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駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

個体差の問題

2010年05月20日 | 医療
 昨夜、やさしい医療統計の解説を聞いた。服薬後の薬剤血中濃度の推移を示すグラフが示され、見ると急速に立ち上がりエクスポーネンシャルに下がって行く。なかなか美しいカーブだなと見とれていると、標準偏差の髭を付けてみましょうと言われ、上下に陰が現れた。これが一標準偏差なのだが、随分長い髭だ。ナポレオン三世やダリもびっくりと言わねばならない。それどころか迂闊な町医者もびっくり、「えっそんなに個体差が大きいんですか」。つまり人によってそれも百人に一人どころではない数人に一人、相当血中濃度がずれている(倍以上)わけだ。多くの臨床家は迂闊にも美しい平均値のカーブに目を奪われ、たかだか最初数名の印象で、どうもこの薬は効きが悪いあるいは良く効くなあという先入主を持ち、それを以て以降の患者に対している恐れがあるわけだ。効きが悪い中には血中濃度の上がりの悪い人も混じっている可能性も大きい。
 よってもって、テイラードメディシン、つまり個々に合わせてて仕立てた投薬の必要性が申し立てられているわけだ。これは遺伝子などを調べて個々の人に合った薬の種類や量を決める手法で、一部実用化が進んでいる。
 しかしながら、いつものことだが、末梢医療機関までテイラードメディシンが行き渡るのには十年掛かるだろう。それに、費用と手間の掛かることだから、制度としての定着にも時間が掛かるだろう。
 例のごとく先がけて始めた施設に長蛇の列ができないように、おいそれとは無理だが民度を挙げ制度を整えて頂きたい。
 この勉強会はスポンサーが付かず、病院主催で食事が付かなかった。折角の名講義だが、腹が減ったとぶつくさ言いながら帰途に着く。後輩のM氏が「先生ラーメンでも」と言うので、お勧めの店に付き合ったが、ラーメン帝国日本の異分子である私は春樹と同じくラーメンが好みでなく、舌なめずりをするM氏を横にスープを半分残し、じゃあと別れた。味の好みの個体差も大きい。
コメント
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