N婆さん81歳、婆さんとは失礼かもしれんがそう書きたい、が帰った後で、受付のAさんが後ろに恐縮する新入りを控え、「申し訳ありません」。と謝りに来た。
びっくりして交互に顔を見つめる。「四百八十円に五千円を出されたので四千五百二十円をお返ししたのですが、五百円貰ってないと言い張られ、言い負けて五百円渡してしいました」。横幅のある新入りが小さくなっている。
「なんだと馬鹿者」。と言いたいのだが、認知と地頭には勝てない。「今度来た時、説明してわかって貰えたら、500円返してもらいなさい」。と実現不可能なことを言ってしまった。
Nさんはいつも受診されると「今日は一番調子が悪い」。と世の不幸を一身に背負って居られる一人暮らしのお婆さんで、ケアマネと連絡を取りながらヘルパーさんを適宜入れて生活支援をさせてもらっている。曲がった背中から顎を突き出し、上目づかいで貰っていないと言い張られ、どうしてよいかわからず、つい五百円を渡してしまっただろう。
今日は受付のベテランが姪御さんの結婚式で休みだったので、レジをしていた新入りに目が届かなかったらしい。面接をして有能な人にお願いしたはずなのだが、書類を扱う事務の仕事が長くコンピューターは得意でも高齢者の接客には慣れていなかったのだろう。コンビニやスーパー方式のお釣りの返し方を徹底しなければと思ったことだ。