大福 りす の 隠れ家

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僕と僕の母様 第21回

2011年02月17日 13時46分54秒 | 小説
僕と僕の母様 第21回



ギターやドラムを叩いていた人たちの視線が 一瞬こっちに向いたけれども 一人を置いてまたみんな楽器を触りだした。

それよりも待てよ、今コイツ二人と言わなかったか? 聞き違いか? 何だ? と思って順平を見ると カッターのポケットから 入部届けらしき用紙を2枚取り出しはじめた。

楽器を置いて 一人こっちに向かって歩いてくる。

二年生か三年生か分からないが 僕たちより数段背の高いその人に差し出そうと 僕の腕にまわしたままの左手と 空いている右手でその用紙を開けだした。

覗いて見てみると ウソ! 何でそこに僕の名前が書いてあるの? というか、やっとこの時に気が付いた。

もしかしてハメられた? ああ、もしかしなくても十分そうだ。

一瞬にして 僕の心の中で秋風が吹いた。

やられたと思いながら うな垂れていると 二年生か三年生か分からない背の高いその人が 僕にとっての助け舟を出してくれた。

「悪いけど 三人以上でバンドを組める状態で 新人募集をしてるから もう一人探してから 出直してきてくれるかな」 僕にとっての天の声、順平にとっての悪魔の声、完全に僕と順平の立場が逆転した。

僕の腕に回していた順平の腕が 一気にスコンと下に落ちた。

そして 今度は順平が頭をうな垂れだした。 可哀そうに見えてきた。 でも仕方がないことだ。 今度は順平の代わりに 僕がその人と話をしだした。 

「ハイ分かりました。 もう一人誰かを探してからまた来ます。」 順平には悪いが僕はニコニコ顔だ。

「ほら、順平行くよ」 こみ上げてくる安堵感を感じながら 順平の背中を押して ドアに向かった。

「失礼します」 と言ってドアを閉めてから 順平の顔を覗き込むと 本当に悲しそうな目をしているのだ。 正直というのか 分かりやすい人間だ。

順平には悪いが その分かりやすい性格に こみ上げてくる笑いを 抑えるので必死だった。

あまりの暗いオーラに 心で笑いを潰しながらも 何とかしてあげなくちゃと思っていたら ちょうど第一音楽室から ブラスバンド部の練習する音が聞こえ出した。

「順平、ほらブラスバンドが練習してるみたいだよ。 見に行かないか? ホラ、行こう」 と今度は僕が順平の腕を掴んで 隣の教室まで引っ張って行った。

順平のあまりの暗さに 僕のテンションは上がってしまい 今までの僕からは想像も出来ない事を言ってしまった。

その結果 とんでもない事になってしまったのだ。

ハイテンションの僕は事もあろうか 音楽室のドアを開けて「すいません見学させてもらってもいいでしょうか」 そう言ったのだ。

今までの僕じゃあり得ない。



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