駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

カルテという記録

2017年08月12日 | 医療

     

 今は電子カルテを使ってカルテを書いている。私は先駆けで市内で二番目に使い始め、もう二十二年になる。ほぼブラインドタッチだが、キイボード世代ではないので、画面を見ながら打っている。そのために患者ではなく画面を見ている時間が長い。電子カルテが出始めた頃は画面ばかり見ていると批判されたが、今では電子カルテの医院 病院が増えたので、患者さん側にさほどの抵抗感はないようだ。勿論、初診の場合は向き合って話を聞き、書き切れない部分は患者さんが診察室を出てから書いている。

 電子カルテは記録が消えないように機構上にいくつかの配慮されている。そのため記録を消すことは難しく、22年前のカルテはそのまま残っている。電子カルテに功罪はあるが、功の方がうんと多い。探すのが簡単、読めない字がない、書き換えることが出来ない(書き換えるとその記録も残ってしまう)・・・。罪は図が書きにくい、紋切り型の文章になりやすい、目が疲れる・・くらいのもので少ない。コピーしやすい、伝送可能は、悪用もできるということで罪と言えないと思う。

 唯一の大問題はフリーズしたり、機器が故障したりすることだ。これは導入時に比べれば減少しフリーズは年に数回、故障は2年に1回くらいになっている。

 個人的には電子カルテになってから、カルテを分かり易く書くようになったと思う。手書きの時は走り書きでメモ的に書いていたところがあったが、今は他の医師が見ても分かり易いように書いている。今までに医療事故が一回、患者や家族に文句を言われたことが十数回あるが、警察沙汰は一度もない。事故は皆無にと取り組んでいるが、今後絶対ないとは言えないし、患者のクレームは医療側としては落ち度はないと思っていても、結果が悪いと誰かを責めたくなる気持ちになる人が居るのでなくならないだろう。正直に言えば、防衛的な意味も多少はあって、きちんと記録に残すようになった。まったく同じように診療してもお礼を言われる人と受付で嫌味を言っていかれる人が居るのが世の中なのだ。

 医療に秘密はないので、希望があれば全て患者に公開する用意がある。但し、一対一では躊躇することもあると思う。というのは神経質とか指示に従わないとかいい加減とか、本人が読むとムッとすることが書いてある場合もあるからだ。しかし、それは医療側には事実で伝えておかねばならない大切な情報だから、書かざるを得ない。時には不快不都合、それが事実というものなのかもしれない。  

コメント
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