『僕と僕の母様』 目次
第 1 回・第 2 回・第 3 回・第 4回・第 5 回・第 6 回・第 7回・第 8 回・第 9 回・第10回
第11回・第12回・第13回・第14回・第15回・第16回・第17回・第18回・第19回・第20回
第21回・第22回・第23回・第24回・第25回・第26回・第27回・第28回・第29回・第30回
第31回・第32回・第33回・第34回・第35回・第36回・第37回・第38回・第39回・第40回
第41回・第42回・第43回・第44回・第45回・第46回・第47回・第48回・第49回・第50回
第51回・第52回・第53回・第54回・第55回・第56回・第57回・第58回・第59回・第60回
第61回・第62回・第63回・第64回・第65回・第66回・第67回・第68回・第69回・第70回
第71回・第72回・第73回・第74回・第75回・第76回・第77回・第78回・第79回・第80回
第81回・第82回・第83回・第84回・第85回・第86回・第87回・第88回・第89回・第90回
第91回・第92回・第93回・第94回・第95回・第96回・第97回・第98回・第99回・第100回
以降は カテゴリ 又は 最近記事より お入り下さるようお願い致します。
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僕と僕の母様 第102回
余裕で 下の様子を見ていられた。
みんなの練習姿が見られた。 みんな頑張ってるようだ。 山も雪も綺麗だ。 空気もいい。 あの頃はリフトに乗って 落ちないでおこうと しがみついているだけで こんなことを感じる間がなかったのを もったいなく思えた。
そうやって 下を眺めていると そろそろリフトも 終わりかけになってきた。
リフトから降りる時には 普通係りの人がいるはずなのに 誰もいない。
上手く降りられるだろうか 心配だったが すっとスキー板を地面に下ろして そんなにリフトを揺らすことなく すんなりと坂を下って行った。
ああ、僕も少しは成長したじゃん なんて僕自身に感動したかったのに その暇は無かった。
リフトから降りて ほんの数メートルの坂を下るのだが 次々ととんでも無い格好で どうやったら そんな器用なこけ方が出来るの という感じで 僕の行く手を阻んでくれる 初心者軍団がいた。
そしてその軍団を 危険から避けさそうと奮闘している インストラクターさんと、さっきリフトの所に居なかった 係りの人がいた。
それをかわして滑って行く 初心者もどきの僕、これが上達の原点になったのかもしれない。
やっとの思いで 端の方に止まったかと思うと ほっと息をつく間もなく 僕の後ろに並んで リフトに乗っていた奴が 転ぶことは無かったのだが 止まれないらしく 僕に体当たりしてきた。
本人はかなり焦っていたらしく 転ぶに転べない、止まるに止まれない、方向も変えられないようだった。
二人で倒れながらも「大丈夫?」 と声をかけると 蒼冷めた顔をこちらに向けて すがるような目をしていた。
返事すら出来ない状態であったらしい。
僕達は 何とか立ち上がって 他の奴達を見ていたが 皆一塊に集合できた頃には 既に額に汗を流している者もいた。
でもここで終わりでは無い。 それどころか ここからはじまった 彼等にとっての地獄のスキー研修だ。
このリフトを降りてから 下のゲレンデまでどうやって戻るかだ。
僕達はスキーを履いているのだから 勿論滑ってというのが誰しも考える常識だが それをしたくない初心者君たちは どうしても拒否したいらしい。
「担いで降りる」 と言ってきかない。
インストラクターさんも大変な仕事だ。 この時僕はつくづくそう思った。 そしてなれるわけでは無いけれども インストラクターという仕事だけは この先しないでおこうと思った。
「だって先生、どうやってこの坂を 滑べれっていうんですか」 インストラクターさんのことを みんな先生と呼んでいた。 ほとんど喧嘩腰で怒鳴って言っている。
「どうやって滑るって さっき下で練習したように すればいいんだよ」
「そうやったら 今みたいに転んだんじゃないですか。 あのほんの少しの坂で転ぶのに どうやってこの長い坂を 滑って降りるんですか」 さすがは特進科だ。
工業科ではあり得ない 会話というものをしている。 もしこれが 僕たち工業科の誰かだったら「無理、無理、何が何でも無理、100%絶対無理」 それ以外言わないだろう。 イヤ、言えないだろう。
頭が良い分 運動能力に欠けているのか この班で工業科は僕だけだ。 ・・・と言うことは 僕は頭も運動能力も 欠けているのか?
・・・考えないでおこう。
最後まで読んで頂きまして有難う御座います。
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そうやって 下を眺めていると そろそろリフトも 終わりかけになってきた。
リフトから降りる時には 普通係りの人がいるはずなのに 誰もいない。
上手く降りられるだろうか 心配だったが すっとスキー板を地面に下ろして そんなにリフトを揺らすことなく すんなりと坂を下って行った。
ああ、僕も少しは成長したじゃん なんて僕自身に感動したかったのに その暇は無かった。
リフトから降りて ほんの数メートルの坂を下るのだが 次々ととんでも無い格好で どうやったら そんな器用なこけ方が出来るの という感じで 僕の行く手を阻んでくれる 初心者軍団がいた。
そしてその軍団を 危険から避けさそうと奮闘している インストラクターさんと、さっきリフトの所に居なかった 係りの人がいた。
それをかわして滑って行く 初心者もどきの僕、これが上達の原点になったのかもしれない。
やっとの思いで 端の方に止まったかと思うと ほっと息をつく間もなく 僕の後ろに並んで リフトに乗っていた奴が 転ぶことは無かったのだが 止まれないらしく 僕に体当たりしてきた。
本人はかなり焦っていたらしく 転ぶに転べない、止まるに止まれない、方向も変えられないようだった。
二人で倒れながらも「大丈夫?」 と声をかけると 蒼冷めた顔をこちらに向けて すがるような目をしていた。
返事すら出来ない状態であったらしい。
僕達は 何とか立ち上がって 他の奴達を見ていたが 皆一塊に集合できた頃には 既に額に汗を流している者もいた。
でもここで終わりでは無い。 それどころか ここからはじまった 彼等にとっての地獄のスキー研修だ。
このリフトを降りてから 下のゲレンデまでどうやって戻るかだ。
僕達はスキーを履いているのだから 勿論滑ってというのが誰しも考える常識だが それをしたくない初心者君たちは どうしても拒否したいらしい。
「担いで降りる」 と言ってきかない。
インストラクターさんも大変な仕事だ。 この時僕はつくづくそう思った。 そしてなれるわけでは無いけれども インストラクターという仕事だけは この先しないでおこうと思った。
「だって先生、どうやってこの坂を 滑べれっていうんですか」 インストラクターさんのことを みんな先生と呼んでいた。 ほとんど喧嘩腰で怒鳴って言っている。
「どうやって滑るって さっき下で練習したように すればいいんだよ」
「そうやったら 今みたいに転んだんじゃないですか。 あのほんの少しの坂で転ぶのに どうやってこの長い坂を 滑って降りるんですか」 さすがは特進科だ。
工業科ではあり得ない 会話というものをしている。 もしこれが 僕たち工業科の誰かだったら「無理、無理、何が何でも無理、100%絶対無理」 それ以外言わないだろう。 イヤ、言えないだろう。
頭が良い分 運動能力に欠けているのか この班で工業科は僕だけだ。 ・・・と言うことは 僕は頭も運動能力も 欠けているのか?
・・・考えないでおこう。
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