわ。 あの時にお腹の中に感じるイラっとした気持ち・・・初めてだったような気がするわ」
「でしょ? 私も初めて聞いたと思う。 自分の気持ちも分析できないようじゃ 動物が何をして欲しいか分かるまで まだまだ正道さんの元で修行が必要ってことなんじゃない?」 暦、良くぞ言ってくれた。
「わぁ、そうかもね・・・まだまだなのね」 それを聞いていた文香が
「そっかー。 さっき琴音が言ってた意味が分かったような気がするわ」
「え? なに? 私何か言った?」
「暦さんの頭がきれるっていう事」
「え? 今の話で?」
「うん。 今、暦さんに言われてみればそうだもん。 琴音の日頃を知ってるのにその時の話に乗っちゃって、琴音の事を見られていない自分がいたのよね。
暦さんは話をしながら琴音をちゃんと見ていたのよね。 あー、これだけ知ってる琴音を見られてなくて ちゃんと人を見ていけるのかしら。 これから仕事やっていけるのかしら。 自信がなくなってきたわ」
「何言ってるのよ。 暦をその辺の人間と同じに考える方に無理があるのよ。 何たって暦お婆ちゃんなんだから」 その言葉を聞いて暦が
「え? 今なんて言った?」
「暦お婆ちゃん って言ったの」
「どうして私がお婆ちゃんなのよ」
「何でも知ってて 何でも考えられるから」
「えらく高く買ってくれてるのね。 そんな事ないわよ。 単にうちのお婆さんが物知りで色々聞かされてただけの話よ。 それに暦お婆ちゃんは止めてよ。 聞いただけで顔中に皺が入りそうだわ」 顔の皮膚を思わず伸ばした。
「暦さんヤメテー! その顔、笑えるー」
「自信がなくなってきた人が笑っててどうするのよー。 文香飲みすぎじゃないのー?」
「だってすごく楽しいんだもの。 私たち前世で絶対に知り合いだったんじゃない?」
「前世?」 暦が聞くと
「そう。 前の人生。 こんな風に一緒に笑ってたんじゃないかしら?」
「文香ったら 何を根拠に言い出すのよ」
「だって楽しくない?」
「ま、まぁ楽しいわよ。 だからってそれはどうだか分からないじゃない?」
「ちょっと考えてみようよ。 記憶が蘇るかもよ」
「記憶の蘇りなんて有り得ないわよ。 でも そうね、強いて言えば 友達って言うより文香が末っ子、暦が長女の三人姉妹とか?」
「どうして私が末っ子なのよ」
「私の長女の理由も聞きたいわね」
「暦さんは間違いなく長女よ」
「えー! どうしてー」
「暦、考えてみてよ。 文香が長女だったらどうするのよ。 私たち、とんでもなく手がかかる姉を持つ事になるのよ。 末っ子で好き放題遊ばせておいたほうがいいじゃない」
「ちょっとそれどういう事よ。 言っときますけど、今の人生で一番稼いでるのは私よ。 その時代もしっかりと働いてたに違いないわよ」
「あ、そこのところは琴音も私も言い返せないわね」
「そうねぇ・・・それじゃあ 文香がお父さんで暦がお母さん。 私が子供っていうのはどう?」
「えー! 今の時代でもお母さんしてるのに、その時もお母さん? いやだぁー」
「私も。 今も昔も働きづめなんて嫌よ。 それに暦さんは頭が切れるから、私と琴音の学校の先生だったかもよ」
「あ、それもいいわね」
「駄目よー。 私学校のお勉強嫌いだもの。 それに琴音の方が成績よかったじゃない」
「似たようなものじゃない」 琴音と暦の学校時代の話を聞いて文香が
「そういえば 琴音の入社試験の結果よかったものね」
「え? 入社試験の結果って・・・どうしてそんな事を文香が知ってるの?」
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『みち』 ~道~ 第231回
それからはワインを飲みながら オードブルを食べ色んな話をしていたが急に暦が
「ねぇ、ところで そっちの・・・動物とのお話? よく分からないけど進んでるの?」
「あ、そうそう。 どうなの?」
「う・・・ん。 何とも言えない」
「なにそれ?」 文香が言うと
「どう言えばいいのかしら。 何となくは分かるみたいなんだけどお話は出来ないの」 そして加藤玲が連れていた犬から感じた、見えたことを話した。
「へぇー 感情が伝わってくるんだ」 暦が不思議そうに言うと
「うん、でもその先なのよ。 だからどうすればいいのかっていう事。 何をして欲しいのか、どうしてほしいのか。 それが分からないと・・・」
「難しいのねぇ・・・私には皆無の世界だわ」 二人の会話を聞いていた文香が
「いいなぁ、そんな事ができて」
「文香ったらまだそんな事を言ってるの?」
「なに? 文香さんもそんな道に進みたいの?」
「暦、違うのよ。 文香は不思議パワーに憧れてるのよ。 私のしていることは不思議な事じゃないのにね」
「何言ってるのよ! 充分、不思議よ。 ねぇ、暦さんもそう思わない?」
「不思議といえばそうだけど・・・どっちかって言うと 私には難しいっていう感じかしら。 言ってみれば、私にはその力を欲しいと思う時がないって言うの? 必要性を感じないのね。 だから難しいと思うのかなぁ?」
「えー、必要性とかそんな事じゃなくて 全然こういう事に憧れないの?」
「憧れ? 残念ながらないわ。 その人その人に必要な色んな力が備わっているから それだけでいいんじゃないかしら?
だから私にあるものは琴音にも文香さんにもなくて、琴音にあるものは文香さんにも私になくて、文香さんも独自の物を持ってて、私はそれでいいわ」
「そんな物なのかなぁ? その人その人に必要な色んな力が備わってるって・・・暦さん、大人の言葉ねー」
「文香が子供過ぎるのよ」 冷たくあしらう琴音の言葉に続いて暦が話を戻した。
「でもその犬、なんなの? 山の中とか引っ付き虫とか」 それを聞いて文香も
「うん。 私もそれは不思議だわ」
「それがね、信じられないわよ」 そう言ってどうして山の中で発見されたか、そしてフードの事を話すと
「えー!」 二人が声を出して驚いた。
文香が
「今まで飼ってたのにどうしてそんな事ができるのかしら!」 怒りが隠せないようだ。
それを冷静に聞いていた暦が
「でもそれって そのレスキューの人の想像でしょ? 本当に飼い主がフードの処理に困って一緒に置いて帰ったかどうか分からないんじゃないの? それにそのフードだってそのワンちゃんのものとは限らないんでしょ?」
「そりゃ、そうだけど・・・でも色んなワンちゃんの色んなシーンを見てきた人よ。 判断は付くと思うわ」
「まぁねぇ、私達と比べられないほど 色んな状況の場数も踏んでるんでしょうけど」
「何においても 山の中に捨てるなんて許せないわよ。 どんな事が待ってるか分からないのに! 今まで可愛がっていてよくそんな事が出来ると思うわ。 信じられない」 文香が割って入る。
「でしょ? それにね」 今度は加藤玲から聞いたもう一つの話、捨てる前に異様なほど食べさせた話だ。
「なにそれ!」 二人が声を合わせて言った。
そして文香が先に
「心があるのかしら!」 そう言うと暦も
「ちょっとそれは酷いわね。 それだけ可愛いんだったら捨てなきゃいいのに。 誰かに貰ってもらうとか他に方法がなかったのかしら?」
「でしょ? 私もその話を聞いてお腹からイラっとするものを感じたくらいよ」
「自分勝手もいいところじゃない」 また文香が言うと今度は暦が
「琴音が珍しいわね」 唐突に言い出した。
「なに?」
「そんな事でイラってするなんて」
「そんな事って! 暦はこの話を聞いてなんとも無いわけ?」
「そうよ。 暦さんは腹立たしく思わないの?」
「そりゃ、腹立たしいわよ。 でもそういう意味じゃなくて。 こんな話を聞いた時の琴音だったらイラって感じてなかったはずじゃないの?」
「どういうこと?」
「その人間に対して感情を持つんじゃなくて、動物の方に感情が向いてたんじゃない?」
「え?」
「ほら、どっちがって言えばそんな話を聞いたら 動物の方の身体を心配したりしてたんじゃない?」
「あ・・・そう言われればそうよね」
「その時に何かあったの?」
「分からない。 でもそうだったわ。 あの時にお腹の中に感じるイラっとした気持ち・・・初めてだったような気がするわ」
「でしょ? 私も初めて聞いたと思う。 自分の気持ちも分析できないようじゃ 動物が何をして欲しいか分かるまで まだまだ正道さんの元で修行が必要ってことなんじゃない?」 暦、良くぞ言ってくれた。
「わぁ、そうかもね・・・まだまだなのね」 それを聞いていた文香が
「そっかー。 さっき琴音が言ってた意味が分かったような気がするわ」
「え? なに? 私何か言った?」
「暦さんの頭がきれるっていう事」
「え? 今の話で?」
「うん。 今、暦さんに言われてみればそうだもん。 琴音の日頃を知ってるのにその時の話に乗っちゃって、琴音の事を見られていない自分がいたのよね。
暦さんは話をしながら琴音をちゃんと見ていたのよね。 あー、これだけ知ってる琴音を見られてなくて ちゃんと人を見ていけるのかしら。 これから仕事やっていけるのかしら。 自信がなくなってきたわ」
「何言ってるのよ。 暦をその辺の人間と同じに考える方に無理があるのよ。 何たって暦お婆ちゃんなんだから」 その言葉を聞いて暦が
「え? 今なんて言った?」
「暦お婆ちゃん って言ったの」
「どうして私がお婆ちゃんなのよ」
「何でも知ってて 何でも考えられるから」
「えらく高く買ってくれてるのね。 そんな事ないわよ。 単にうちのお婆さんが物知りで色々聞かされてただけの話よ。 それに暦お婆ちゃんは止めてよ。 聞いただけで顔中に皺が入りそうだわ」 顔の皮膚を思わず伸ばした。
「暦さんヤメテー! その顔、笑えるー」
「自信がなくなってきた人が笑っててどうするのよー。 文香飲みすぎじゃないのー?」
「だってすごく楽しいんだもの。 私たち前世で絶対に知り合いだったんじゃない?」
「前世?」 暦が聞くと
「そう。 前の人生。 こんな風に一緒に笑ってたんじゃないかしら?」
「文香ったら 何を根拠に言い出すのよ」
「だって楽しくない?」
「ま、まぁ楽しいわよ。 だからってそれはどうだか分からないじゃない?」
「ちょっと考えてみようよ。 記憶が蘇るかもよ」
「記憶の蘇りなんて有り得ないわよ。 でも そうね、強いて言えば 友達って言うより文香が末っ子、暦が長女の三人姉妹とか?」
「どうして私が末っ子なのよ」
「私の長女の理由も聞きたいわね」
「暦さんは間違いなく長女よ」
「えー! どうしてー」
「暦、考えてみてよ。 文香が長女だったらどうするのよ。 私たち、とんでもなく手がかかる姉を持つ事になるのよ。 末っ子で好き放題遊ばせておいたほうがいいじゃない」
「ちょっとそれどういう事よ。 言っときますけど、今の人生で一番稼いでるのは私よ。 その時代もしっかりと働いてたに違いないわよ」
「あ、そこのところは琴音も私も言い返せないわね」
「そうねぇ・・・それじゃあ 文香がお父さんで暦がお母さん。 私が子供っていうのはどう?」
「えー! 今の時代でもお母さんしてるのに、その時もお母さん? いやだぁー」
「私も。 今も昔も働きづめなんて嫌よ。 それに暦さんは頭が切れるから、私と琴音の学校の先生だったかもよ」
「あ、それもいいわね」
「駄目よー。 私学校のお勉強嫌いだもの。 それに琴音の方が成績よかったじゃない」
「似たようなものじゃない」 琴音と暦の学校時代の話を聞いて文香が
「そういえば 琴音の入社試験の結果よかったものね」
「え? 入社試験の結果って・・・どうしてそんな事を文香が知ってるの?」