馬込 油彩・木炭
岩田です。今回は馬込さんの作品をご紹介します。
非常に美しい色彩で描かれたこちらの油彩。
右手から差す光線に背中を向け、立ちすくむ少女。しかし両腕と頭部は消え失せた状態にある。
歩くことはできても、見ることや思考すること、ひいては何かを持ったり、触れたりすることもできない。着衣は鮮やかなブルーを纏っているが、無力感を象徴するようなその姿からは、虚しささえ漂ってくるようだ。
目が見えない少女ではあるが、黒い木に吊るされた鳥籠を意識し、それをただ見ているような印象を受ける。
少女の影は、足元から奥へと延び、それは、やがて黒い木となる。その木は自身の投影。
活き活きと生を謳歌していた鳥が去ってしまった空っぽの鳥籠は、何もすることができない、もしくはできなかった少女の心の在りようなのか。
これまで書いたことは、あくまでも私がこの絵を見て感じたこと。作者の思いとはことなる部分もあるでしょう。
特に木の部分は油絵具で描かれていたのですが、乾いた後に木炭を使って描き直し、他と比べると異質な印象を受けます。
このように表現方法などを一部途中で変えたとしても、作者が何を表現したいのか、ということがぶれずに一貫性があるので、それがより一層深い表現へと昇華していくのでしょう。
あなたはこの絵を観て何を思いますか?観る者に対して様々に想像させる、とても興味深い作品でした。