西尾治子 のブログ Blog Haruko Nishio:ジョルジュ・サンド George Sand

日本G・サンド研究会・仏文学/女性文学/ジェンダー研究
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男装禁止は法的には現在も!

2010年05月10日 | モード ファッション 風習
前のブログに、ジョルジュ・サンドは男装の届けをしていなかったようだと書きました。が、フランスのメディアは、サンドはノアンの地元のIndreアンドル県の警察から男装の許可を得ていた「はずであった」と、次のサイトで報じていました!
(ちなみに、本日5月9日付の毎日新聞の朝刊にも、偶々、この法律に関し「衣服と権利 いま・むかし」と題した福原直樹記者の興味深いプチコラムが掲載されています)

http://www.lepost.fr/article/2010/03/10/1980483_pantalon-interdit-officiellement-en-france-a-quand-l-abrogation-de-cette-loi-du-26-brumaire-an-ix-de-la-republique.html

それによると、この男装禁止の法律は現在も存在したままの状態のため、2003年終わりにはフランスの保守・右派政党である国民運動連合UMPの ジャン・イヴ・ユゴン議員 が、パリテ・雇用平等担当大臣のニコル・アメリンヌ女性大臣に、19世紀初頭以来、存続しているこの法律について再考するよう促した。また、サンド生誕二百年記念の2004年にも、同議員は「サンドはアンドル県にズボンの着用許可を申請したはずだが」、パンタロンの着用は「今や女性が当然と認める異論の余地ない慣行 となっているのであるから、現在の法律に適合させるようにと提案」した。

これに対し、アメリンヌ大臣は「重要なことがただ単に形だけとなるような方策に率先して手をつけることが時宜を得ているとは思われない」と答え、「政治が慣習の変化に介入するより、(古い慣習)が廃れるのを待つ方が有効なときもある」と強調した。その一方で、彼女は「ジョルジュ・サンドの生誕記念二百年に際し、サンドが慣習の進化と発展に貢献したことを高く評価することは全くあなたの自由です」と付け加えた。

廃れるかどうかは別として、例えば、女性警官にズボンの着用を義務化している規則があるように、様々な社会的局面でズボンの着用が一般化している現在、今でもこの法律が存在しているというのは時代遅れも甚だしいという感じがしないでもない。

Christine Bard の研究に戻ると、「1806年9月1日には、167の男装の申請が登録されて」おり、Mlle Meyerが167番目の許可を得ている。それなのに半世紀後の1862年の記録には、Mlle Louisが74番目の許可を得たと記載されており、明らかに途中の記録の欠落がある。ゆえに、警察は自分たちが作成した資料をきちんと保存していなかったとみられる。この法令に違反した場合には、罰金と5日以下の拘留が課せられたようであるが、この罰則が実行された可能性を僅かに報じる記事が一件あるのみだったという。そこで、より詳しい裁判所の資料を紐解いてみると、1830年の金属磨き工のMlle Pecquetが3フランの罰金を支払ったという判例が記載されているだけであった。
これらのことから、Christine Bard は、資料の散逸や盗難などが想定されるものの、当時は女性の異性装がさほど重大な問題とは考えられていなかったのではないかと結論づけている。

--固有名詞・用語など----
Jean-Yves Hugon
Nicole Ameline
Le Ministre la Parité et l'Egalité professionnelle
Sand "qui avait dû se soumettre à cette autorisation pour porter le pantalon auprès de la Préfecture de l'Indre"
une pratique incontestée et incontestable des femmes
désuatude
avoir toute latitude pour mettre en valeur la contribution de George Sand à cette évolution
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