カームラサンの奥之院興廃記

好きな音楽のこと、惹かれる短歌のことなどを、気の向くままに綴っていきます。

取り敢えず推敲。

2021-01-10 02:12:28 | Weblog

昨夜、仕事から帰ると歌誌『塔』1月号が来ていた。前田先生は、私が出した10首のうち、3首目、9首目、10首目を採ってくださっていた。その10首は以下。


左手は尻下に敷き透かしたる屁をこき右手の匂ひ嗅ぐひと

真つ暗坂の兵庫研ぎたる〈猫舌〉を家宝として男爵家の五百年

地下牢のつめたき銀製便座ふた 博物館の明るむ庭に

ボンボンは右手で一つ差し出されぬ 左手は相変はらず尻下のまま

男爵様のボンボンなれば拝領せねばならぬ 尻下の左手なん度も見つつ

先ほどの透かし屁の臭ひ流れ来ぬ 早くこの部屋を出たい、出たい

"先代も先々代もご立派な方でした"と、先ほどの階段のしづかなご婦人

仕方なくボンボン頂く。男爵様はにつこり笑まひて尻下へ右手も

男爵様は「ほれ」と宣ひて「ほれ」と繰り返す。私がボンボン口(くち)にするまで

仕方なく窓向きて「おや」と声を出す。男爵様も窓へ眼向けて


あまりに露悪的で悪趣味な10首と思いつつ、いまあらためて推敲してみた。


尻下に左手敷きて透かし屁をこき右の手の匂ひ嗅ぐ男爵(ひと)

真つ暗闇の爺や採りたる〈猫舌〉を家宝に男爵家のながき百年

地下牢のつめたき銀製便座ふた 博物館の明るむ庭に

飴玉を右手で一つ差し出して左手はずつと尻下に敷く

男爵の飴玉なれば拝領せねばならぬと謁見の間の人ら顔見合はせて

男爵の透かし屁の臭ひ部屋に満つ 苦渋の顔の人ら部屋より出られず

"先代はご立派な方でしたのに"とハンカチで鼻押さへてしづかにこつそり

仕方なく飴玉頂く人もあり。男爵様はにつこり笑まふ

男爵は「ほれ」と宣ひて「ほれ」と繰り返す。みなが飴玉口(くち)にするまで

仕方なく窓向きて「おや」と声出すひと。男爵様も窓へ眼向けて


取り敢えず。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする