展覧会を見て気になることが生じた。平櫛田中はなぜ岡倉天心胸像(ブロンズ)を創ったのか。しかもなぜ派手な金箔にしたのか。江戸初期の円空仏のどこが良くて注目されるのか。慶応四年の神仏分離令(廃仏毀釈運動)は変革期の奇妙で逸脱的な一エピソードとして軽んじていいのか等々である。今回廃仏毀釈について安丸良夫著「神々の明治維新」を読んだ。30年前の岩波新書だ。興味深い箇所を書き出すことぐらいしかできなかった。
キリスト教≧一向宗・日蓮宗≧流行神や御霊≧民俗信仰≧仏教一般 これは幕藩制下の宗教的世界の危険度ランキングである。明治政府の指導者が確保したいのは天皇を中心とする新しい民族国家への国民的忠誠心だった。
急進的な廃仏毀釈を推進したのは水戸学や後期国学の影響を受けた人々だった。『キリスト教や仏教などの異端の教えは来世と魂の行方についての妄誕を教えることで人心をとらえているのだから、それに対抗するためには、死者の魂の行方をあきらかにして「幽明」を治める「祀礼」が国家的規模で確立されねばならない』
廃仏毀釈に一貫して抵抗したのは東西本願寺派に代表される真宗だった。『日本でキリスト教に対比しうるほどに近代的なのは一神教的な真宗だけであり、開帳・祈祷・卜占を仕事にしている真言宗や法華宗は叩きツブスことが肝要、禅宗・天台宗は学問で宗教とはいえず、やおよろずの神を信ずるという神道にいたっては未発達な原始的な宗教に過ぎない』
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