技術屋の適性

　レントゲン装置の維持点検にいつもと違う若者が来た。三時間で終わると言ったのだが、四時間掛かってしまった。午後休診とはいえ待っている方はしびれが切れる。
　そうは言っても額に汗して分解しているので、書類書きをしながら待っていた。もう終わりかなと見に行くと、果たして本人も急いでいるようで、そそくさと工具を仕舞っている。さてと工具箱を持ち上げると、蓋のフックがきちんと掛かっておらず蓋が開いて中身がこぼれ出た。もう一度床に広がった工具を仕舞い直さねばならない。それを見てどうも此奴は段取りが悪くて仕事の遅いのでないかと疑った。
　点検終了の報告をしてくれる。いくつか不良の部品があったようで交換したとのこと、いつもは問題無しのことが多いので、成る程今日は丁寧に点検したのかなとも思う。
　終了確認のサインをするのだが、見ると書類の字が乱雑で、枠からはみ出している。待っている彼の携帯が鳴る。話の様子から、次の仕事を急かされているようだ。はいはいご苦労様と書類を返す。
　この若者、熱意誠意は感じられるのだが、手際の良さ周到さはもう一つのようだ。果たして彼が一人前の熟練した技術者に育って行くか興味を持った。抜かりや焦りがあって、あまり技術者に向いていないと云う印象だが、正直で誠実という性質が欠点を補ってゆく可能性はある。理系文系という人の分け方は皮相で不十分なものと考えているが、理系の人は対物に文系の人は対人に向いている傾向はある。そしてそれはさまざまな能力や特性と結びついている。だからある程度の向き不向きが生まれるのだが、補える部分もあるのではないかと思っている。いかがなものか。