大福 りす の 隠れ家

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僕と僕の母様 第94回

2011年05月30日 13時23分01秒 | 小説
『僕と僕の母様』  目次

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僕と僕の母様 第94回



パチパチと拍手が聞こえた。

見渡すと知っている顔が何人かいる。

ソロというプレッシャーは勿論ある。 でも舞台に上がっているという緊張はない。

母様が言うように ピアノの発表会のように 一人じゃないということ 仲間がいるっていうことは 心強いものだ。

先生の合図で演奏が始まった。

僕の頭の中は ソロのことで一杯だ。

ソロの場所がくるまで あの時のコンクールの時のように 僕の意識はフェードアウトしていった。

フェードインしてきたのは ソロが始まるほんの四、五小節くらい前からだ。 始まる。

僕は椅子から立ち上がり 一歩前に出る。 本当はこんな目立つことを したくなかったのだが先生が

「お前、ソロの時は ちゃんと立って 前に出てきて演奏しろよ」 と言ったのだ。

練習の時には一歩前どころか もっと前に出てくるように言われて 思いっきり前に出て やらされていたのだが とんでもない 本番でそんな目立つことはしたくない。 椅子に当たらないくらいで 一歩だけ前だ。

後でなんと言われようが 先生も本番では怒らないだろう。

ソロの出番が来た。

以外と緊張していない それどころか練習以上の 出来だった気がする。

思い通りに吹けたのだ。

難なくソロ部分を通過していき そしてまた席に着き みんなと合わせる。 すごく簡単に出来た。

いったい 僕に何が起きたのだろう 自分でも全然分からない。

僕が僕自身に驚いている間に 曲は終わってしまった。

幕が下りて ドタバタとみんなで楽器を下げていく。 体育館を出ていくと 先生が立っていて僕の方を見ながら

「おう ソロ、今までで 一番の出来じゃないか? やれば出来るんだよな 良かったよ」 そう言ってくれた。

そして他のメンバーにも 労いの言葉をかけていたのだが 僕は先生のその一言が とても嬉しくて そしてとても恥ずかしくて 顔が真っ赤になっていった。

家に帰って母様に「どうだった? 上手く吹けた?」 と聞かれて「先生に褒められた」 等と話していた。

でもこの時の嬉しいという気持ちを 何日も持続させる事が出来なかった。



何日か経ったある日 休み時間に 同級生達が僕の教室にやってきて

「なぁ、お前まだブラバン続ける?」 と聞くのだ。

何が言いたいのか 充分に分かる。 ヤツに限界を感じているのだ。

実際僕もそうだ。

三年生を送る会までの練習でも 僕も何度もヤツには 嫌気が差していたし その後なんて 特に練習に追われることがないから 余計とうっとうしかったのだ。

だから同級生達と目を合わせて お互いイヤそうな顔をして 部活の帰りに ヤツの悪口で花が咲いたりしていた。

「みんなどうするの?」

「俺達辞める。 でもお前に言ってから 辞めようと思ってるし それにもし お前も辞めたいと思ってんなら 一緒に辞めないかって、言おうと思ってさ どうする?」

「僕もアイツには 充分嫌気が差してるけど 楽器もやりたい気があるし・・・今日返事しなきゃダメ?」

「いや、そんなことはないよ。 じゃあ取り合えず 先生にはまだ言わないけど 俺達今日から 練習には行かないから お前の気持ちが決まった時点で 教えてくれよ。 それから先生に言いに行くわ」

「うん、分かった」 そう言ったものの 今日からアイツの相手を 僕一人が背負うのかと思うと 気が重くなる。





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