Mさんは脳梗塞で寝たきりになって七年、先月八十歳の峠を越えた。鼻からの経管栄養で、話すことも動くこともできない。身体の清拭から下の世話まで、全てお嫁さんが黙々とされている。痛みに対する反応はあり、時々悲鳴のようなうめき声を上げて曲がった腕を硬直させる。
往診に行った時、うめき声が泣き声のように聞こえたので「ああ、泣きたくなるのも分かるよ」。と軽く肩を叩くと、脇でお嫁さんが「私も泣きたいです」。と呟く。
咄嗟に掛ける言葉が出ない。
往診に行った時、うめき声が泣き声のように聞こえたので「ああ、泣きたくなるのも分かるよ」。と軽く肩を叩くと、脇でお嫁さんが「私も泣きたいです」。と呟く。
咄嗟に掛ける言葉が出ない。