駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

学校へ来ない親ほど理不尽な要求

2010年07月06日 | 医療
 「学校へ来ない親ほど理不尽な要求」との見出しを認めた。これを医療従事者はそうだよなあと直ちに首肯するだろう。それは看病しない家族ほど理不尽な要求をするのを実感しているからだ。
 二ヶ月間殆ど毎日病院に泊まり込み末期肺癌の夫を看病して来られた奥さんと、医師看護師のスタッフが、あと幾許もないと、やせ細った横顔を見せながら眼を閉じて穏やかな息をしている患者さんをベットを囲んで静かに見つめていると、どこから駆けつけたか叔父だか甥だかが息せき切って病室に入って来るなり、患者さんの枕元にも行かず、何も処置がされていないのを見て取ると、突然医師に向かって「お前は何を見ている、ちゃんと治療しろ」。などと怒鳴るのだ。たいていは疲れ切った奥さんが取りなしてその場は収まるのだが、蜘蛛の子を散らすようにスタッフは居なくなり、初めて駆けつけて鼻息の荒い男と青白い奥さん、眼を赤くした娘さんと仮眠を取っていた息子が個室に取り残されるのだ。
 よく言えば見舞いに来なかった取り返しに何かしなければという気持ちから、悪く言えばさして重要人物でもないのに会社を抜けられないからと見舞いに来ない自己肥大妄想型の人物のために、そして何よりも現場に来て現実によって自己中心的な妄想を矯める機会のなかったことが、過大な要求に結びついているのだと思う。
 学校での対応の詳細を知らないが、病院や医院では様々な防御策が出来ており、形だけの解決策が用意されている。医療は、勿論教育も、信頼の上の成り立っているので、理不尽な要求には不毛の収穫があるだろう。
コメント (2)
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