『---映ゆ---』 目次
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タム婆がトデナミに支えられ長の小屋へ向かっていった。 これからのことを話しに行ったようだった。
手持ち無沙汰になったシノハがラワンの元に行くと、村の若い女たちと子供たちがラワンの元に居た。
「え? 珍しい・・・いや、いつもそうだったのか?」 相変わらずずっとタム婆の小屋に居たシノハが初めて見た光景だった。
シノハの足音に気付いたラワンが顔を振りシノハを見た。 すると女たちも同じようにシノハに振り返る。 かすかに、キャッと言う声が聞こえた・・・ような気がした。
シノハが近づくと女たちが指先を額に当てて軽く膝を折る。 女の挨拶。 それを受けてシノハも右手を握り締めると左胸元に当てた。
「ラワンがなにかご迷惑でも?」 当たり障りないの質問を目の前にいる3人の女に問うた。
「いいえ、村の馬たちと違ってラワンはとてもいい仔なので、時々こうしてラワンにお話を聞いてもらっているんです。 ね、」 と、あとの二人を見た。
「そうですか。 ご迷惑をかけていないのでしたらそれで・・・」 聞いたラワンがブフンと鼻をならしシノハを睨んだ。
「あ、やっぱり言葉を分かってくれてる」 一人が嬉しそうにラワンの首を撫でる。
「ユンノ、だから言ったでしょ。 ラワンって村の馬たちとは大違いだって」 最初に話した女が言う。
「我はシノハと申します。 ユンノさんと仰るのですか?」 名を言われ、ユンノが顔を赤らめて頷いた。
「ズークの種はみな頭がいいのです。 そして言葉だけでなく、通じると心で話せる種なのです」 シノハに見つめられ、どんどん顔が赤くなっていく。
「・・・はい」 赤くなった顔を見られまいと、両の手で頬を抑える。
「他の女たちが見当たりませんが?」 辺りを見回し問う。 男たちは村に行っているということは知っている。
「今日は男たちと村に行った者と、森へ実をとりに行った者とに分かれているので、私たちが子守りをしているんです」 初めて喋る残りの一人が言ったが、その目を真っ直ぐに見て話を聞くシノハにこれまた頬を赤らめた。
「そうでしたか」 赤い頬に笑みを返す。
今喋った女も両手で頬を抑え、ユンノと目を合わせた。 女達の衣の裾を掴んで、おっかなびっくりな目をしている子供が5人。
「もしかして、この子たちも地の怒りで怪我を?」
「はい」 両の頬を抑えながらさっきの女が返事をして「でも、もう大丈夫よね」 と子供に話しかけた。
話しかけられた子にシノハが目を合わせしゃがんだ。
「我が名はシノハと言う。 名は何という?」 聞かれた子供が不安そうな顔で女を見上げた。
「トマムと言います」 女が子供に代わって名を言う。
「トマムか。 痛い所はもうないか?」 コクリと頷く。
「薬草を飲んだか?」 これまたコクリと頷く。
「苦かっただろう?」 口元をほころばせコクリと頷いた。
「我もトデナミが作ってくださった薬草を飲んだが苦かった」 子供が女の衣の裾を離して、その小さな手で口を押えて笑い出した。
「ははは、それだけ笑えれば元気だな」 言うと立ち上がり、最初に話してきた女に問うた。 他の二人に問うには少々顔が赤すぎたからだ。
「タイリンも男たちと一緒に村に行ったのですか?」
「いえ、タイリンは水の守りをしています」
「あ、そう言えば婆様の小屋の前になかったなぁ・・・」 視線を横に泳がせた。
「水を作る袋ですか?」
「はい」
「皆の集まるところに置いてあります」
「そうですか。 ではちょっと見てきます」 言うとラワンを置いて歩き出した。
残った女たちはシノハの話題で盛り上がり、シノハのことを色々とラワンに聞くが、ラワンの表情からは答えが分からなかった。
皆の集まるところに行くと端っこでタイリンが水を入れた袋の前に座り込んでいた。
「あ、シノハさん」
「大変な役をさせてしまったな」
「いえ、落ちてくる雫を見ているのは楽しいです。 それに・・・」 言いかけて口を噤んだ。
「ん? なんだ?」 眉を上げて聞く。
「えっと・・・」 恥ずかしそうな顔をしているのを見て、言いたくないことではないのだなと判断した。
「なんだ? 言ってみるとスッキリするぞ」
「あの・・・女たちが・・・」
「女たち?」 頭を傾げる。
「はい。 ・・・女たちが、有難うって・・・」 聞いてシノハの顔がほころんだ。
「そうか、良かったな」 シノハの顔を見ると頷き下を向く。
少しの間をおいてシノハが話し出す。
「長が誰かを寄こしてこられたか?」
「あ・・・それはまだ」
「そうか。 今は村のことで人手が必要なんだろうけど、そろそろ水をとりに行かないといけないしなぁ。 あ、俺の手伝えるうちは手伝うが、その後のこともあるからな・・・」 あれからもう一度シノハは水をとりに行っていた。
「はい、筒の水が大分なくなってきました」
「そうか、出来るだけ水は置かない方がいいから、最後の筒の水がなくなったらまた俺がとりに行こう。 その時になったら教えてくれ」
「はい」 タイリンが返事をすると、二人の会話に他の声が混じった。
「シノハさん」 後ろから呼ばれた。
振り向くとさっきの女であった。 唯一、頬を赤くしていない女。
「あ、トラミン」 言ったタイリンの方を一瞬向いて、またトラミンと言われた女を見た。
「トデナミさんが探していらっしゃいました。 長の小屋に来てくださいということです」
「分かりました。 えっと・・・トラミンさんですね、有難うございます」 名を言われ、とうとう赤くなってしまった。
走って帰るトラミンの姿を見送ったタイリンが誰に言うわけでもなく 「あー、こりゃ大変だ」 と言う。
「なんだ?」 立ち上がりかけたシノハが聞くと、思いもしなかったことをタイリンが言った。
「今、女たちの間でシノハさんのことが噂になってるみたいなんです」
「え? そんなことはないだろう。 女達とはさっき始めて話しただけだぞ」
「ほら、一緒に川に行ったじゃないですか」 言いながら水の入った袋を指さした。
「ああ」
「あの日、この場所に女たちが居たでしょう?」
「ああ・・・飯を作ったりしてたよな」
「その時に女たちがシノハさんを見てたらしいです」
「俺を?」 ちょっと考えて、あの時誰かの視線を感じたのを思い出した。
「男たちが噂をしているシノハさんってどんな人だろうって」
「男たち?」 女や男が出てきて分けが分からない。
「はい。 暴れ馬を制したのを見ていた者が、凄かったって話をしてたり、ゴンドュー村の人たちが来たでしょ? 馬さばきが凄かったそうです。 そのゴンドューの人たちとドンダダみたいに対等に喋ってるのを見て、シノハさんに興味があるみたいです。 あ、それにラワンさんにも」
「え? ラワン?」 ラワンと言われて自分のことを聞くより、咄嗟にラワンのことを聞いてしまった。
「はい、ラワンさんが誰に言われたわけじゃないのに婆様を背にのせたり、婆様の身体の具合が悪いのを分かってゆっくり立ち上がったことも、考えられないって」
「へぇー」 タイリンの言う話よりなにより、タイリンの言葉の多さに驚いた。
「タイリン、みんなと喋るようになったのか?」
「あ・・・みんなとって言うか・・・女たちが話してくれるんです。 これを作ったおかげだと思います」 またもや水の入った袋を指さした。
「どんなことが切っ掛けであっても、俺はタイリンの楽しそうな顔を見ているのが嬉しいよ」 言って顔をほころばせると、やっと腰を上げた。
長の小屋に行くとタム婆とトデナミが居た。
長の手足の傷跡は残っているものの、もう不自由はないとのことであった。
「婆が世話になったな」
「いいえ、我はなにも。 ただ横に座っていただけです」
「トデナミに聞いた。 昼夜なく付いてくれていたそうだな。 お前がおらんとトデナミが倒れておっただろう。 我が村の大切な婆様とこれからの“才ある者” をよく守ってくれた。 礼を言う」
「大切な婆様? 気持ちが悪いのぉ」 タム婆のその声に長がコホンと咳をする。
「まぁ、こんな憎まれ口をたたくほどに元気になった。 お前のお蔭だ」 言われ今度は素直に頭を下げた。
「まだまだお前に居て欲しいんだが、あまり引き留めるわけにいかんのはわかっている。 だが、あと少しでいい。 もう少し婆が回復するまで居てくれないか?」
「はい」
「オロンガの村に迷惑をかけるな」
「いえ、セナ婆様が上手くやって下さっていると思います」
「そうか。 使いの用も大丈夫か?」
「その辺りもセナ婆様がして下さっていると思いますし、数日前に我の使いの先、ゴンドューの村人と会いました。 その時に話をしているのでゴンドューの村では分かってくれていると思います」
「ゴンドューの村人? どこでだ?」
「え? 聞いておられないのですか?」
「なんのことだ?」
「ゴンドュー村ではトンデン村の馬が逃げ出したと聞いて、集めにまわったそうです。 何頭逃げたかまでは分からなかったと言っていましたが、そうですね・・・我が見ただけでも15頭は連れてきていたと思います。 村に連れてきて、トンデンの誰かに引き渡したそうです」 シノハの話を聞きながら長の表情が変わってきた。
「ドンダダじゃな」 静かにタム婆が言った。
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- 映ゆ - ~Shinoha~ 第38回
タム婆がトデナミに支えられ長の小屋へ向かっていった。 これからのことを話しに行ったようだった。
手持ち無沙汰になったシノハがラワンの元に行くと、村の若い女たちと子供たちがラワンの元に居た。
「え? 珍しい・・・いや、いつもそうだったのか?」 相変わらずずっとタム婆の小屋に居たシノハが初めて見た光景だった。
シノハの足音に気付いたラワンが顔を振りシノハを見た。 すると女たちも同じようにシノハに振り返る。 かすかに、キャッと言う声が聞こえた・・・ような気がした。
シノハが近づくと女たちが指先を額に当てて軽く膝を折る。 女の挨拶。 それを受けてシノハも右手を握り締めると左胸元に当てた。
「ラワンがなにかご迷惑でも?」 当たり障りないの質問を目の前にいる3人の女に問うた。
「いいえ、村の馬たちと違ってラワンはとてもいい仔なので、時々こうしてラワンにお話を聞いてもらっているんです。 ね、」 と、あとの二人を見た。
「そうですか。 ご迷惑をかけていないのでしたらそれで・・・」 聞いたラワンがブフンと鼻をならしシノハを睨んだ。
「あ、やっぱり言葉を分かってくれてる」 一人が嬉しそうにラワンの首を撫でる。
「ユンノ、だから言ったでしょ。 ラワンって村の馬たちとは大違いだって」 最初に話した女が言う。
「我はシノハと申します。 ユンノさんと仰るのですか?」 名を言われ、ユンノが顔を赤らめて頷いた。
「ズークの種はみな頭がいいのです。 そして言葉だけでなく、通じると心で話せる種なのです」 シノハに見つめられ、どんどん顔が赤くなっていく。
「・・・はい」 赤くなった顔を見られまいと、両の手で頬を抑える。
「他の女たちが見当たりませんが?」 辺りを見回し問う。 男たちは村に行っているということは知っている。
「今日は男たちと村に行った者と、森へ実をとりに行った者とに分かれているので、私たちが子守りをしているんです」 初めて喋る残りの一人が言ったが、その目を真っ直ぐに見て話を聞くシノハにこれまた頬を赤らめた。
「そうでしたか」 赤い頬に笑みを返す。
今喋った女も両手で頬を抑え、ユンノと目を合わせた。 女達の衣の裾を掴んで、おっかなびっくりな目をしている子供が5人。
「もしかして、この子たちも地の怒りで怪我を?」
「はい」 両の頬を抑えながらさっきの女が返事をして「でも、もう大丈夫よね」 と子供に話しかけた。
話しかけられた子にシノハが目を合わせしゃがんだ。
「我が名はシノハと言う。 名は何という?」 聞かれた子供が不安そうな顔で女を見上げた。
「トマムと言います」 女が子供に代わって名を言う。
「トマムか。 痛い所はもうないか?」 コクリと頷く。
「薬草を飲んだか?」 これまたコクリと頷く。
「苦かっただろう?」 口元をほころばせコクリと頷いた。
「我もトデナミが作ってくださった薬草を飲んだが苦かった」 子供が女の衣の裾を離して、その小さな手で口を押えて笑い出した。
「ははは、それだけ笑えれば元気だな」 言うと立ち上がり、最初に話してきた女に問うた。 他の二人に問うには少々顔が赤すぎたからだ。
「タイリンも男たちと一緒に村に行ったのですか?」
「いえ、タイリンは水の守りをしています」
「あ、そう言えば婆様の小屋の前になかったなぁ・・・」 視線を横に泳がせた。
「水を作る袋ですか?」
「はい」
「皆の集まるところに置いてあります」
「そうですか。 ではちょっと見てきます」 言うとラワンを置いて歩き出した。
残った女たちはシノハの話題で盛り上がり、シノハのことを色々とラワンに聞くが、ラワンの表情からは答えが分からなかった。
皆の集まるところに行くと端っこでタイリンが水を入れた袋の前に座り込んでいた。
「あ、シノハさん」
「大変な役をさせてしまったな」
「いえ、落ちてくる雫を見ているのは楽しいです。 それに・・・」 言いかけて口を噤んだ。
「ん? なんだ?」 眉を上げて聞く。
「えっと・・・」 恥ずかしそうな顔をしているのを見て、言いたくないことではないのだなと判断した。
「なんだ? 言ってみるとスッキリするぞ」
「あの・・・女たちが・・・」
「女たち?」 頭を傾げる。
「はい。 ・・・女たちが、有難うって・・・」 聞いてシノハの顔がほころんだ。
「そうか、良かったな」 シノハの顔を見ると頷き下を向く。
少しの間をおいてシノハが話し出す。
「長が誰かを寄こしてこられたか?」
「あ・・・それはまだ」
「そうか。 今は村のことで人手が必要なんだろうけど、そろそろ水をとりに行かないといけないしなぁ。 あ、俺の手伝えるうちは手伝うが、その後のこともあるからな・・・」 あれからもう一度シノハは水をとりに行っていた。
「はい、筒の水が大分なくなってきました」
「そうか、出来るだけ水は置かない方がいいから、最後の筒の水がなくなったらまた俺がとりに行こう。 その時になったら教えてくれ」
「はい」 タイリンが返事をすると、二人の会話に他の声が混じった。
「シノハさん」 後ろから呼ばれた。
振り向くとさっきの女であった。 唯一、頬を赤くしていない女。
「あ、トラミン」 言ったタイリンの方を一瞬向いて、またトラミンと言われた女を見た。
「トデナミさんが探していらっしゃいました。 長の小屋に来てくださいということです」
「分かりました。 えっと・・・トラミンさんですね、有難うございます」 名を言われ、とうとう赤くなってしまった。
走って帰るトラミンの姿を見送ったタイリンが誰に言うわけでもなく 「あー、こりゃ大変だ」 と言う。
「なんだ?」 立ち上がりかけたシノハが聞くと、思いもしなかったことをタイリンが言った。
「今、女たちの間でシノハさんのことが噂になってるみたいなんです」
「え? そんなことはないだろう。 女達とはさっき始めて話しただけだぞ」
「ほら、一緒に川に行ったじゃないですか」 言いながら水の入った袋を指さした。
「ああ」
「あの日、この場所に女たちが居たでしょう?」
「ああ・・・飯を作ったりしてたよな」
「その時に女たちがシノハさんを見てたらしいです」
「俺を?」 ちょっと考えて、あの時誰かの視線を感じたのを思い出した。
「男たちが噂をしているシノハさんってどんな人だろうって」
「男たち?」 女や男が出てきて分けが分からない。
「はい。 暴れ馬を制したのを見ていた者が、凄かったって話をしてたり、ゴンドュー村の人たちが来たでしょ? 馬さばきが凄かったそうです。 そのゴンドューの人たちとドンダダみたいに対等に喋ってるのを見て、シノハさんに興味があるみたいです。 あ、それにラワンさんにも」
「え? ラワン?」 ラワンと言われて自分のことを聞くより、咄嗟にラワンのことを聞いてしまった。
「はい、ラワンさんが誰に言われたわけじゃないのに婆様を背にのせたり、婆様の身体の具合が悪いのを分かってゆっくり立ち上がったことも、考えられないって」
「へぇー」 タイリンの言う話よりなにより、タイリンの言葉の多さに驚いた。
「タイリン、みんなと喋るようになったのか?」
「あ・・・みんなとって言うか・・・女たちが話してくれるんです。 これを作ったおかげだと思います」 またもや水の入った袋を指さした。
「どんなことが切っ掛けであっても、俺はタイリンの楽しそうな顔を見ているのが嬉しいよ」 言って顔をほころばせると、やっと腰を上げた。
長の小屋に行くとタム婆とトデナミが居た。
長の手足の傷跡は残っているものの、もう不自由はないとのことであった。
「婆が世話になったな」
「いいえ、我はなにも。 ただ横に座っていただけです」
「トデナミに聞いた。 昼夜なく付いてくれていたそうだな。 お前がおらんとトデナミが倒れておっただろう。 我が村の大切な婆様とこれからの“才ある者” をよく守ってくれた。 礼を言う」
「大切な婆様? 気持ちが悪いのぉ」 タム婆のその声に長がコホンと咳をする。
「まぁ、こんな憎まれ口をたたくほどに元気になった。 お前のお蔭だ」 言われ今度は素直に頭を下げた。
「まだまだお前に居て欲しいんだが、あまり引き留めるわけにいかんのはわかっている。 だが、あと少しでいい。 もう少し婆が回復するまで居てくれないか?」
「はい」
「オロンガの村に迷惑をかけるな」
「いえ、セナ婆様が上手くやって下さっていると思います」
「そうか。 使いの用も大丈夫か?」
「その辺りもセナ婆様がして下さっていると思いますし、数日前に我の使いの先、ゴンドューの村人と会いました。 その時に話をしているのでゴンドューの村では分かってくれていると思います」
「ゴンドューの村人? どこでだ?」
「え? 聞いておられないのですか?」
「なんのことだ?」
「ゴンドュー村ではトンデン村の馬が逃げ出したと聞いて、集めにまわったそうです。 何頭逃げたかまでは分からなかったと言っていましたが、そうですね・・・我が見ただけでも15頭は連れてきていたと思います。 村に連れてきて、トンデンの誰かに引き渡したそうです」 シノハの話を聞きながら長の表情が変わってきた。
「ドンダダじゃな」 静かにタム婆が言った。