駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

今日も雨

2008年06月29日 | 自然
 雨の朝は静かで薄暗い。カーテンを少し開けると。鉛色の空から雨がしとしと降っている。今日も雨だ。厚い雨雲の曇天が続くと、雨が降らなくても雨の続きに感じられ、もう何日も降っているように感ずる。
 小雨はあっさりと記憶に薄く、長雨や豪雨は記憶にも溜まり、思いがけぬ昔を思い起こさせる。見慣れた町が油絵のように利休鼠に煙る梅雨の雨。みるみる浮子の周りに波紋が広がり、突然降り出す大粒の夕立。足下に小石を残しながら、土砂に濁って溝に溢れる台風の雨。
 ぐちゅぐちゅと靴に水が入り込み、傘は僅かに頭髪を守るだけ、肩口まで濡らして帰るとタオルと下着が用意してある。勝手口で足を拭き、風呂場で着替えたのを思い出す。なんと気持ちよかったことか。
 故郷を離れ、別の土地に根を下ろしている者しかわからない感興。いやあるいは生まれた土地に暮らす人にも、故郷は時の彼方にあって懐かしく、川面に降り注ぐ雨や軒の雨音にふと思い出す少年の日があるのだろう。
 雨は庭や道路や田畑だけでなく、心にも降り、渇いた心を潤し、物思いを誘う。 雨の日曜日、朝バロックを聞きながらコーヒを飲む。What else?

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