駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

三段跳びの季節

2009年12月01日 | 診療
 もう師走だ。この季節になると三段跳びのフィニッシュを意識しなければならない。つまり春のゴールデンウイークのホップ、八月お盆のステップそして年末年始のジャンプだ。
 糖尿病高血圧高脂血症などの生活習慣病の患者さんは大体月一回の通院をしている。こうした患者さんに連休を飛び越すための長期処方をする時期なのだ。長期処方をすると連休後も長期を望まれる方が出て来て、どんどん通院間隔が開いてしまう。
 これがちょっと困る。高脂血症だけなら60日処方もさほど問題ないのだが、高血圧や糖尿病はやはり月一回の診察をしたい。微妙ではあるが変化があり、油断できない病気なのだ。だから一ヶ月以上の処方を希望される方には家庭血圧の測定やヘモグロビンA1Cの値が良いことを条件に出すようにしているのだが、実際には馬の耳に念仏の患者さんも結構おられ難渋する。経営的なことと勘ぐられたりするのも不愉快だし、元々断る力不足なので、妥協することも多い。もう三分の一の患者さんは一ヶ月以上の処方になってしまった。
 本当に医者としては情けないのだが、医学的に月に一度は診たい患者さんでも、ごねられると譲ってしまうことが時にある。人間には遠くを慮る能力が不足しているので、差を目に見えるように説得できないのだ。確かに半年一年であれば診察の間が空いても差がでないが、五年十年となるときめ細かい診察が奏を功してくると観測している。
 断る力を付け、医学的な理由で処方間隔を決めることを徹底してゆきたい。安定して自己管理の出来る人なら5、60日分でも問題ないのだが、こうした患者さんはむしろ進んで毎月来られ、不安定で自己管理の不十分な患者さんが長期処方を望まれるのが現実なのだ。いつもそこにある現実の壁を、いくらかでも突破したいと考えている。
 
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断る力

2009年12月01日 | 人生
 勝間和代という人が居る。よく名前を見聞きし、ご本人がテレビで話しているのも見たことがある。きっと頑張り屋で有能な方なのだろうとは思うが、親近感が湧かず著書を読んだこともなくじっくり番組を見たこともない。
 しかし彼女の本のタイトル「断る力」という言葉には思い当たることも多く、なるほどそうだと感じ入っている。
 
 どうも相手が困っているように見えるとつい「いいですよ」と返事をする性向が治らない。ひょっとしてあの医院は買ってくれるという裏情報が回っているのではないか、と思うくらい医療機器の売り込みがやってくる。
 ついついセールストークに、あれば便利かと買ってしまう。友人のH先生にいつも「先生は駄目だなあ、そんなものそんな値段で買って」。と注意されている。睡眠時無呼吸の検査機器から骨密度測定器まで、いろいろ揃っている。 
 必要な検査しかしないという信念で診療しているので、時々しか使わず、とても採算は取れない。まあ診療の質は上がるからよいと腹をくくってきたのだが、来春は開業医に厳しい改定があるようなので、これからは採算の取れない測定器は経営的に無理だろう。
 セールスの人は冷静に考えれば売ることしか念頭にない。だから自社製品の良いことしか言わないし、今が買い時と必死に勧める。売れないと困るという表情なのは上司の鞭が入っているからなのだが、なんだか可哀相になってしまう。勝間女史に怒られそうな感覚だが、買ってあげようという気持ちが起こる。
 あとで何だあれは売るためだったのかと思うことが多い。売ってしまうと訪問が途絶えるのだ。調子が悪ければ、技術の人が来るだけだ。何度も不満足な目に遭ってだいぶん学んでは来たが、まだまだ断る力が足りない。話を聞く癖が付いているのがよくないのかなあと思ったりする。
 そこへ行くと女房は駄目な物は駄目とにべもない。セールスが来た時には交代して欲しいと思うのだが、居て欲しいと思う時に居ないので難しい。
 ちょいと早いが、来年の目標は断る力を付けるにしよう。
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