新・徒然煙草の咄嗟日記

つれづれなるまゝに日くらしPCにむかひて心に移りゆくよしなし事をそこはかとなく紫煙に託せばあやしうこそものぐるほしけれ

今月の京都遠征では奈良まで足を伸ばそうか…(前編)

2011-03-01 06:30:13 | 美術館・博物館・アート

一昨日、2月27日に行ってきた薬師寺東京別院の話です。
2月26日~3月6日までの9日間だけ開催されている「薬師寺の文化財保護展」を観に行きました。
新たに確認・修復された寺宝」を観たかったことに加えて、かの薬師寺(一昨年暮れの探訪記はこちら)の東京別院なるものにも興味があったためです。
薬師寺東京別院があるのは、品川区東五反田5丁目、いわゆる「池田山」と呼ばれる、東京でも有数の高級住宅地で、実際に行ったことのない私でも「池田山」なる地名(通称)は存じておりました(妙にことばが丁寧…)。
いったいどんなところなのでしょうか

大きな地図で見る

五反田駅東口を出て、桜田通りを横断し、急な坂道を登っていくと、そこにあったのは、宗教施設豪邸豪華マンション外車ばかりの高級住宅地でした

そして、おのぼりさんよろしく地図を頼りに進んで行きますと、

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矢印と共に「薬師寺 東京別院」の表示
一見すると「普通の豪邸(この辺りは、こんなお宅ばかり)」ですが、これが「薬師寺 東京別院」でした。

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まるでお寺っぽくありません。
薬師寺といえば、1300年の歴史を誇る古刹&大寺ですが、東京別院の玄関は企業の研修センターのイメージです(下の写真は国立歴史民俗博物館で展示されている創建当時の薬師寺のジオラマ)。

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ところが、入口で拝観料500円をお支払いしてチケットとか解説目録をいただき、階段を昇って2階へ向かううちから、内部に漂う雰囲気に呑み込まれました。なんて良い気持ちなんだろうと…。

110301_1_4 2階は礼拝室(というのだろうか?)になっていて、たっぷりと外光が入り込んで明るいスペースの奥中央に、東京別院のご本尊・薬師如来像(右の写真:この展示の解説目録です)、左に吉祥天立像(平安時代、寺外初公開)、右に十一面千手観音像(鎌倉時代、全国初公開)がまつられ、更に、「薬師寺の文化財保護展」の目玉ともいうべき大般若波羅蜜多経[永恩経](奈良時代、新発見・全国初公開)と聖観音菩薩像(鎌倉時代、新発見・全国初公開)ほか、古い教典が開陳されていました。
加えて、平山郁夫画伯が描いた散華(法要でお坊さんが散らす蓮の花弁の形をした色紙)の原画

これほど明るい場所で、至近距離から仏さんをじっくりと拝見したことはこれまでありませんでした。

そして、お坊さん大谷徹奘師だと思う)による法話が良かった…。
法話の中に、薬師寺が考える「文化財保護」についてのお話がありました。
昨年夏に奈良国立博物館で観た「仏像修理100年」展(観覧記はこちら)で知ることができましたが、修理の方向は二つあります。その時点での姿・形を維持できるようにする方向と、造られた当時の姿・形をよみがえさせる方向です。
そして、薬師寺が考える「文化財保護」とは、「仏さんは仏さんとして、人々が参拝したくなる存在であり続けなければならない」というものだそうです。
110301_1_5_2 解説目録によれば、東京別院のご本尊光背は、ご本尊の胎内に納められていた小さな薬師如来像に倣って新作したものだそうですし、吉祥天立像頭部・両手先・両沓先(つま先)を復原したものだそうですし、十一面千手観音像(左の写真)に至っては、42臂の手のうち39臂が復原されたというだけでも驚きですが、なんと顔面も復原されたものだとか
この仏像のオリジナルと同じ証拠はあるのか」といった批判もあることでしょう。
でも、現存するオリジナルから、造られた時代を推定し、その時代の様式を研究して推定して信仰の対象になり得る仏さまを復原することは、あっても良いことだと思います。
というか、これぞまさしく「薬師寺」だと思います。
戦災で失われてから450年の時を経て、一部の反対を退けて、西塔を再建したくらいですから

何十年か何百年か先、研究が進んで、現代の研究や推定が間違っていることが判明したとすれば、機会を捉えて、「何と中途半端な仕事をしたことだろうか」と笑いながら修理し直せば良いだけのこと。
現代の修復師の方々は、後世の批判は覚悟の上で、復原作業に自分の名誉をかけて取り組んでいらっしゃるのだと思います。(「仏像修理100年」展では、修理した際の詳細な記録も展示されていましたっけ)

そんな仕事って憧れます…。

ということで、薬師寺東京別院の話はまだ続きます。

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