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郵政と財投と周辺組織の問題2

2005年08月30日 22時43分55秒 | 社会全般
前の記事の続きです。

国の借金は実は多い訳ではなくて、国の貸借対照表で見れば平成15年度末時点では、227.4兆円の負債超過に過ぎないんだよ、と。そういうご意見もあるのですが、確かに数字を見るとそうなんだろうな、と思います。でも、現実にそれを信じる人がいるのかな、と思いますけれども。通常倒産した会社が負債を1億円抱えていて、他に在庫とか会社の不動産とか、たとえ帳簿上の資産があったとしてもそれが額面通りを意味することなど想定してはおらず、実際に回収する段階になれば当然激安となってしまうでしょうね。資産価値1万円だった在庫は、バッタ屋などにゴミみたいな値段で売られるだけだろうと思いますけれども。固定資産にしても、額面通り回収出来る人がいたら、それは本当に極めて稀なことなのではないでしょうか。ただ、国の資産が誰かに売り切られるということは想定できませんから、現実になった場合をいくら考えてみても何の意味もないのでしょうけれども。


貸借対照表で見れば借金は意外に少ないですけれども、普通の会社は潰れてる水準でしょうね。内閣府の統計などでよく出てくるSNAベースで、国の負債を見てみる方が現実的な感じもします。


このSNAベースで見ればH14年度時点で、一般政府のうち、中央政府の負債は600兆円(特別会計国債や特殊法人等の債務を含みます)ですが、金融資産は149兆円に過ぎません。差額は451兆円です。地方政府は負債182兆円に対して、金融資産62兆円で差額は120兆円です。一般政府での合計は、負債が571兆円超過となります。社会保障基金では、金融資産237兆円に対して負債が27兆円で210兆円の資産超過です(将来時点までの支払額を含みません)。


では、公的企業はどうでしょうか。こちらは、公的金融機関と公的非金融機関に分けられています。前者は金融資産1031兆円に対して負債が1007兆円となっており、資産の方が多いのですね。つまりは、金融部門は国から切り離しても十分やって行けるということになり(勿論負債は多いことは多いですが)、そこには損失処理のような面倒があまり存在していない、とも言えるかもしれないです。全部を見た訳ではないので、正確には判りませんが、民間移行がしやすいという可能性はあります。後者の方は、金融資産26兆円に対して負債が158兆円となっており、132兆円の負債超過です。一般政府外の非金融部門の負債がかなり多いということが分ります。


ここに、かなりの不良債権状態が隠されていそうだな、ということは想像できますね。これも個々に見て評価しなければならないでしょうけれども、非効率の為に無駄に浪費(言葉がかぶってる?浪費は無駄に決まってるか)されてきた部門が隠されているはずでしょう。再建が不可能な水準に陥っている、公的企業がかなり存在する、ということです。現在はその組織を生き長らえさせる為だけに、言ってみれば「追い貸し」しているような状態とも言えるでしょうか。その資金は、一般会計などから、運営交付金とかただの交付金、補助金、委託費、補給金などの名目をとりながら、支出されている可能性があります。資金を送らなければ、利払いが出来ないし借り換えが出来ないということなんだろうと思いますね。本当に必要な部門ならば、一般政府内に入れて、不採算であっても業務を行うべきでしょうが、果たしてそんな重要な業務を行っている公的企業がどれ程多く存在しているでしょうかね・・・。


特別会計の中身とかって、非常に分りにくくできてまして、私のような一般個人が調べるのも大変なのですが、一例として経済産業省の担当部門を見てみましょう(金融機関部門はとりあえずパスします)。


貿易再保険特別会計は、総額579億円に対して一般会計からの受入70億円。特許特別会計は総額955億円に対して一般会計からは僅か1700万円だけです(殆どが事業内での収入で運営出来るということです)。電源開発促進対策特別会計は、総額237億円に対して一般会計からは235億円と殆ど全部ですね。電源開発は確か上場企業となったのではなかったか、と思いますが(記憶違いならばゴメンナサイ)、その企業への委託とかそういう資金?だろうと思います。ここまでは一般会計からの受入額が割と少ないですね。全部で300億円程度しかありません。ところが、以前にも取り上げた石油関係(特別会計は抜本改革せよ)がデカイのですよ、金額が。


石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計という非常に長いネーミングですけれども、この収入構造に謎が隠されているのですよ。恐らく政官業の構図から生み出された部門だと予想するのですけれども。目的税として、原油等関税収入415億円の財源を持ちますが、何と一般会計からは4456億円もの資金を入れています。これがどうもオカシイのですね。本来の目的税としては、極々少ないのに、石油公団、NEDOや新エネルギー・産業技術総合開発機構(名前が長い独立行政法人・・・)などの組織を生き延びさせる為には巨額資金が必要になっている、とも推測されるのです。上3つの特別会計の総額と一般会計からの繰入額のバランスを見ても、この「石油~特会」とは全く違う感じなんですね。目的税の10倍以上の資金を入れているんですから。こういう巨額部門にこそ、非効率部門の山が隠されているとしか思えないのですね。一般会計や特別会計から運営費等を貰わねば生き延びられないという可能性が高い組織と言えるでしょう(業務の全てが不要とも思いませんけれども、使われ方には大きな問題があるんじゃないのかな、と)。


この特別会計の使途を見てみると、勘定が別々にあって、石油関係と石炭勘定の2本立てです。自己収入である原油等関税収入は全額石炭勘定になっていて、この収入全部(415億円)に前年までの繰越があり、その一部が追加され500億円くらい石炭勘定として使われますが、一体何に使われているかというと・・・実は国債整理基金特別会計に繰入するだけなんですね。石炭勘定は国債の償還を行うための会計で、結局借金返済にのみ資金をつぎ込み、原油等関税収入は全額国債償還費に消えていくだけ、ということなのです。案外と、バカな話でしょ?目的税と言いながら、現実は借金返済にのみ使われる。目的なんて関係ないんじゃないか?これは法改正で目的税の使い方を決める必要などない、ということを示していると思いますが。結局余った分があれば、国債整理基金特別会計に繰入することにすれば、どの特別会計の目的税にしたって国債償還費に使えるんじゃないか、と。道路財源にしてもそうだろうな、と思うけれども。とりあえず、今はそれについてはよく分らないので、置いておくけれど。


ここに行き当たるまでには、あちこち彷徨わないと資料が見つけられないんですね。省庁はそういう風に分りにくくしてあるのかも・・・。多分、違うと思うけれど(笑)。でも経済産業省はまだいい。省庁別の貸借対照表を出しているから。でもね、厚生労働省は、出してない。あるのかもしれないが、見つけられないんだよね。経済産業省は、資産が上回っていたと思う。連結(一般会計と特別会計の合計)でも、負債超過ではなかったと思う。


まあ、特別会計については、闇がやたらと多い。仕組みもそうだが、何処に金が流れていっているか、一般会計からも飲み込んでいるか、そういうところが謎。部門ごとの負債総額もよく分らないし。


こういう複雑な闇を作り出すのには、長い時間をかけて色々やってきたんだろうと思うよ。何せ、全体像がはっきり見えないようにしてある。これは意図的にそうしているとしか、考えられないけれどね。


一般政府のうち中央政府の約450兆円、公的非金融企業の約130兆円、この辺に特殊法人の闇が隠されているだろう。そこに資金を流し込んできたのは、今は国債もあるし財投債も(そして機関債も)あるだろうが、かつては専ら預託金として郵政と年金からの資金還流が続けられてきたんだろうな、と思う。郵政民営化後の行財政改革の一環で、もっと実態が掴めるようになるかもしれない。


追記:9/2

記事中に誤りがありましたが、元の記事はこのままに残します(自省のため)。電源開発関係の収入が間違っております。訂正は電源開発関連の記事の訂正の方に書いてありますので、そちらを参照して下さい。申し訳ございませんでした。



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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
闇に潜む狢がいっぱいカモ (Nagarazoku)
2005-08-31 09:55:10
オジャマシテイマス。



>こういう複雑な闇を作り出すのには、

>長い時間をかけて色々やってきたん

>だろうと思うよ。何せ、全体像がはっ

>きり見えないようにしてある。これ

>は意図的にそうしているとしか、考

>えられないけれどね。



ヒトコトで言って、コレですよね。問題の真髄は。そしておっしゃっているように、それに付随した各種負の遺産。



高度成長期以降、溜まりに溜まった膿をどうやってブチまけずに取り出すか。膿盆も用意されてなかったりして。って言うか、国民はナメられ過ぎのような気が…。
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納税者として (hironagano)
2005-08-31 10:47:31
米国のように、選挙で政党が入れ替わると、官庁も人を入れ替えてしまう仕掛けがないと、奥の院が形成されて、隠し金庫みたいなことが、どうしてもおきてしまうのではないかと思います。官庁では常に人事で人を入れ替えて、このようなことが起きないようなことをやってますが、それでも組織ぐるみの犯罪が起きていますね。

ご指摘の合法的に税金をわけのわからない仕掛けで無駄使いしていることを、どうやって止めさせるか、強力なリーダーシップが必須です。
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どうやら (musanjin)
2005-08-31 17:07:57
官僚や政治家は、投資や運用の意味がわかっていなかったようですね。
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こんにちは (まさくに)
2005-08-31 17:58:29
>Nagarazokuさん



ご指摘の「負の遺産」が余りに大きくなり過ぎて、いきなり潰すのも難しいですし・・・

かといって、存続させれば非効率を改めることもない・・・どっちにしても痛いです。



>hironaganoさん



今回選挙では、リーダーシップが問われています。その政治力を持てるかどうかが重要だと思います。国民の為の政治力が手に入れられるなら、特殊法人改革などが推進できると思います。



>musanjinさん



ちっぽけな利益にのみしがみついていたんだろうと思います。
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