西尾治子 のブログ Blog Haruko Nishio:ジョルジュ・サンド George Sand

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『『異邦人』研究』

2018年04月03日 | 手帳・覚え書き
書評(松本陽正『『異邦人』研究』)
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松本陽正『『異邦人』研究』(広島大学出版会、2016)の書評(自著紹介)

松本陽正『『異邦人』研究』(広島大学出版会、2016 年 3 月)
本書はカミュ『異邦人』に関する研究書である。本
論は九つの章で構成されている。第一章と第二章では、
『異邦人』に先行する二つの習作(「ルイ・ランジャー
ル」と『幸福な死』)との関係について検討する。第三
章では、『異邦人』の形成過程を詳しく検証する。その
後、作品世界に入る。第四章では、作品の構造、語り
手の現在、タイトルの意味、語りの技法について論じ
る。第五章では、主人公ムルソーについて考察し、「男」
のモラルの規範に忠実な男という側面と<考える男>
という側面の重要性を指摘する。第六章では、「小柄な
機械人形」を中心にその他の作中人物たちについて述
べる。第七章では、メインテーマ(=不条理)がいか
にイメージ化され提示されているのかを、殺人の場面、
裁判、さらには死刑判決後の死との対峙をとおして検証する。第八章では、『異邦人』にお
ける太陽と海とについて、テマティックなアプローチを試みる。最後に、第九章では、ス
タンダール『赤と黒』とサルトルの短編「壁」とを対象作品とする比較文学的アプローチ
を行う。
このように本書は、先行する習作との関係、形成過程研究、緻密なテキスト読解・分析
による作品世界の提示、テマティックなアプローチ、比較文学的アプローチといったさま
ざまな角度から総合的に『異邦人』を考察し、正確に読み解こうとする試みであり、紙幅
の関係上詳細かつ具体的に述べることはできないが、たとえば『異邦人』の執筆時期や主
人公ムルソー像などについて<定説>を見直す新たな説を提出するなど、従来の『異邦人』
解釈に変更を迫る指摘を多々含む専門的な研究書である。とはいえ、フランス語を併記し
た箇所もあるが、引用文はすべて日本語に訳出した。フランス語を学んでいない『異邦人』
ファンにも理解していただきたい、と思ったからだ。本書によって、広く一般的には、小
説を読み解く面白さの一端を示しえたのではないか、と考えている。
(著者自身による紹介)

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