大福 りす の 隠れ家

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僕と僕の母様 第26回

2011年02月24日 13時15分09秒 | 小説
僕と僕の母様 第26回



この日からの僕は自分で言うのも何なのだが 完全にサックスにはまってしまった。

頭の中は いつもサックスの音色でカッコイイ曲なんかを 奏でたりしている。 現実は全然そうではないのだが。

しかしこの時はやる気ムンムンで サックスを続けていくぞと気持ちが高ぶっていた。 これから週に3回だけの練習が 待ち遠しくなるだろう。

でも その前に最初の自己紹介を しっかりと聞いていなかったから 誰が何という名前なのか、何年なのか、どの楽器をやっているのか 一人を除いてまったく覚えていない。 同級生の女の子が一人 フルートをやっているということだけは 記憶に残っているが 音階よりもこちらを覚えるほうが先決だ。  

そんな訳で順平と一緒に帰れる日が 今までより少なくなった。 それでも同じクラスだから 休み時間になると喋ったり、学校へ一緒に行ったりと 二人の仲が遠くなったという訳ではなかった。

僕は週に3回の練習日を楽しみに 放課後になると少しでも早くサックスを吹きたくて イソイソと部室に向かって行った。

まずは 一人でも練習できる音階を十分に練習した。 そしてロングトーンだ。 これは長く息を続けて ずっと同じ音を吹き続けるのだが 結構しんどいのである。

部長も補講の合間を縫って 時々教えに来てくれた。

二度三度同じ事を言うようだが この学校は部活が盛んではない。 その証拠となったのが サックスをよくよく見るとサビだらけなのだ。

最初はドキドキと嬉しさのあまり 気がつかなかったどころか ピカピカ光ってさえ見えてたのに 人間の目っていうのは どうなっているのだろう。

でもこの僕の下手な練習にも オヘソを曲げずに付き合ってくれていると思うと なんだかそのサビさえも ワンポイントに見えてくる。 これを欲目と言うのだろうか。
 


こんな僕の毎日に順平も刺激されたのか 何日か経ったある日 学校に向かう電車の中で 順平がこんなことを言ってきた。

「学校の近くにエレキの教室があったんだ。 今日練習休みだろ? 見に行くのついて来てよ」

その日の授業は短縮時間帯で その上先生の都合で 6時間授業のところが5時間目で終わるから そんなに遅くなるわけでもないかと思い 一緒について行くことにした。

前の事があるから コイツは何を言い出すか分からない と気を張りつつも その日の授業が終わり 順平と一緒に学校を出てその教室に向かった。

学校から駅に向かう途中の道を少し外れたところに その教室はあった。 二階建ての小さなビルのような建物だ。

レッスン自体は二階でやっているらしく 一階はガラス張りになっていて 電子ピアノとかが置いてあるのが見えた。

そのビルの中に入ると 奥の端っこのほうにそんなに大きくはないけども 二階へ上がっていける階段があった。 階段のある壁に「エレキ教室こちらから」 と書かれた張り紙があった。

「あの階段を上がっていくんだね。 上について来て」 順平がそう言った。

二度とあの時のヘマはしない、返事は「NO」 だ。



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