駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

どうして車の運転が上手かというと

2015年02月16日 | 人物、男

          

 Mさんは数ヶ月前から通院を始めた八十八歳のお爺さんだ。年齢に比して歩き方もしっかりしているし、話もまとまりがある。どこか飄々としておられ、なんだか仙人のような不思議な印象を与える人だ。午後は暇だったので、少し雑談をした。

 高血圧の薬を飲み始めてもう二ヶ月になるのに、診察室の血圧は160/90くらいで高めだ。

 「まだ、ちょっと高いですね」と言うと、

 「さっき体育館で測った時は138の74だったよ」と言う。

 「体育館て、西丸の」。

 「ええ、そうですよ」。

 「あれ、ここまでどうやって来たの」。

 「車ですよ」。

 「車って、まだ運転できるの」。 暫く時間をおいて、にやっと笑って

 「パイロットだったんだよ」と言う。

 「えー、飛行機の」。

 「そうですよ」。

 どうもあこがれだった飛行機のパイロットなどと聞くと、恐れ入るというか感心してしまい、「あー、そうでしたか」と最敬礼してしまう。八十八歳で車が運転できることとパイロットだったことが、どう関係しているかというと、つまり乗り物を運転する才能があるんですということらしい。

 おつむの方も良いんでしょうねと言うと、破顔一笑、いいえ全然と手を横に振られ「関係ないですよ」。

 別に謙遜という風でもない、まあ成績はともかく地頭が最高級品なのは間違いなさそうだ。

コメント
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