大福 りす の 隠れ家

小説を書いたり 気になったことなど を書いています。
お暇な時にお寄りください。

僕と僕の母様 第117回

2011年06月30日 13時35分51秒 | 小説
『僕と僕の母様』  目次

第 1 回第 2 回第 3 回第 4回第 5 回第 6 回第 7回第 8 回第 9 回第10回
第11回第12回第13回第14回第15回第16回第17回第18回第19回第20回
第21回第22回第23回第24回第25回第26回第27回第28回第29回第30回
第31回第32回第33回第34回第35回第36回第37回第38回第39回第40回
第41回第42回第43回第44回第45回第46回第47回第48回第49回第50回
第51回第52回第53回第54回第55回第56回第57回第58回第59回第60回
第61回第62回第63回第64回第65回第66回第67回第68回第69回第70回
第71回第72回第73回第74回第75回第76回第77回第78回第79回第80回
第81回第82回第83回第84回第85回第86回第87回第88回第89回第90回
第91回第92回第93回第94回第95回第96回第97回第98回第99回第100回
第101回第102回第103回第104回第105回第106回第107回第108回第109回第110回
第111回第112回第113回第114回第115回

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僕と僕の母様 第117回



「本当なんだってば ・・・いや、本当じゃない 部分もある。 ・・・えっと、大袈裟でした」 ちょっと思い出して テンションが上がってしまったのだ。 正直に大袈裟だったと 告白した。

「一人で何言ってるの? 頭でも打ってきたの?」 呆れた様に 言ってくる。

「きちんと話すと、僕は僕の班で 一番上手だったんだ。 インストラクターの人が そう言ったんだ」 落ち着いて話そう。

「一番上手って 初心者ばっかりの班でしょ。 陵也は初心者じゃないんだから 最初は上手で 当たり前じゃない。 それに一番上手って言うのも 怪しいもんだわ。 初心者って言っても みんなだって 段々上手になってきてたでしょ」



以前母様に聞いたのだが 母様が始めてスキーをしたのが 今の僕と同じ歳くらいで 学校の先生に つれていって貰ったらしい。 一週間ほどの お泊まりだったらしいが あくまでも名目が クラブのトレーニングだったから 相当きついものだったらしい。 

ほんの5分、10分ほど スキーの板の 使い方を教えて貰って その後にすぐ 上級者向きのリフトで 上まで上がって 行かされたそうだ。

そして坂の上で先生に「滑って降りろ」 と言われて 背中を押されたらしい。 最初は転けながらだったそうだが その日の内に ヘッピリボーゲンで 転げることなく 降りられたらしい。

そのハードトレーニングのおかげで 母様はすぐに スキーへの恐怖感が なくなったと言っていた。 実際、母様はもともと 恐怖感っていうものを 持っているのかどうか分からないが・・・。

二日目からは 先生がそこそこ教えてくれたそうで 一週間の間で 結構上達したらしい。

母様は世の中全員を 自分の計りと同じように計るので 三日も滑っていれば みんなそこそこ上手になると 思っている。

だが僕は 母様お墨付きの 運動音痴だから みんなより僕の方が 上達が遅いと思っているようだ。



「そんなことはないよ 本当にインストラクターさんが そう言ったんだもの」 そうして僕は 修了証の存在を思い出した。

「あ、そうだ見て見て」 リビングに 放ったままの鞄の中を ゴソゴソと探した。

「あった 見て、ちゃんと書いてあるでしょ」 修了証を母様に手渡した。

「何これ? 書いてあるって 修了証って書いてあるわよ。 あなたは本スキー学校の・・・」 と読み出した。

「違う違う、裏を見て」 修了証の裏に インストラクターさんからの 一言が書いてあるのだ。



『このスキー学校 よく頑張りました。

今回一番上手くなったのは 君だと思うよ。 最初、ハの字しかできなかったのに 最後には足をそろえて スピードの調整まで 出来るようになって すごいと思うよ。

これから またスキーをすることがあったら、もっと上を見て 体を前に出して滑れるようにしてみると もっと良くなると思います。』
 


「へー・・・少なからず本当・・・か?・・・」 まだ少し疑っているようだ。





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僕と僕の母様 第116回

2011年06月29日 13時45分36秒 | 小説
『僕と僕の母様』  目次

第 1 回第 2 回第 3 回第 4回第 5 回第 6 回第 7回第 8 回第 9 回第10回
第11回第12回第13回第14回第15回第16回第17回第18回第19回第20回
第21回第22回第23回第24回第25回第26回第27回第28回第29回第30回
第31回第32回第33回第34回第35回第36回第37回第38回第39回第40回
第41回第42回第43回第44回第45回第46回第47回第48回第49回第50回
第51回第52回第53回第54回第55回第56回第57回第58回第59回第60回
第61回第62回第63回第64回第65回第66回第67回第68回第69回第70回
第71回第72回第73回第74回第75回第76回第77回第78回第79回第80回
第81回第82回第83回第84回第85回第86回第87回第88回第89回第90回
第91回第92回第93回第94回第95回第96回第97回第98回第99回第100回
第101回第102回第103回第104回第105回第106回第107回第108回第109回第110回
第111回第112回第113回第114回第115回

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僕と僕の母様 第116回



母様も僕を見つけたようで トロトロと車をこちらに 動かしてきた。

車が僕の横に付いた。 僕は後部座席のドアを開けて 荷物を積み込み 助手席に乗り込んだ。

「お帰り」 そう言ってすぐに車を出した。 いつバスが来て 怒られるか分からないからだ。 母様はそういうシチュエーションが 大嫌いなのだ。

「ただいま」 シートベルトをしながら返事をした。

「どうだった? 楽しかった?」 前を見ながら聞いてきた。 当たり前か。 逆にこっちを見ながら 聞いてこられると 危ないか。

「うーん、まぁまぁかな」 シートベルトをし終わって ドカッと背もたれにもたれた。

「まぁまぁねー」 半分笑っている。

「そう、まぁまぁ 良くもなく悪くもなく」 僕も前を見ながら答えた。

「ふーん あ、それより行きは どうだった? 遅刻しなかった?」 ああ 覚えてたんだ。

「ああ 大丈夫、充分に間に合ったよ」

「よかったー、お腹空いた?」

「うん、すごく空いてる」

「帰ったら すぐに食べようね」 そんな会話をしながら 家に向かった。

帰るとすぐに母様は 僕の分の夕飯を暖め直して テーブルに並べていた。 

僕は洗濯物を 鞄から取り出したりと ガサガサとしていた。

「片づけは後でいいから 先に食べちゃいなさい」 僕は洗濯物を 洗濯かごに入れて お土産を リビングのテーブルの上に ポンと置いて キッチンのテーブルについた。

母様はすぐに 車の中での会話の続きをしだした。

「まぁまぁって、どんな感じだったの?」 僕の前にスプーンを置いて 母様も僕の前に座りながら そう聞いてきた。

僕が何らかの行事で 家を空けて帰った日のメニューは 必ずオムライスだ。 僕の大好物なのだ。 

僕にとって 何よりも心に残ったのが 同じ班の奴らの「止まれませーん」 と言う言葉だったので その事を思い出しながら 身振り手振りをつけて 話したのだが 思い出しただけで その時の光景が 鮮明に頭の中に映像化して出てくる。

面白くて面白くて 話しながらも 一人で笑っていた。

「まあ、楽しかったんだ」 僕の笑っているのを見て 母様がそう言った。

「楽しいって言うより 面白かったんだよ」

「笑えるって言うことは 楽しかった証拠 うん、よしよし」 そう言って母様は 一人で納得をしていた。

そんな風に言われると 確かに気分の悪いときに 面白いだけでは笑えないか。 僕は楽しかったのかな? 母様のマインドコントロールに かかってしまったようだ。

「それより聞いてよ」 思い出してそう言った。

「さっきから 聞いてるじゃない」 母様が笑いながら言った。

「僕は スキーの才能が あるかも知れない」

「はあ?」 何を言い出すのか、といった感じで 僕の目をのぞき込んだ。





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僕と僕の母様 第115回

2011年06月28日 14時56分45秒 | 小説
『僕と僕の母様』  目次

第 1 回第 2 回第 3 回第 4回第 5 回第 6 回第 7回第 8 回第 9 回第10回
第11回第12回第13回第14回第15回第16回第17回第18回第19回第20回
第21回第22回第23回第24回第25回第26回第27回第28回第29回第30回
第31回第32回第33回第34回第35回第36回第37回第38回第39回第40回
第41回第42回第43回第44回第45回第46回第47回第48回第49回第50回
第51回第52回第53回第54回第55回第56回第57回第58回第59回第60回
第61回第62回第63回第64回第65回第66回第67回第68回第69回第70回
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僕と僕の母様 第115回 



学校に着いて 先生の少しの話があって すぐに解散だ。

僕は誰かと一緒ということなく 大きな鞄を持って 駅に向かって歩き出した。

ホームで少し待っていると すぐに電車がやってくるのが見えた。 それと同時に 同じクラスの奴らが 何人か歩いてくるのが見えた。

「おう、陵也」 そう言ってこっちに 歩いてくる。

疲れているのに コイツらの相手をしながら 帰らなくてはいけなくなった。

一緒に電車に乗り込んで 全員疲れたように 空いている席にドカッと座った。

ああ、いくら元気のかたまりの コイツ達といえど さすがに疲れが出てきたのか。

そう思ったのも束の間、すぐに元気を 取り戻したかのように 色んな話をしだした。

適当に相づちを 打っていた。 どうせ幾つかの駅を越せば コイツ達は 一人一人降りていく。 

最後には 僕一人になって 少しは落ち着けるのだから。 そうしていると 案の定一人二人と 順々に電車を降りていった。

「じゃあな」

「おう、その辺でバテテ 寝ころぶんじゃないぞ」 僕はそう言って コイツらを電車から見送った。

全員が降りていってから 母様に電話を入れた。

「もしもし」 母様が電話に出た。

頼み事をするから 申し訳なさそうに「あ、僕チャンです」 小さな声でそう言った。

良かった、お風呂に入っていたりしたら どうしようかと思った。

「は? どなた様?」 分かっててそう言う。

「あなたのカワイイ息子さんです」 馬鹿な僕だ 電車の中で恥ずかしい。

「私に息子はおりません」 いつまでやらせるんだ。

「あのう、駅までお迎えに 来ていただけますでしょうか」 こういう時のお願い事をする僕は大抵敬語だ。

「今どこにいるの?」 やっと終わってくれた。

「電車の中。 後10分くらいで着く」

「10分? 陵也の方が早くついて 待ってなきゃいけないけどいい?」 いいも何も 僕は帰る足がないんだ。

「待ってます」

「じゃ、今からすぐ出るから電話切るね」

「はい、急がなくていいからね、よろしくお願いします」 またぶっ飛ばして くるつもりだろう。

本当はもっと早くに 電話を入れたかったのだが 友達の前で 迎えに来ての電話は しにくい。

電話を切って 電車の窓から外を見ると もう遅い時間になっていたから 真っ暗だ。

電車が駅に着いた。

駅の階段を降りて バスターミナルのベンチで座って待っていると すぐに家の車がぶっ飛ばして やってくるのが見えた。

どう考えても 普通に走ってきて こんな早くに着くわけがない。 はあ、とんでもない運転を してきたようだ。

バスの邪魔にならないように 停留所から少し離れたところの 隅っこに車を止めて 僕を捜しているようだ。

僕は重い荷物を持って 車に向かって歩いて行った。




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僕と僕の母様 第114回

2011年06月27日 13時44分14秒 | 小説
『僕と僕の母様』  目次

第 1 回第 2 回第 3 回第 4回第 5 回第 6 回第 7回第 8 回第 9 回第10回
第11回第12回第13回第14回第15回第16回第17回第18回第19回第20回
第21回第22回第23回第24回第25回第26回第27回第28回第29回第30回
第31回第32回第33回第34回第35回第36回第37回第38回第39回第40回
第41回第42回第43回第44回第45回第46回第47回第48回第49回第50回
第51回第52回第53回第54回第55回第56回第57回第58回第59回第60回
第61回第62回第63回第64回第65回第66回第67回第68回第69回第70回
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僕と僕の母様 第114回




「でも怪我しちゃうと 大変だしな それはどうだろうかなぁ」 そうだろ、そうだろ。

「先生、僕もそれやってみたい」 お前もか?

「絶対楽しいだろうな、僕もやりたい」 お前も?

「僕もやりたい、先生お願いやらして」 全員かぁ?

「うーん・・・怪我しないように 無理しないようにやれる?」 風向きがおかしいぞ。

「はい、無理はしたくても 出来ませんから」 じゃあ、やめようよ。 僕から見ても 充分危ないぞ。

「・・・よし、やってみようか」 嘘だろう、クビになっても 知らないぞ。

こんな感じで 残りの時間は リフトに乗っては滑り降りて そしてまたリフトに乗って ということを繰り返していたが やっぱり止まらずに ずっと滑り降りてくるということは 時間的に言っても 無駄がないためか 中身の濃い時間が送れた。

そうなると 時間の経つのが早く感じられて あっという間に 終わりの時間になってしまった。

生徒全員で ゲレンデの隅に集合し 各班毎に インストラクターさんから 一人ずつに修了証を貰った。

後は学校の先生からの話があり 終了の挨拶があってから バタバタと全員民宿に帰った。



民宿の中でも 先生に時間を急かされながら 帰り支度だ。

自由時間に 沢山お土産を買っていた奴達なんかは 来たときよりも 荷物が増えているわけだから 四苦八苦しながら 荷物を鞄に詰めている。

僕はというと お土産といっても 小さなお饅頭の箱が三つだけだ。 一つは正太に 本当はストラップとかを 買いたかったのだが コレと言って気に入る物がなかったから お饅頭にしたのだ。 そして後の二つは家の分だ。

だから鞄に詰めるのも 簡単なものだった。

先生がみんなに「準備出来たか? 出来た者から玄関に 降りてこい」 と叫んでいる。

僕は一番に降りて行った。 それからゾロゾロと 何人かが降りてきたが なかなかみんな集まらない。 僕は退屈になって 何気なく食堂に入って行こうとした。 すると食堂で 例のヤンキーの塊が 娘さんに何かを渡していた。 どうも携帯ストラップみたいな感じだ。 そしてメモも 渡していたようだった。 きっと自分のアドレスでも書いて 渡していたのだろう。 相手は子供さんまでいるのに 諦めの悪いヤツだ。 

そんな光景を見ているうちに 何とか全員集まったようで 民宿の玄関を出て 全員でおばさん達に挨拶だ。

来たときのように みんな声をそろえて「お世話になりました」 と言っていた。

おばさんも「元気でね、またおいでね」 そう言いながら ビニール袋に入れたお米を

「私の実家で お米を作っているんだけど そのお米。 少しずつだけど 家に帰って食べてちょうだい」 そう言って一人ずつに 配ってくれた。

「ありがとうございます」 またみんなの大合唱だ。

おばさん達の見送りを受けながら 待っていたバスに乗り込んで 僕達は帰路に就いた。





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僕と僕の母様 第113回

2011年06月24日 16時07分55秒 | 小説
『僕と僕の母様』  目次

第 1 回第 2 回第 3 回第 4回第 5 回第 6 回第 7回第 8 回第 9 回第10回
第11回第12回第13回第14回第15回第16回第17回第18回第19回第20回
第21回第22回第23回第24回第25回第26回第27回第28回第29回第30回
第31回第32回第33回第34回第35回第36回第37回第38回第39回第40回
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僕と僕の母様 第113回



三日目も 同じような練習内容だった。

民宿の中の様子も そんなに変わり映えしなく いつも通り みんなが騒いでいるだけだ。

その翌朝、最終練習の日だ。 今日は午前中の研修で終わりだ。

「みんな集まって、今日は仕上げの日になるんだけど たった二日、三日の練習では なかなか思い通りに 滑れないと思う。 でもみんなの頑張りがあったから 初日に比べて 見違えるほどの上達ぶりだ。 今日は半日で終わってしまうけど 目一杯滑っていこう」 そうインストラクターさんが言ったら

「頑張ります」 なんてみんな勢いづいて 返事をしている。

昨日は目一杯みんな頑張っていたのだが この日は半分楽しみながら やっていたという感じだった。

例えば リフトに乗って 滑って降りてくるときなんか 僕がインストラクターさんに次いで 滑って降りて行き インストラクターさんの横に止まり その次の奴が 滑り降りてくるのを 待っていたときがあったが こっちに向かって 滑ってくるまでは 良かったのだが 僕達を通りすぎて そのままへっぴりボーゲンで滑っていく。

「おーい、何処行くんだー」 インストラクターさんが 大声で叫ぶと「止まれませーん」 とそのまま 下の方まで行ってしまった。

あーあ、といった感じで 二人で次の奴が 滑り降りてくるのを見ようと 上を見た途端 僕達の目の前を これまた次の奴が 勢い良く滑って行った。

「おーい、何処行くんだー」 同じ事を インストラクターさんが叫ぶと これまた同じように「止まれませーん」 と叫びながら 今度は坂の横に 落ちていかないように 積み上げられた雪の山に 突撃して行った。

後の二人も 同じようなもので そんな感じで 坂の途中に止まっていたのは 僕とインストラクターさんの 二人だけになったのだが その時にインストラクターさんが「みんなノリノリだな」 そんなことを言った。

「そうなんですか?」 え? 止まれないだけじゃないの?

「昨日までの スピードへの恐怖心とかっていうものが すっかりなくなって 思い通りに滑れないと言っても やる気があってこその暴走だからね。 怪我には気を付けなくちゃいけないけど 滑りたいと言う気持ちが 恐怖心を上回ったっていうのが嬉しいな」

僕は何と返事をして良いのか分からず「はぁ」 と訳の分からないことを 言っていた。

「さあ、早くみんなを 拾いに行こうか」 そう言って 二人でみんなを拾いに行った。

一人ずつ拾いながら 最後に下の方まで滑って行った奴の元に行くと

「先生、先生、ノンストップで 下まで降りられたよ」 と自慢気に言っている。

「転けずに降りられたことは すごいけど ストップできるように しなくちゃね」 そう言うインストラクターさんに反して コイツはとんでもないことを 言い出した。

「先生、滑ってるときは怖かったけど 滑り終わった今 すごく嬉しいんです。 次もリフトを降りてから止まらずに ずっと滑って降りて行きたいです」

無理だろう。





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僕と僕の母様 第112回

2011年06月23日 13時40分41秒 | 小説
『僕と僕の母様』  目次

第 1 回第 2 回第 3 回第 4回第 5 回第 6 回第 7回第 8 回第 9 回第10回
第11回第12回第13回第14回第15回第16回第17回第18回第19回第20回
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僕と僕の母様 第112回



家に帰って 母様が「お世話になった お礼を言うから 電話番号を教えて」 と言ったが 

「お母さんとは 全然考え方の違う人だから 止めといた方が 良いと思う」 そう言ったのだが 「お礼はきちんと言わなきゃ」 そう言ったので お菓子を手渡した時のことを話し 「普通はありがとうって言うよね」 と付け足した。 すると母様が

「ふーん、そのお母さんが どうのこうのって言うより「普通」 とか「ありがとう」 って言う陵也の感じ方が お母さんは嬉しいな。 今までのお母さんの言ってきたことを きちんと覚えてくれているんだっていう感じがする」 そう言った。

そして お礼の電話はしなかった。

実は中学の時にも 同じようなことがあって 母様は僕の「電話をしない方がいい」 と言うのを押し切って ありがとうの電話を したことがあるのだ。

その時の 相手のお母さんの態度に かなりビックリしていたようで 「色んな人がいるのね」 と一言いったことがある。 その時の教訓でか 今回は自分の考えより 僕の言うことを優先して 電話をしなかったのだ。

その時電話をして イヤな気持ちに なったのだろう。

前回にしろ今回にしろ 僕も相手のお母さんに 良い印象は無い。

僕から言わすと そんなお母さんの息子なのに 見た目はあんなのでも 事あるごとに「母ちゃんに聞いてみる」 とか「母ちゃんに言いつけてやる」 とかってセリフを よく耳にする。

究極に覚えているのが 2年になって間がない頃「母ちゃんに殺される」 とポツリ言った言葉が 僕の耳に入った。

何の事か分からないので 僕の隣にいたヤツに聞くと 携帯電話で とんでもないサイトに入ったらしく 十万円の請求がきたらしい。

丁度僕が聞いたコイツの携帯に 内容を詳しく書いて 相談メールを してきたらしいのだ。

この事は 誰にも内緒にしてくれと 言ってきたらしいが コイツは あちこちに喋っている。 黒板に 誰が書いたのか知らないが「十万」 と書いてあったりもした。

その様子に気付いた このヤンキーの塊はコイツに

「誰かに喋っただろう みんなの様子がおかしい」 僕とコイツが 話しているところにやってきて そう言ってきた。

「うん。 でも陵也にしか言ってない」 僕の名前を出した! 確かにさっき聞いたけど 何も言わなくても いいじゃないか。

「陵也、お前誰かに言っただろう」 ヤンキーが睨むと怖い。

「誰にも何も言ってないし 今聞いたとこだよ」 疑いの目で睨まれた。 するとその途端に座り込んで 半泣き状態になって

「どうしたら良いんだよ、十万なんて 俺持ってないし 本当に母ちゃんに殺される。 お願いだよ 何とか協力してくれよ」 と僕の隣のヤツに泣きついてきた。

何でこのヤンキーの塊は 特別仲がいいわけではない コイツに相談したんだろうと、最初疑問に思ったんだが この時に分かった。

この僕の隣にいるヤツは 半端無くお金を持っているのだ。 それを見据えて 相談を持ちかけて 何とか立て替えて貰おうと 思っているみたいなのだ。 そしてこいつ自身も 気付いているようで わざと相談に乗らない様子だ。

まあ、結局この事は 母親に相談するしかなくなって かなり半殺しの目に あったようなのだが。

それ以外にも クラスの誰かが このヤンキーの塊から iPodを借りようとして イヤホンを耳に当てたら 雑音が酷かったらしく そう言うと

「今、お前が壊したんだ。 弁償しなくちゃ 母ちゃんに 言いつけるからな」  と言うのだ。

このiPodは ヤンキーの塊の物ではなくて 母親の物を 勝手にコイツが持って出て 使っていたらしいのだ。

それにこの話しを聞く限りでは 既に壊れていたんじゃないかと 思うのだが 結局このヤンキーの母親が 直接壊したとされる 借りようとしただけのヤツの家に 電話をして そいつのお母さんに 全額弁償させたらしい。

色んな意味で 本当に怖いお母さんのようだ。 



そんな会話もあったりと この日も僕は 昨日と同じ行動をとって 眠りについた。






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僕と僕の母様 第111回

2011年06月22日 13時49分59秒 | 小説
『僕と僕の母様』  目次

第 1 回第 2 回第 3 回第 4回第 5 回第 6 回第 7回第 8 回第 9 回第10回
第11回第12回第13回第14回第15回第16回第17回第18回第19回第20回
第21回第22回第23回第24回第25回第26回第27回第28回第29回第30回
第31回第32回第33回第34回第35回第36回第37回第38回第39回第40回
第41回第42回第43回第44回第45回第46回第47回第48回第49回第50回
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僕と僕の母様 第111回



「乗ったよ、今日も乗ったし 何回も乗ったよ」

「それって 本当にリフトだったの?」 ゲレンデで リフト以外の何に乗るんだよ。

「間違いなくリフトだよ じゃあ今日そっちは 何の練習をしたの?」

「昨日と同じだよ。 昨日の復習って感じかな。 そしてメインの雪合戦、これが結構疲れるんだよな」

「雪合戦で疲れるの?」 身を乗り出して聞いた。

「そうだよ、当ったり前じゃん。 当てられないように 走り回るじゃん。 雪の上をスキーの靴で走るって 疲れるんだぜ。 そっちは雪合戦しないの?」 不思議そうに聞かれた。

「スパルタ練習のみ」 わざと力を入れて そう答えると

「初心者ランクでスパルタ? それってきつくない? 初心者は雪合戦でしょ」 そう言ってきたが よく考えると 僕もここに来るまでは そんな気持ちでいたのは確かだ。 だから気楽に このスキー研修を終わりたくて 初心者クラスにしたのを 思い出した。

「そう言われれば そうだよね・・・だけど滑れるって 楽しいもんだよ 明日頑張ってみれば」

「無理、無理、絶対無理、100%無理」 出た、工業科的セリフ。



そして今日も昨日と 同じように 夜が過ぎていこうとしていたが たった一つ 昨日と違っていたのが 夕飯の時だった。

例のヤンキーの塊の 配膳を手伝っていた奴なのだが 異様に大人しい。 その上先生に ついて回ってるのだ。 挙げ句の果てに 席を移動して 先生の横に座って 夕飯を食べだした。

よくよく見ると 先生に小声で何かを 言っている。 僕の隣に座ってたヤツに

「どうしたのアレ?」 そう言って指をさして聞いてみた。

「昨日先生に 卒業危ないみたいな事言われたじゃん だからどうやったら 確実に卒業できるかとか 「お願い先生卒業させて」 とかって 泣きついてんだよ。 その前に 三年に進級できるかどうかだってーの」 物まねしながら そう説明してくれた。

「ははは、やっぱり気にしてるんだ」 そう言うと

「俺アイツん家に 何回か行ったことあるけど あいつの母ちゃん怖いからな」 そう言ってきた。

確かに。 僕も一度 泊まりに行ったことがあったが その時に母様が「一日お世話になるんだから」 と言って お菓子を持たせてくれて「ちゃんと最初に挨拶したときに渡すのよ」 と言われて 僕は言われた通りにしたのだが その時のおばさんの態度に ビックリした。

僕がお菓子の箱を手渡すと 普通「ありがとう」 とかって言うと 思うんだけど おばさんは何にも言わずに 受け取って「アンタ煙草吸うの? 吸うんなら台所だよ」 と言って 居間に入っていったのだ。





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僕と僕の母様 第110回

2011年06月21日 13時19分15秒 | 小説
『僕と僕の母様』  目次

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僕と僕の母様 第110回



「そう、そうか、そう言って貰えると 教えた甲斐があるよ、うれしいなあ」

「わあ、先生照れてるの?」

「何言ってるの、照れてなんか無いよ」 そう言って そいつの背中をポンと叩いたかと思うと「うわっ」 っと言う叫び声とともに そいつが数メートル滑って行って その先で転けていた。

「先生何するんですか 無茶しないでよ」 座り込んで 笑いながら叫んでる。

また工業科と 比べてしまうのだが こんな時転けた人間を 指さして笑うのが工業科だ。 しかし やっぱりここでも違っていた。 「大丈夫か?」 「一人で立てる?」 なんて優しい声をかけている。

インストラクターさんが 「ごめん、ごめん」 と謝っていたが 昨日の険悪な雰囲気とは正反対に こんな感じで 和やかにスタート地点に立った。

今回の坂は 昨日より幾分なだらかな気がするが 距離が相当長くなっているようだ。 昨日のように インストラクターさんの後について 僕達はジグザグに滑っていく。 昨日と違う点では カーブごとに全員でストップして 方向を変えていたのが 今回はそのままストップぜずに ボーゲンをしたままカーブをして また反対に滑っていくという感じで 何回かのカーブの先で 全員でストップだ。

ストップしたときに インストラクターさんが 目に付いた注意をしてくれる。

みんなも まだまだ思うように 滑れるわけじゃあないけれど 転けることなく 無難に滑れているのが楽しいようで

「先生、もうちょっと長く滑ってみたい」 とか「ストップするときに 先生みたいにシュって雪をはねさせたい」 なんて言いだした。

こんな意見が出たもんだから インストラクターさんも 今が上達のチャンスとでも思ったのか

「よし、それなら ちょっとスパルタでいこうか」 こんな事を言いだした。

そして坂を下りながら ボーゲンをするにも 少しでも足を狭めていくだとか カーブの時の 雪のはねさせ方とかを教えてくれた。

何本か同じリフトを 上っては滑って降りたりと リフトの乗り降りの怖さなんて 関係なくなってきた。 それにスパルタのおかげで みんな必死に滑っている。 楽しく滑るとかって言うより 無駄な時間なんてとりたくない 少しでも上達したい といった感じだ。

そのおかげで 僕も最初に比べて かなり上達したと思う。 しっかりと雪を跳ね上げて ストップしたり ボーゲンの時も かなり足が狭まってきた。

「よし、じゃあ今日は ここまでにして 明日は今日以上の滑りに仕上げる気持ちで 頑張っていこう」 インストラクターさんが そう言って今日の締めくくりをした。

民宿に帰ると すぐに昨日と同じように みんな騒ぎ始めた。 こいつ達は本当に 疲れというものを知らないのだろうか 不思議になってくる。 

昨日と同じように部屋に帰ると これまた昨日と同じように 部屋の隅に行き 昨日と同じ奴と会話をした。

「今日どうだった? リフトに乗った?」

「やっぱ乗らなかったよ お前達リフトに乗ったのって 気のせいじゃない?」 気のせい? コイツは何を考えてるんだ。 

気のせいなんかで リフトに乗るかって言うの。





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僕と僕の母様 第109回

2011年06月20日 13時56分05秒 | 小説
『僕と僕の母様』  目次

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僕と僕の母様 第109回



「取り合えず 今呼んだ順番に 並んでみようか」 そう言われて みんな昨日ほど笑うような 体制ではないけれど 少し腰が引けた状態で 二人組に並んだ。

今回のリフト乗り場は 昨日と比べて そんなに坂がきつくないので みんな簡単に上っていけた。

「いい? 何も怖くないから 普通に乗ってくれば いいからね」 そう僕達に声をかけて

「先に乗って行くから 気を付けて 乗って来るんだよ」 そう言って インストラクターさんが 一人で一番に乗っていった。

みんな 少し強ばった顔に なっている。

一番の二人が ストックを使いながら リフトに向かって歩いていく。

二人でリフトの前に立って「せーのー」 と言って リフトに座った。 大きくリフトが揺れた。 「うわっ」 っと一瞬声が出たが リフト番のおじさんに「大丈夫、大丈夫 上手く乗れたよ」 と言って貰ったのを聞いて ホッとしたように「次の二人頑張れよ」 なんて振り返りながら 大きく出た。

その次の組も 上手く乗れたようだ。 後は僕一人だ。 先にリフトに乗った二人組が 振り向きながら

「一人で大丈夫か」 なんて声をかけてくれたが 僕は一人がいい。

「おう」 と返事をして 僕はすんなりとリフトに乗った。

高いところから 下のゲレンデを見ていると みんな色んな格好で 転けていたり、雪合戦をしていたり、これは上級者グループなのだろうが 格好良く滑っている姿も見える。

僕もあんな風に 滑られたらいいのになぁ と思いながら どこまでも続く銀世界を 楽しんでいた。

そうしていると リフトも終わりに近づいてきたようで インストラクターさんが リフトを降りたところの 少し先に待っているのが見えた。

一組目の二人も ちょうどそこに滑ってきていた。 今回は転けずに 降りられたようだ。

僕の目の前を 二組目がリフトから 降りていく。 大きくリフトが揺れている。 こっちにまで 揺れが伝わってきた。

今度は僕が降りる準備を しなくてはいけない。 前の二人組の その先を見ている余裕はない。 僕は今回も上手くリフトを 降りられて みんなの方に向かって 滑り出そうとしたその途端、前の二人組が 僕の行く手を阻んでいた。

二人して 転けていたのだ。 僕の後ろのリフトに 誰も乗っていないのを 確認していたから その場で僕もストップをして 二人が立つのを待っていた。 下り坂の途中で立つには ちょっと上手くなったくらいでは 少々腕がついてこないようで 二人とも苦戦していた。

でも昨日とはやはり違う。 二人とも笑っているのだ。

「ごめん、ごめん」 僕にそう言って やっと立ち上がり インストラクターさんの方まで 二人とも滑って行った。

僕もその後を 少し間隔を開けてから 滑って行った。 また急に転ばれると 僕には避けきれないからである。

みんなで インストラクターさんの所に集合した。

「どう? 昨日と違って 今日はみんな調子良さそうだけど 勇気出して降りて行けそう?」

「はい、頑張れます。 っていうか、転けても楽しいです」 一人が言った。 

みんなも「そうそう」 と頷いてる。





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僕と僕の母様 第108回

2011年06月17日 13時20分47秒 | 小説
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僕と僕の母様 第108回



「おう」僕がそう声をかけると 向こうも

「おう、お前も今から入るの?」 そう返事をしてきた。

「うん あの騒がしい中で入ると 落ち着けないから 入っていい? ってもう入ってきてるけど」

「うん いいよ、ってもう入ってきてるし」 そんな風に話しながらも やっぱり頭の良い人間は ちょっと他の奴らとは違う。 会話が資格や進学の話になっていた。

コイツは1年の頃から 目指している大学があって そこに向けて 自己流ではあるが 一生懸命勉強を しているようなのだ。 僕は相づちを打っておいた。

ただ、話が長すぎて 湯だってしまった。

お風呂から上がった後も 頭はボォっとしたままだから 特に僕は誰とも話したりすることなく すぐに布団の中に潜った。

廊下や他の部屋で 賑やかしい声が聞こえていたが お風呂で暖まったせいか 昼間の疲れがドッと出てきて 深い眠りについた。



翌朝六時 先生にたたき起こされ みんな眠たい目をこすりながら 8時からの練習に間に合うように 顔を洗い朝食を済ませ スキーウェアーに着替えて ゾロゾロとゲレンデに向かった。

相変わらず奴は 一生懸命にお手伝いをしている。 こうやって見ると あんな様相でも健気だな。

昨日と同じように 練習をしたのだか 教え方が良いのか 飲み込みが良いのか 段々とみんな上手くなってきたのが よく目に付くようになってきた。

「上手くなったんじゃない?」 僕が一人にそう声をかけると

「まだまだだよ」 と言いながらも 嬉しそうな顔をしている。 その気持ち 分かるような気がする。

午前中の練習が終わって 午後からの練習の時に インストラクターさんが

「みんな大分上手くなったから 思い切って もう少し高い所まで行くリフトで 上がってみない?」 そう言いだした。

さあ、みんな何と返事するのか 僕は黙って見ていた。 聞いていた。

みんなで顔を見合わせながら ボソボソと話している。 僕の方にも「どうする?」と聞いてきたので「どっちでも良いよ」 と答えておいた。

「どう? 上がってみない? みんな本当に上手になったし せっかく雪山に来てるんだから 色んな事に挑戦してみようよ」 もう一度インストラクターさんが そう言ったら

「僕上がってみようかな・・・」 さっき「まだまだだよ」 と返事をしていた奴が そう言った。

「うん そうしようよ、みんなで上がってみようよ」 もう一度インストラクターさんがそう言った。

「じゃあ 行ってみる?」 みんなに誘いかけるように 一人が言うと 他のみんなも「行ってみようか」 と言いだして 全員一致でリフトに乗ることになった。

昨日までの拒否の姿勢と大違いだ。 人間自身を持つとか 楽しめる気持ちを持つっていうことは すごいことだな。 昨日と違う人間になれるんだ、なんて第三者的立場で 感じていた。

インストラクターさんの誘導に従って みんなで 昨日と違うリフト乗り場に 向かって行った。

昨日のリフトは 一人乗りだったが 今度のは二人乗りだ。 どうやってペアーを組むんだろう。

「じゃあ、僕が名前を呼んだ順番に 二人組でリフトに 乗ってきて下さい」 そう言って名前を呼んでいった。

僕は一番最後で尚且つ 奇数人数だったから一人だ。 

うん、気楽で良い。





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