新・徒然煙草の咄嗟日記

つれづれなるまゝに日くらしPCにむかひて心に移りゆくよしなし事をそこはかとなく紫煙に託せばあやしうこそものぐるほしけれ

7月の帰省のこと #4 [秋田県立近代美術館編]

2023-08-17 19:50:02 | 美術館・博物館・アート

「7月の帰省のこと #3 [稲庭うどん編]」のつづきです。

昼食を済ませた私は、一路、横手ICのすぐ近くにある秋田県立近代美術館(秋近美) へと向かいました。

秋近美では、7月8日~9月3日の会期で、「皇室の名宝と秋田 三の丸尚蔵館 収蔵品展」を開催中です。
実は、7月10日に前期展を観たわたしは、きょう、8月17日後期展を観てきまして、せっかくなので、前期・後期の感想などをまとめて書きたいと思います。
観覧料は1,200円格安ながら、展示点数は多くないし、前期・後期を通じて展示されるのは工芸品のみで、絵画・絵巻はすべて入れ換えか巻き替えですので、「裏を返す」しかないだろ ということであります。

さて、この展覧会は、主催者の「ごあいさつ」を引用すると、

(三の丸尚蔵館の) この数ある収蔵品から、秋田ゆかりの作品と皇室の名宝を、〈皇室ゆかりの江戸美術〉〈近代絵画の名品〉〈平福百穗と金鈴社〉〈秋田ゆかりの美術工芸品〉〈近代日本工芸の精華〉の5つの章でご紹介します。加えて、明治天皇が東北巡幸で秋田を訪れた際の写真もパネル展示し、皇室と秋田のつながりもご覧いただきます。

というもの。

三の丸尚蔵館は、新施設建設のため休館中で、これを機にあちこちで収蔵品展が開催されているみたいです。

)

去年夏に東京藝術大学大学美術館で観た「日本美術をひも解く 皇室、美の玉手箱」展なんかもその一つなのでしょう。

さてさて、秋田ゆかりの皇室の名宝と聞いてまず思い浮かぶのは、2019年春に東京国立博物館で開催された「両陛下と文化交流」展で拝見した東山魁夷「悠紀地方風俗歌屛風」(記事)でした。
そして当然のようにこの展覧会でも展示されていました
前期展では右隻(春・夏)後期展では左隻(秋・冬)と分けて展示されたのが、ちょっと残念 できることなら一緒に並んでいるところも観たかったな…

秋田県人たる私にとって平成期「悠紀地方風俗歌屏風」別格の存在ですが、これを除けば、前期展白眉酒井抱一「花鳥十二ヶ月図 (5・6・7・8月の4幅のみ)」後期展では伊藤若冲「旭日鳳凰図だったと思います。
「日本美術をひも解く 皇室、美の玉手箱」展で観たときも「一番お持ち帰りしたい作品だった「花鳥十二ヶ月図」は、今回もとろけそうになるほど素敵でしたし、巨大な掛け軸に仕立てられた「旭日鳳凰図」は、とにかく華やかさ & めでたさに満ち満ちておりました。どんな不幸があっても、この絵を飾ったら不幸木っ端みじんにされそうな感じ… ただこれほど大きな作品(絵画だけで 186.0 × 114.3 cm) を飾られる家庭はそうそう無いというのが難点

「お持ち帰りしたい」といえば、初めて拝見した2009年秋の東京国立博物館「皇室の名宝」展でそう思って(記事)、その後、いくつかの展覧会で目にしては、食い入るように見つめため息をついた作品も出展されていました

並河靖之「七宝四季花鳥図花瓶」です

まさかこの作品が展示されている(通期展示)とはつゆ知らず、展示室で「七宝四季花鳥図花瓶」が目に入った瞬間、思わず「わおでした。
しかも、すぐ近くには、「西の並河 東の濤川」と並び賞された濤川惣助無線七宝「墨画月夜森林図額」(原画:渡辺省亭)まで展示されていて、これまた良い趣向でした。
ただ、「七宝四季花鳥図花瓶」を鑑賞するには、展示室が明るすぎて、あの麗しい漆黒堪能しきれなかった気がしないでもありません

ちょいと脇道に逸れますが、きょう、見終わったあと、運試しでアクリルキーホルダーのガチャガチャ (500円)一回だけやったら、

1/6の確率から見事に「七宝四季花鳥図花瓶」を引き当てました

持ってるなぁ~

   

「秋田ゆかりの作品」となると、秋田出身の作家の作品はどうなのか?

そこは、しっかと、皇室に献上 or 宮内省が購入した秋田出身の作家の作品も展示されていました。

とりわけ、平福百穂寺崎廣業の作品がたっぷりと展示されていました。
三の丸尚蔵館には、こんなにたくさんのお二人の作品がコレクションされていたとは知りませんでした

どうでもよい話ですが、平福百穂「感恩講図鑑」の解説に「へぇ~となりました。

感恩講は、文政12年 (1829)、秋田で窮民や孤児救済を目的に始まった慈善団体です。(中略) 本図鑑は、秋田の那波家から百穂に制作依頼されたもので、皇太子(大正天皇) へ献上され、その後木版画で配布されました。(後略)

ここで出てくる「那波家」、私の生家は那波家からの借地にありました

   

前期・後期「巻き替え」が行われた絵巻3点もなかなかでした。

まず、岩佐又兵衛をくり (小栗判官絵巻)は、人々の顔は美しくないけれど、その動きは躍動感にみなぎっていて、いかにも岩佐又兵衛 って感じ

また、俵屋宗達(絵) & 烏丸光廣(詞書)「西行法師行状絵詞」尾形光琳「西行物語絵巻」は、その関係がなんともおもしろい
「西行法師行状絵詞」の説明板を転記しますと、

俵屋宗達は、寛永7年 (1630)、当時宮中に所蔵されていた室町時代の《西行物語絵巻》(所在不明) 模写しました。それは越前松平家の家老・本多富正の依頼によるもので、長らく萩藩毛利家に伝来しました(現在は諸家分蔵)。それとは別にもうひとつ模写をしており、それが本作(渡辺家本)です。2作の細部は微妙に異なっていて、尾形光琳の《西行物語絵巻》は、本作の図柄をもとに制作されたものです。

だそうです。光琳はどんだけ宗達大好きだったんでしょ
この2作品同時に拝見できたのは貴重な体験でした。

この他にも著名な大家の作品が、これでもか と展示されていましたが、キリがありませんので、この辺でおしまいにします

三の丸尚蔵館は、今年10月以降一部リニューアルオープンし、2026年にはグランドオープンする予定だとか。
そのコレクションの質と量に反して、きわめて貧弱な展示スペースだった三の丸尚蔵館が、どんな美術館に変身するのか、楽しみでたまりません

   

「#3」とのつながりから、、、、きょう (8月17日)「皇室の名宝と秋田」展を観た後、同じ秋田ふるさと村にある「八代目佐藤養助」横手店昼食を摂りました。

食べたのは「えび天おろし」ぶっかけうどん

というところで、「#5」では、先月の帰省の話に特化します。

つづき:2023/08/18 7月の帰省のこと #5 [秋田港編] 

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