お客さん(患者さんもお客さん)相手の仕事をしていると、その日の仕事内容や量はあなたまかせで、忙しかったり暇だったりで不規則に変動する。連休の後とか月曜日は混み合うことが多いのだが、必ずというわけではない。開業し始めは患者さんの数が気になり、最初二年くらいは、急に少なかったりすると、考え込んだりしていたが、まあ取り越し苦労というか、考えてもわかるわけはなく、訪れる薬の卸や薬品メーカーのMRに聞くとほかの医院も暇なことが多く、地域である程度同期しながら変動しているのがわかり安心したものだ。それでも患者さんが少なくても、心が平穏でいられるようになるのに十年近くかかったような気がする。
今は来院患者が少なくても、そういう日だと気にもせず、溜まっている書類を書いたり、地図やネットを見たりしている。日単位では少ない日と多い日が倍違う。月になると20%、年になると4%くらいの揺らぎで、だんだん揺らぎが小さくなる。ただ年では総額が大きいから、少ない年は会計の余裕がなくなる。
この十年、患者数はほぼ横合いであるが、医療費の改定や職員の昇給があるので、黒字は減ってきている。あと数年で赤字になりそうな勢いだ。厚労省は病院に厚く、開業医に薄く改定してくるので、私の所では実質マイナス改定になっている。当院では特定疾患の指導料や末期往診料を頂いていない。これを頂けば、かなりの増収になるが、診療内容にさほど差がないのに前回と今回あるいはAさんとBさんの値段が大きく違うのには頂く方が納得がいかず、一律低い方に合わせている。これには様々な意見があり、どちらがよいとか、だからどうだとか言うことではなく、私はそうしているということだ。
だから気にならなくなった来院患者数の揺らぎも、もう暫くすれば浸水の原因になる可能性があり、揺らぎに身を任せてのんびりしていては駄目で、それを凌ぐ手立てを考える必要が出てくるかも知れない。
尤も、おそらくその頃には頑張る道ではなく、引退の道を選ぶことになるだろう。