駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

町医者の診察室から その1

2008年06月10日 | 医療
 診療に於いて一番大切なことは信頼関係があることです。もちろん初診の時から信頼関係といっても難しいので、心を開いて話をしていただければよいのです。
 内科医は大人を相手にしていますから言葉の裏や表情を読みます。経験を積めばかなりわかりますが、それでも隠されてはわからない情報が数多くあります。どうぞ、包み隠さずお話しください。他の医院で診てもらったことを決して怒ったりしません。どうぞ、正直に教えてください。我々は大人ですから、変わった性癖などに驚いたりしません。守秘義務を遵守していますのでご心配なく。
 病気の診断は病歴(患者さんの話)からわかります。それで見当が付かないことは希です。検査は確認するためにするのがほとんどです。もし碌に話を聞かないで検査をたくさんする医者がいたら、それは時間と手間を惜しんで、医療費の無駄使いをしている可能性があります。あるいは患者さんとの間に信頼関係がなく、防衛的に幅広く検査をしているのかもしれません。
 近い将来、診察なしに血液一滴でほとんどの病気が分かる時代が来るようなことをおっしゃる研究者がいます。ちょっと楽観的過ぎるし、現場をご存じない気もしますが、確かにかなりの病気でそうしたことが可能になると思われます。罹患している病気だけでなく、これから罹る病気の確率も分かるようにもなるでしょう。それは大きな福音ではありますが、病人が半減し町医者が失業することはないような気がします。というのは身体だけの病気というのはほとんどない、いや、全くないと言ってよいからです。心(精神)の病気や変調も血液一滴で分かり、特効薬をコンピュータで指示されるようになれば確かに町医者の危機ですが、それは人類の危機かもしれません。
 信頼というのはもちろん相互の信頼で、内科の病気は医療者と患者の両者の協力がないと良くなりません。お任せでは駄目で、患者さんにもやっていただくことがたくさんあるのです。そうした手続きと行為は治療の大きな部分を占めています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする