駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

「不毛地帯」読了

2009年12月21日 | 
 初めて山崎豊子の小説を読んだ。非常に面白かった。夢中で読んでいて、不覚にも一駅乗り越したほどだ。
 この小説にはモデルが居り、事実に即した部分もあるらしい。全編に第二次世界大戦の陰が差している。シベリア抑留生活の極限の惨めさに戦争の理不尽を感じた。壱岐という主人公の持つ感覚鈍磨と紙一重の冷静さは軍人としての訓練と抑留体験に影響されて生まれたものなのか、不思議な頑なとも思える強さを持った人物だ。復員十五年の軍務とは異なる厳しさの仕事と難渋する私生活の後、漸く僅かに頑なさが解れてゆくのに、戦争の傷跡の深さが伺い知れる。
 それにしても人間はこうしたものだろうかとの疑問も湧いた。欲望と嫉妬に翻弄される人達が数多く出てくる。登場人物は現実的世俗的な感覚が行動基準になっており、単純な感情に支配されて動いているようで、そんなことで思う反面、自分も含め人間はそうしたものかなと相反する感想を持った。それにしても政界や財界が実際にこんな風に動いているとしたらと呆れながら恐ろしくなった。こうした権謀術数の世界をよく知らない(そういう世界を避けて生きてきたかもしれない)ので、私がそう思うだけで小説を現実が追いかけたと解説に書いてあり、実際の政界財界はこれに近いのだろう。
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小話「へ」

2009年12月20日 | 身辺記
 「へんじ」
 寒い日は暖かいそばが美味しい。今の季節にしかない牡蛎そばをふーふーと食べる。おかめうどんを食べていた妻が「今何か言った」。「いや、なにも」。と答えつつ、実はガスを一発排出していたのだ。
 まさか返事があるとはへもびっくり。
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小話「よ」

2009年12月19日 | 身辺記
「欲張り?」
 近くのDIYショップに暖房器具を買いに行ったら、「千両」が並べてあった。医院に置いたらよさそうだなと手に取り、どれが良いかなと横を見ると実の大き目のものがあり、「万両」と書いてあった。千両は知っていたのだが、万両は知らなかった。高い方が良いだろうと千両を止め「万両」を二鉢買ってきた。翌日「先生、万両を買われましたね」。と何処で見ていたかのか患者に言われた。心の動きを読まれたかとヒヤリとした。
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待たされる時の知恵

2009年12月18日 | 診療
 冬場は時に混む。待合室で一時間くらい待たされることがある。イライラするのは血圧だけでなくいろいろと心身に宜しくない。
 当院にはテレビは置いてなく、暮らしの手帖、クロワッサン、ナンバー、ダンチュー、サライの他に新聞一紙、数十冊の単行本が置いてある。待ち時間に読んでもらおうという作戦だ。結構有効に活用され、待ち時間のイライラ解消に役立っているようだ。中には文庫本持参の賢明な方もおられる。
 おばさん達には何はなくてもおしゃべりだ。
 「今、盛り上げっていただよ。先生いくつ?だって。私より上」。と67歳のおばさんに言われる。「勿論、年下ですよ」。といささか憮然として言う。大体若く見られることが多く、その種の失礼には慣れているのだが。
 まあ、そうして大きなトラブルもなく、混んでいれば多少待たされるのは止む無しと大過なく済んでゆくのだが、逆に待たされない時の工夫が必要な時もあるらしい。 
 待合室に患者さんが誰も居らず、「あれ、今日休みかと思った」。と言いながら、「直ぐ呼ばれたのでドキドキして血圧が上がってしまう」。といつもよりやや高めの血圧を釈明される患者さんもいるのだ。そんな時はちょっと雑談をして二三回深呼吸をさせて測り直している。
 実は、誰も待合室に居なくても平然としていられるようになるには十年掛かる。開業して数年は患者さんが来ないと何か悪い噂でもと疑心暗鬼になったものだ。
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難しい予測

2009年12月17日 | 診療
 当院は予約制にしていない。高齢の方が三分の一ほどおられ、管理が難しいのと長時間お待たせすることは少ないからである。とは言っても冬はインフルエンザや感冒で結構混み合い一時間以上お待たせすることがあり、申し訳なく思っている。 何か良い対策はないかと思うのだが、なかなか名案が浮かばない。混むと言っても毎日ではなく波があるのだ。勿論、雨風の日は少ないのだが、好天だから必ず混むわけではない。ただ空いた日や混んだ日が三日以上連続することは極めて稀だ。
 別に患者さん同士が示し合わせて来院するわけではないはずだが、なにかパターンがありそうで、天気予報のように予想できると良いのだが。
 今日の午前中は混んだ、患者さんの不平に医者は昨日は空いていたんですよとはぐらかしで答えたことだ。
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