屑たばこ集め喫へれど志す高き彼物忘らふべしや
行ってきました、カトケン「高き彼物」
高校の演劇部にも上演可能な、ある意味、地味な作品でした(1人が黙々と語り、周りの人たちがぢっと聞き入るシーンが多い、みたいな…)。でも、だからこそ、ヘタな役者たちが演じれば退屈な芝居になってしまう一方で、巧い役者さんたちが演じればそこはかとなく深い芝居になる作品かもしれません。
もちろん、カトケンの芝居に前者はありえません 6人の出演者が、静岡の片田舎で暮らしている1978年の普通の人々そのもので、観客はたまたまその場に居合わせて覗き見している感覚になってしまいます。
キョンキョンも、事前の予想にまったく反して、芝居冒頭から「普通の年増(←ほめことば)」なのには驚きました。えっって感じ。80年代を代表するアイドルだったキョンキョンが、完全にオーラを消して、「子持ちのアラフォーの中学校教師」 そのものになっていました。隣のおばさまが「あれが小泉今日子?」と連れにつぶやいていました(おばさまたちの私語はこれだけ
)が、私も同じ気持ちでした。
でも、「普通の年増」が時々見せる「いかにも教師」的な言動とか、「これは冗談ョ」的なセリフ回しとか、どれも自然で、キョンキョンは見事に舞台女優でした。
基本的に地味なこの舞台に絶妙なアクセントを加えていたのは、猪原家の一人娘役の占部房子さん 男所帯唯一の女性として一手に家事をきりもりしている元気さ・溌剌さ、父親や祖父とのちょうどよい距離感などを、出過ぎることなく、ステキに表現されていました。
おじいちゃん役の滝田裕介さんが良い味を出していました。占部さんが猪原家のアクセントなら、滝田さんは猪原家の句読点って感じ…。意味不明かな?
カトケンさんからタバコの火をもらうところとか、ステテコを履いた後ろ姿は絶品(妙なところに感心)でした
ところで、カトケンさん演じる猪原正義は、とある事情で高校教師を辞めたけれど、自他ともに「教師が天職」と認める人物。キョンキョン演じる野村市恵と共に、「師とはなんぞや」を体全体から発散しているように感じられます。
現役教師の皆さん、Discipline Discipline
ですぞ
dis・ci・pline〔「弟子(disciple)の教育」が原義〕
―【名】(複~s/-z/)
1 訓練,鍛練,修養; 訓練[学習]法,修養法.
2 規律,しつけ,風紀;統制,抑制,自制
3 懲戒,懲罰;折檻(せっかん);〔宗〕苦行.
4 ((正式))学科,学問(分野).
―【動】|他|
1 〈人・動物〉を訓練[鍛練]する,[SVO to do]〈人・動物〉を…するようしつける(train).
2 〈人〉を懲戒する(punish)
ジーニアス英和辞典 第3版 (C) Taishukan 2001-2005
それにしても、相変わらずカトケンさん、良い声してます。いつものことながら、あの歯切れのよい、よく響くバリトンを聞くと「カトケンを観に来たぁ~」を実感します。
今回の観劇では嗅覚も十分に刺激されました。
まず、ロビーに入ると空間一杯に花の香りが漂っていました。その源は、カトケンの芝居では過去に例を見ないほど大量に届けられた花(大部分がキョンキョン宛て。久保田利伸さんからのもありました)。
そして、劇中、滝田さんが喫うタバコの香り
たった1本のタバコに火か付けられただけで、場内にタバコの香りが満ちる
タバコの香り(臭い)って、喫煙者の私が想像する以上に強烈なんですねぇ。
そういえば、同じくカトケンの「煙が目にしみる」(05/3/6)ではお線香の香りが場内を漂いましたっけ…。
タバコ1本、線香1本の香りまで楽しめる(生の観劇の醍醐味)本多劇場のスペースって、観劇にはちょうどいい大きさなのでしょう。
これだから止められません、本多劇場でのカトケン・・・。
そうだ、そうだ。「高き彼物」は11/25の公演がTV放送されるようです。ビデオ撮りが行われたことは確かですが、放送日・チャンネル・時間について公式発表はありません。
でも、未確認ながら、
2010年1月22日 24:45~ ('10/1/23 00:45~)
NHK BS2 「ミッドナイトステージ館」
という情報があります。期待してます
最近はカトケンの芝居を観る時以外はほとんど足を向けない下北沢ですが、以前、井の頭線沿線に住んでいた頃はしょっちゅうブラブラしていました。
もっともっと昔に大好きで欠かさず見ていたTVドラマ「淋しいのはお前だけじゃない」(ドラマ史上に残る傑作デス)に出てきたスズナリ横丁(本多劇場グループの「ザ・スズナリ」として現役の劇場です)が、ドラマそのままに存在していたことにどれだけ感激したことか
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淋しいのはお前だけじゃない [DVD] 価格:¥ 23,100(税込) 発売日:2002-03-27 |
それはともかく、何度行っても面白い街です、下北沢は…。
お店と住宅街、地元のジジババたちと今どきの人たちが渾然一体となった風情は下北沢ならではです。
それと、古着屋さん、骨董品屋(古道具屋)さん、そしてお好み焼き屋さん(特に広島風)の密集度はハンパありません
地図なんか持たず(持っていても役に立たないかも)に、うろうろさまようと楽しいですヨ
次のカトケン:2010/01/16 カトケンの「シャドーランズ」を観てきました
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