硬軟は触感だけでなく気質にも使われる。昔、硬派と言われたが今は軟弱。それはさておき、モノやコトの形質を表現する対の言葉は数多く、長短、清濁、濃淡、明暗などなど数え上げれば十は下るまい。
診察は五感(時に第六感も活躍)、を使う技術なので、得た情報の言語化に形質を表現する言葉が欠かせない。
触診ではまず大小、硬軟、粗滑、弾性、可動性、被覆性、境界の明瞭性、波動の有無、熱感の有無などを直ちに把握しなければならない。これらに色調や圧痛の有無程度などを加えて、「はて、このしこりはなんじゃいなあ」。となる。
場所大きさ性状にも依るが八割方触っただけで何かわかる。自信家は九割、謙虚控えめな医師は七割と言うだろう。俺は間違えた事がないと言う医師や触っただけでは分かりませんなどと言う医師には近寄らない方がよいかもしれない。
まあこれは医師に限らず職人といわれる人が身に付けている能力で、驚くことはない。有り体に言えば西瓜南瓜牛豚の鑑定に似ている(と思う)。闇の世界では女衒と言われる人達が居て鑑定していたとも聞く。
さて硬派軟派どちらかが恐いかと言えば、硬派だろう。軟派では家が壊れることがあっても国が壊れることは稀だろう。これはしこりでも同じで、硬い方が質が悪いことが多い。