初めて山崎豊子の小説を読んだ。非常に面白かった。夢中で読んでいて、不覚にも一駅乗り越したほどだ。
この小説にはモデルが居り、事実に即した部分もあるらしい。全編に第二次世界大戦の陰が差している。シベリア抑留生活の極限の惨めさに戦争の理不尽を感じた。壱岐という主人公の持つ感覚鈍磨と紙一重の冷静さは軍人としての訓練と抑留体験に影響されて生まれたものなのか、不思議な頑なとも思える強さを持った人物だ。復員十五年の軍務とは異なる厳しさの仕事と難渋する私生活の後、漸く僅かに頑なさが解れてゆくのに、戦争の傷跡の深さが伺い知れる。
それにしても人間はこうしたものだろうかとの疑問も湧いた。欲望と嫉妬に翻弄される人達が数多く出てくる。登場人物は現実的世俗的な感覚が行動基準になっており、単純な感情に支配されて動いているようで、そんなことで思う反面、自分も含め人間はそうしたものかなと相反する感想を持った。それにしても政界や財界が実際にこんな風に動いているとしたらと呆れながら恐ろしくなった。こうした権謀術数の世界をよく知らない(そういう世界を避けて生きてきたかもしれない)ので、私がそう思うだけで小説を現実が追いかけたと解説に書いてあり、実際の政界財界はこれに近いのだろう。
この小説にはモデルが居り、事実に即した部分もあるらしい。全編に第二次世界大戦の陰が差している。シベリア抑留生活の極限の惨めさに戦争の理不尽を感じた。壱岐という主人公の持つ感覚鈍磨と紙一重の冷静さは軍人としての訓練と抑留体験に影響されて生まれたものなのか、不思議な頑なとも思える強さを持った人物だ。復員十五年の軍務とは異なる厳しさの仕事と難渋する私生活の後、漸く僅かに頑なさが解れてゆくのに、戦争の傷跡の深さが伺い知れる。
それにしても人間はこうしたものだろうかとの疑問も湧いた。欲望と嫉妬に翻弄される人達が数多く出てくる。登場人物は現実的世俗的な感覚が行動基準になっており、単純な感情に支配されて動いているようで、そんなことで思う反面、自分も含め人間はそうしたものかなと相反する感想を持った。それにしても政界や財界が実際にこんな風に動いているとしたらと呆れながら恐ろしくなった。こうした権謀術数の世界をよく知らない(そういう世界を避けて生きてきたかもしれない)ので、私がそう思うだけで小説を現実が追いかけたと解説に書いてあり、実際の政界財界はこれに近いのだろう。