小泉政権時代の郵政選挙前に書いていた記事があるので、それをもう一度取り上げておきます。
>
郵政と財投と周辺組織の問題
国の社会資本整備には、国が銀行から資金調達をして銀行に金利負担をするよりも、国民から直接資金調達して銀行に支払うべき金利負担を国民に返した方が望ましい。何故なら金利そのものは税金で賄われるものなので、結局は国民から国民への所得移転ということになるからです。鉄道整備事業のような巨額資金を必要とする場合に銀行から調達すると、国民から国へと入った税金は銀行に利払いをすることで、銀行を儲けさせるばかりになってしまいます。そういう意味では、昔は郵貯の大きな意味がありました。
(中略)
もう一つ、重要なことは郵貯資金の過度な膨張でした。バブル崩壊によって安全指向の高まりもありましたが、郵貯の純増額(新たな貯金者が入金すると言う意味で)は恐らく多くても50兆円位、予想される水準では35~40兆円程度ではないかと言われています(出典は思い出せません)。バブル崩壊直後に急増した預入残高は、6%の半年複利で最長10年というとんでもない商品性を持つ「定額貯金」があったことが最大の災いだったのです。金利6%ですから12年で元金の約2倍になります。従って10年間待てば、大体1.8倍は郵貯残高が増加するということになるのです。誰も新たな貯金をしなくても、100兆円あった残高は10年後には簿価の上で180兆円まで膨らみます。このことが、郵政を大いに困らせる結果となってしまったのです。貯金者にはそれだけの利息を払う約束をしてしまっています。ところが、運用環境としては、バブル崩壊によって、6%を上回れる運用先などありません。金利は下がっていく一方ですし、預託先も限界がありますが、郵政が運用に回さなければならない資金総額はものすごいスピードで増えていくのです。今までには、100兆円の運用先を探せば良かったものが、5年後くらいには30兆円以上の新規運用先を見つけださねばならなかったのです。これが、財投先の財政規律を大いに壊す結果となっていったのだろうと思います。
郵貯残高は、90年頃の130兆円から97年の220兆円(今とほぼ同じ規模です)、00年には260兆円まで増加していったのです。たった10年間で今までの2倍の資金運用先を見つけるということが、「大いなる失敗」の原因となってしまったのです。これは国民所得とか国民経済の大きさと、公的部門のバランスを大きく欠く額まで膨れ上がってしまった結果であったとも言えるでしょう。残高が増加した130兆円分を何かに運用しなければ貯金者に利息が払えない、という状況を産んでしまったことが、財投先のありとあらゆる無駄な投資に繋がっていったのです。
=====
ただ単に公共事業をジャンジャカやって行ったのではなく、郵貯の定額貯金の貯金者たちに多額の利払いをせねばならなかったからこそ、投資先を増やしてゆくよりなかった、ということなんです。その恩恵を受けたのは、当然利払いを受けた人たちですわな。国がやる事業で、毎年13兆円の新規投資事業を見つけて決めなさい、と言われたら、そりゃあ大変だろう、と。
けど、必ず受取った人たち(国民)は、いたんです。誰かは、いるはずなんです。恐らくは、多くが高齢者ではなかったかな、と思いますけどね。そういう人たちの金融資産膨張には大いなる貢献をしたであろう、ということですな。
で、続きの記事はこれだった。
>
郵政と財投と周辺組織の問題2
国の借金は実は多い訳ではなくて、国の貸借対照表で見れば平成15年度末時点では、227.4兆円の負債超過に過ぎないんだよ、と。そういうご意見もあるのですが、確かに数字を見るとそうなんだろうな、と思います。でも、現実にそれを信じる人がいるのかな、と思いますけれども。通常倒産した会社が負債を1億円抱えていて、他に在庫とか会社の不動産とか、たとえ帳簿上の資産があったとしてもそれが額面通りを意味することなど想定してはおらず、実際に回収する段階になれば当然激安となってしまうでしょうね。資産価値1万円だった在庫は、バッタ屋などにゴミみたいな値段で売られるだけだろうと思いますけれども。固定資産にしても、額面通り回収出来る人がいたら、それは本当に極めて稀なことなのではないでしょうか。ただ、国の資産が誰かに売り切られるということは想定できませんから、現実になった場合をいくら考えてみても何の意味もないのでしょうけれども。
貸借対照表で見れば借金は意外に少ないですけれども、普通の会社は潰れてる水準でしょうね。内閣府の統計などでよく出てくるSNAベースで、国の負債を見てみる方が現実的な感じもします。
このSNAベースで見ればH14年度時点で、一般政府のうち、中央政府の負債は600兆円(特別会計国債や特殊法人等の債務を含みます)ですが、金融資産は149兆円に過ぎません。差額は451兆円です。地方政府は負債182兆円に対して、金融資産62兆円で差額は120兆円です。一般政府での合計は、負債が571兆円超過となります。社会保障基金では、金融資産237兆円に対して負債が27兆円で210兆円の資産超過です(将来時点までの支払額を含みません)。
=====
先日、
政府の債務超過に関する話を書いたけれども、その中で触れたのがSNA基準のことですね。
国の貸借対照表とか、国の連結貸借対照表(特別会計含む)とか、そういうのに意味がないわけではありませんが、国の会計帳簿に信頼性がどの程度あるかというと、それほどでもないのでは(笑)、という話です。
実際、「能力開発・雇用福祉事業資産」みたいなワケの判らん固定資産なんて、金額があってないようなものでして、結局雇用能力開発機構への政府出資金は累積損失処理の為に大幅減額となってしまったわけです(
特殊法人の不良債権額の推測?2)。なんと、1兆円も消滅してしまった、ということで、100万円を100万人に配ることができるほどの額、というのは、その通りなんですよ。
長妻大臣の紙台帳照合に1800億円も投入するとかいう壮大なムダ(笑)にしても、月15万円の給与支給なら10万人が救われるんですよ。かといって、役所が失業者を10万人を雇用するのではなく、社保庁関連の連中に金がばら撒かれるだけだろう。特定層の人たちだけがウマミにありつける、という寸法なのさ。
どうでもいいような独立行政法人の天下り理事長に1800万円超の給料を払うくらいなら、4~5人雇って仕事を確保する方がマシってのも当然なんだよ。だが、そうはなっていない。現職の国家公務員のボーナスカットは行われるけれども、独法の役員の給料は「切られはしない」という矛盾があるのだ。おかしな話だ。