仕事から帰ると、ポストに歌誌『塔』12月号が届いていた。ぱっと開いて目に飛び込んで来た栗木先生の一首〈少年が神学校に入りて終はる小説をむかし従姉に借りぬ/栗木京子〉。この〈小説〉はいったい何か。そういう作品をまったく読んだことがないひとにはまるで取りつきようのないクイズかもしれないが、分かるひとにはピンと来るだろう。ヘッセの有名なあの作品だ。『車輪の下』。栗木先生の綴られた〈終はる〉の語が重たくズンと心に響く。その学校に入ったがために〈少年〉は終わってしまったのだ。中学時代の私も大いに身につまされて新潮文庫版の高橋健二さん訳で何べんも繰り返し読んだものだ。そういうことを思い出した。
今日は亡き父の健在であれば88歳の誕生日で、今朝、母とメールで話をした。そういえば、昨日見た夢に久しぶりに元気な父がニコニコと出てきた。今日もこれから仕事。