大福 りす の 隠れ家

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僕と僕の母様 第102回

2011年06月09日 14時36分18秒 | 小説
『僕と僕の母様』  目次

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僕と僕の母様 第102回



余裕で 下の様子を見ていられた。 

みんなの練習姿が見られた。 みんな頑張ってるようだ。 山も雪も綺麗だ。 空気もいい。 あの頃はリフトに乗って 落ちないでおこうと しがみついているだけで こんなことを感じる間がなかったのを もったいなく思えた。

そうやって 下を眺めていると そろそろリフトも 終わりかけになってきた。

リフトから降りる時には 普通係りの人がいるはずなのに 誰もいない。

上手く降りられるだろうか 心配だったが すっとスキー板を地面に下ろして そんなにリフトを揺らすことなく すんなりと坂を下って行った。

ああ、僕も少しは成長したじゃん なんて僕自身に感動したかったのに その暇は無かった。

リフトから降りて ほんの数メートルの坂を下るのだが 次々ととんでも無い格好で どうやったら そんな器用なこけ方が出来るの という感じで 僕の行く手を阻んでくれる 初心者軍団がいた。

そしてその軍団を 危険から避けさそうと奮闘している インストラクターさんと、さっきリフトの所に居なかった 係りの人がいた。

それをかわして滑って行く 初心者もどきの僕、これが上達の原点になったのかもしれない。

やっとの思いで 端の方に止まったかと思うと ほっと息をつく間もなく 僕の後ろに並んで リフトに乗っていた奴が 転ぶことは無かったのだが 止まれないらしく 僕に体当たりしてきた。

本人はかなり焦っていたらしく 転ぶに転べない、止まるに止まれない、方向も変えられないようだった。 

二人で倒れながらも「大丈夫?」 と声をかけると 蒼冷めた顔をこちらに向けて すがるような目をしていた。

返事すら出来ない状態であったらしい。

僕達は 何とか立ち上がって 他の奴達を見ていたが 皆一塊に集合できた頃には 既に額に汗を流している者もいた。 

でもここで終わりでは無い。 それどころか ここからはじまった 彼等にとっての地獄のスキー研修だ。

このリフトを降りてから 下のゲレンデまでどうやって戻るかだ。

僕達はスキーを履いているのだから 勿論滑ってというのが誰しも考える常識だが それをしたくない初心者君たちは どうしても拒否したいらしい。

「担いで降りる」 と言ってきかない。

インストラクターさんも大変な仕事だ。 この時僕はつくづくそう思った。 そしてなれるわけでは無いけれども インストラクターという仕事だけは この先しないでおこうと思った。

「だって先生、どうやってこの坂を 滑べれっていうんですか」 インストラクターさんのことを みんな先生と呼んでいた。 ほとんど喧嘩腰で怒鳴って言っている。

「どうやって滑るって さっき下で練習したように すればいいんだよ」

「そうやったら 今みたいに転んだんじゃないですか。 あのほんの少しの坂で転ぶのに どうやってこの長い坂を 滑って降りるんですか」 さすがは特進科だ。

工業科ではあり得ない 会話というものをしている。 もしこれが 僕たち工業科の誰かだったら「無理、無理、何が何でも無理、100%絶対無理」 それ以外言わないだろう。 イヤ、言えないだろう。 

頭が良い分 運動能力に欠けているのか この班で工業科は僕だけだ。 ・・・と言うことは 僕は頭も運動能力も 欠けているのか? 

・・・考えないでおこう。





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