玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*随筆「羽化堂から」

2009年06月01日 | 玉川上水の四季

 「青梅の実が地面に落ちて黄色を帯びている。麦秋の香りの一つだ。杜鵑(ほととぎす)の声が山霧の白いカーテンを引き裂くように、向こうの稜線を越えてくる。桜桃、枇杷、紫陽花は、わたしを蒼いみどりの時間のなかに眠らせる」 前登志夫の随筆集 「羽化堂から」 の引用です。麦秋とは麦の熟する頃すなわち初夏の頃のことだと知りました。

 玉川上水オープンギャラリーにおける二十四節気の小満(5/21~6/4)の記事に重なります。「玉川上水の右岸は日当たりがよく初夏にはイネ科のカラスムギ、ネズミムギ、カモガヤなどが群生する。観察のポイントは八左衛門橋から貫井橋の間は毎年多くのイネ科の植物を見ることができる。麦が熟すと野鳥の貴重な食物となる」 

 出勤途中に下流に向かって右側すなわち玉川上水の南側を観察すると約2kmの区間は指摘通り道端に麦が群生しています。日ごとに黄色に熟していくのもわかりました。これまで長い間この時期における麦の存在を全く気付かずに過ごしてきたことが不思議です。見る目がないとはこのことだと思い知りました。

 再び随筆集からの引用です。「こんなにのんびりと山霧の景色を眺めていても、わたしの五体からは苦悩の瘴気が立ちこめていよう。わたしの五体はその瘴気の霧に包まれた苦しみの器である。ただ今のわたしの心配事を数えれば数十にもなる。それでも郭公の声に目覚め、山霧の空を渡る杜鵑の道を耳で辿っているいのちのかすかな揺らぎをありがたいと思う。たとえ餓鬼阿弥であっても、世界の根底に触れているからである」

 

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