那覇から石垣への便は日に20便もある。35年前からジェット旅客機が就航していて所要時間は1時間である。本日は石垣島と西表島の間を通り着陸しますので右手に西表島をご覧になれますという機長のアナウンスがあった。八重山では日の登る方角から東を「アガリ」、同様に西を「イリ」と読む。さらに南は「パイ」北は「ニシ」となる。新空港の愛称は「南ぬ島(パイヌシマ)石垣空港」である。
2日目、いよいよ高速船で離島へ渡る。あいにくの曇り空で波も少しある。この日は石垣島には大型バス5台の団体客がいた。バス毎のスケジュールは、離島ターミナルにあるトラベルセンターがすべてを決定する。高速船は波をたたきながら10分ほどで竹富港に到着した。マイクロバスの年輩の男性運転手の手なれた案内で、ビーチや歴史的建造物群保存地区を訪れる。船の出発時間の制約があり竹富島の滞在は短時間で終わる。
竹富港から西表島の大原港までは30分である。すぐに遊覧船に乗り移り60分の仲間川のマングローブの見学が始まった。中年の船長の案内で仲間橋の下を抜けて上流に向う。マングローブとは海水と淡水とが混ざり合う浅い水域に生きる植物の総称である。タコの足状に地表より上から斜めに根が伸び、幹を支えているのがヤエヤマヒルギでである。台風による倒木でも勝手に処理できない天然保護地域だ。
ユーモアあふれる船長だった。まもなく到着して皆さんはあのバスで移動いたします。出発地点とは違う船着き場だ。しかしまだ運転手の姿が見えないようですと言う。バスの座席で待っていると、別の帽子を被って「運転手の多宇です」と自己紹介したのはあの船長である。「船での説明は満足いただけたでしょうか」に大きな拍手が起こる。「ありがとうございます。後ほど彼に伝えておきます」と言ってバスは仲間橋を渡った。