玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*経済の本を読む

2021年02月08日 | 捨て猫の独り言

 降旗(ふりはた)節雄の「レクチャー現代資本主義」を読んでみた。細川内閣の非自民連立内閣が成立して55年体制が崩壊した年に出版されている。今から26年前だ。マルクス経済学を原理論(マルクスの資本論)、段階論(レーニンの帝国主義論)、現状分析の3つに分けて独自に体系化したのが宇野弘蔵(宇野学派)だ。その直弟子が降旗節雄である。

 

 現代資本主義をとらえるためには、クルマ社会と南北問題と国家による経済の組織化という三点に分析の焦点をしぼるべきという論旨が貫かれている。現代資本主義の構造と運動が統一的に把えられ、私たちを支配している国家と資本の奇怪な結合体のイメージを明瞭にえがいていただけたら幸甚のいたりと述べている。種々の問題の中で私の第一の関心は「農業問題」だった。

 人間は基本的には自然と切り離すことができないという構造をもっており、人間はそれを農業を通して維持してきていた。農業をやることによって自然的環境が保たれる。単純な商品の経済的合理性の問題だけではない。日本の経済と風土、地域、人間とのかかわりをどうすべきかを構想することが、今日の社会主義の主要な内容をなすのではないか。

 マルクスにもエコロジー的視点があったと強調する論者がいますし、それもたしかに否定できません。しかしその点でマルクスを買いかぶるのは贔屓の引き倒しになるおそれがあります。マルクスの時代に制約されたマルクスの思想の守備範囲をきちんと確認しておき、マルクスより後に出てきた問題についてはマルクスの考えを前提にしながら我々が考えていかねばならない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする