カームラサンの奥之院興廃記

好きな音楽のこと、惹かれる短歌のことなどを、気の向くままに綴っていきます。

駅弁に関する文章(めも)

2006-11-24 14:26:37 | Weblog
 メモです。以下、駅弁に関して、椎名誠さん風文体で綴られた、なかなか面白い(?)文章を見つけましたので、引用させて頂きます。

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松山全日空ホテル宿泊統括支配人・伊藤氏による《松山歳時記「松山全日空ホテル得々便り」十一月(霜月)vol.76

●駅弁●
 先日京都へ行った時の話。
 松山から京都までJRで往復しました。旅行では目的地までの移動時間をいかに楽しむかに重きを置いている私は車両に乗り込む前に充分な備えをします。移動中何もせずひたすら寝てる人がいますが、私はもったいなくて、リラックスするために何かと忙しいのです(?)。車窓の景色を眺めながら、お気に入りの音楽を(ヘッドフォンステレオで)聴いたり、本を読んだりしています。そんな車中の楽しみのひとつに駅弁があります。移動しながらの食事というのはドライブスルーで買ったバーガーをほおばりつつ、といった具合に、休日のドライブでは当たり前のことですが、やはり列車となるとそれよりも特別感が数段アップして「ハレ」の移動食ということになろうかと思います。座席の前にあるテーブルを倒し、出発前に迷いに迷って買い求めた駅弁の包装をわしゃわしゃと開けるときのわくわく感はやはり非日常の世界、旅情を盛り上げてくれる瞬間です。
 さてそんな駅弁ですが、京都から帰りの新幹線、ふと私は思ったのです。
「駅弁も悪くないが、デパートの地下食料品街にある単品グルメの方がもっ と美味しいはずだ、なんてったって専門店の味だかんな。」
と出発までの時間、次のような選抜メニューをあわただしく購入しました。
●天むす ●笹ずし ●シューマイ ●出し巻き卵 ●サラダ ●有名どころのデザート
 むふふ、どうだ、この鉄壁の品揃え、これであと冷えたビールを買い求めれば、車中ディナーは完成です。それにしてもやたら袋が多くなってしまった。で20時50分の岡山行きの新幹線に飛び乗りました。「晩飯は駅弁」と決めていたので夕食が随分と遅くなってしまいハラペコです。
 さて、最初に結論をいうとこのプランは失敗でした。出発してさっそく食事タイムということにしたのですが、夜なので車窓の景色が見えない。これは大きな誤算でした。景色があるとなしでは旅情は雲泥の差です。もちろん夜は泥です。車窓の景色がない状態では単なる狭くて揺れるテーブルです。
「まあいいか、なんてったってこちとらそこら辺の弁当ではなくてグルメ大集合なんだかんな。」
とまず予定通り買い求めたビールをプシュっと空けます。ビールにはシューマイです。さてこの包みを開ける段になって、「ん、これは具合悪いかも」と気づいたわけです。まずワシャワシャワリワリと包みを開ける音がうるさい。思いのほか強固にセロテープ留めされたプラ容器が箸の行く手をさえぎります。
「なんでこんなにがっちり留めなきゃいかんのだ。 ったく」
と文句をいいつつなんとか開けます。シュウマイにはタレと辛子がついています。タレ用の容器はないし、さてこれをどうしたものか。シュウマイに直接かけてしうと染み込んでしまうので、つけながら食べねばとふたのほうにタレをいれます。するとタレがふた全体に広がってしまいなんともキタならしくなってしまいました。ええいままよ、と辛子を注入。すると先ほど過剰包装セロテープをはがした際にこのたよりないセルロイドのふたは割れてしまっていたらしく貴重なタレが下のテーブルにこぼれてしまいました。あわててティッシュで拭こうにも、およそB4くらいの座席テーブルではシュウマイの入れ物だけでいっぱいで、ずらすスペースもありません。とっぱちから「わや」です(わや=ひっちゃかめっちゃかの意)。さらにシュウマイは買い求める際には湯気などをまとい、非常に食欲をそそる風情だったのですが、時間が経ってしまったので水滴の中で硬くなってしまってます。そういえばテーブルからはそこはかとなく酢醤油の匂いが。
「とにかくハラが減っとんじゃ!」
とばかりにシュウマイをビールと共に口に放り込みます。(この時点ですでに「味わう」から「放り込む」になっています。)シュウマイばかりでは飽きるので他のモノも食べたいのですが、いかんせんテーブルがB4なので置ききれません。仕方なくシュウマイ→サラダ→天むす→出し巻き→笹ずしとまるで洋食のコースのごとく一品ずつ片付けていかざるを得ませんでした。(とうとう「味わう」から「片付ける」になってしまいました。)それぞれの味はまずまずというか、単品的には駅弁のアイテムよりグレード的にエラいはずなのですが、何分一品の量が多い。どうしても飽きる。やはり駅弁のように約B5くらいのサイズの弁当箱に収まった何種類かのちまちまとしたメニューを迷いながら食べる方が楽しいし、何と言ってもB4テーブルで効率よく食べるにはその大きさと、一回の開閉で全て食せる、ということろが大事なポイントだったのです。
 結局、ワシャワシャ(包装紙)→ワリワリ(プラ容器)→パキッ(ふた)→モグモグ&グビッ(飲食)→ワシャワシャ(ごみ袋へ)→フキフキ(テーブル)がワンセットで×計5回。なんともあわただしい車中の駅弁タイムではありました。
【教訓】
 車中での食事は味もさることながらやはり弁当という形態が重要である。あと大切な要素として明るい窓の外の景色も加えたい。それにしてもやはり駅弁はエラい。そのノウハウは昨日今日の歴史ではない。
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