魅力ある女性

　吉村昭が六十過ぎの私でも振り返る女性が居ると書いている。それは自分の美しさに気付いていない女性だと言うのだ。
　何となく分かるのだが、ではどうしてその人が自分の魅力に気付いていないとわかるのだろうかと聞きたくなる。たぶん、それは表情仕草や歩き方などから分かると答えられるのだろう。あるいは人間カメラというか刑事のような観察力を持った人だから「えっそんなこともわからないの」。と答えたかもしれない。
　これは逆に言えばどんな美しく魅力溢れる女性もそれを意識している人には惹かれないということで、吉村昭の審美眼には形だけの美でない美しさも含まれていたようだ。どうもそこはかとなく津村節子はそうした女性なのだと言うことが伺われ、なんだかご馳走様と言いたくなるのだが全然嫌みを感じない。