新・徒然煙草の咄嗟日記

つれづれなるまゝに日くらしPCにむかひて心に移りゆくよしなし事をそこはかとなく紫煙に託せばあやしうこそものぐるほしけれ

2022年の美術館・博物館めぐりの振り返り [前編]

2022-12-30 15:04:06 | 美術館・博物館・アート

毎年12月30日は、その年の美術館・博物館めぐりの振り返りとして、1年間に私が観た展覧会の TOP 3~4 次点の6~7展を選んでおりまして、今年も独断と偏見で選考いたしました

ちなみに、まったく参考にはなりません(私の嗜好とそのビミョーな変化が察せられるかもしれませんが、それこそ役にたたない)過去10年の記事の一覧を載せます。気がつくと今回が11回目なんですな

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年

   

さっそく TOP 3、行きます
順番は、観た順番です。

琉球 @東京国立博物館

今年は沖縄が日本に復帰して50周年という節目の年。この展覧会はまさしく「沖縄復帰50年記念」と冠されています。
沖縄関連の展示だけで平成館の広いスペースを埋められるのか? なんて失礼なことを考えていましたが、まったくもって失礼な話で、展示替えを含め、なんともボリューミーな展覧会でした。
私が10年前の沖縄旅行では、首里城複製を拝見して(恐らくあの火災焼失)

「実物を観たいぃ~」と思っていた「玉冠(たまんちゃーぷい)」は、私が出遅れたせいで観られなかったの残念

でも、梵鐘 旧首里城正殿鐘(万国津梁の鐘)を拝見し、鋳込まれた銘文(読み下し文と現代語訳)を読んで、もう…
(写真は首里城で観た「万国津梁の鐘」のレプリカ)

 琉球國者南海勝地而 鍾三韓之秀以大明為
 輔車以日域為脣歯在 此ニ中間湧出之蓬莱
 嶋也以舟楫為万國之 津梁異産至宝充満十
 方刹

漢文だけでもなんとなく意味が判る感じですが、この銘文の冒頭に書かれているのは、要は、「琉球は中国・日本と親密な関係をもち、その中間に湧き出た蓬莱の島。海洋貿易で万国の橋渡し(津梁)をし、国内には様々な宝であふれている」ということ。

この鐘は、1458年琉球王国尚泰久王(第一尚氏)が鋳造させたもので、その正式名称にあるように、首里城正殿(のどこか)に設置されていたのだとか。
1458年は、日本では室町幕府三代将軍義政の治政で、もう少しすると応仁の乱が起こって戦国時代になだれ込むという時代。ちょうど、太田道灌江戸城をつくった年でもあります。

と、「万国津梁の鐘」のことを書き連ねてしまいましたが、この鐘の銘文に触れることができただけで、「琉球」展TOP 3 に入れたに等しいのでご勘弁を

生誕100年 朝倉摂展
    @福島県立美術館

この展覧会のことはこちらの記事で書きましたのであっさりと…。

ひとことで言って、「新幹線で日帰り遠征までして観に行ってホントに良かった 温泉にも入れたし…」ということです。

鉄道と美術の150年
   @東京ステーションギャラリー

今年の美術館・博物館おさめとして今週火曜日に観てきたこの展覧会がTOP 3 に入りました。
まさしく有終の美です

今年は、「沖縄の本土復帰50周年」というだけでなく、「東京国立博物館の創立150周年」であり、また、「鉄道開業150周年」という節目の年で、この展覧会も、

日本初の鉄道が新橋-横浜間で開業したのは明治5(1872)年のことですが、奇しくも「美術」という語が、それまでの「書画」に代わって初めて使われたのも同じ年のことでした。鉄道と美術はともに日本の近代化の流れに寄り添い、時にはそのうねりに翻弄さながら150年の時を歩み続けてきたのです。この展覧会では、鉄道と美術の150年間にわたる様相鉄道史美術史はもちろんのこと、政治、戦争、社会、風俗など、さまざまな視点から読み解き、両者の関係を明らかにしていきます。

というもの。

ペリー艦隊からのお土産品・蒸気機関車の模型を描いた瓦版から始まり、日比野克彦によるポップ山陽電車ヘッドマークまで、質・量ともにどっしりした展覧会でした。
とりわけ印象的だったのは、150年前の鉄道開業式典を描いた錦絵でした。なんとも華やかで、当時の高揚ぶりが伝わってきます。
それにしても、蒸気機関車の模型がプレゼントされたのが1854年で、それから20年も経たずに本物の蒸気機関車が客車を曳いて新橋=横浜間を走り出すなんて、とんでもないスピード感です

他にも、ほわぁ~ となるファインアート(長谷川利行「赤い汽罐車庫」とか赤松麟作「夜汽車」とか、木村荘八「新宿駅」とか松本竣介「駅の裏」とか) があるかと思えば、大丸が販促品として作った「大阪電車 大丸呉服店 案内双六」(ふりだし:梅田停留所⇒あがり:大丸呉服店)とか、山下清が描いた我孫子駅駅弁掛け紙とか守備範囲が広い

ここで、おぉ と思った作品その1

うちで額絵を飾っている里見宗次のポスター「JAPAN」の現物
額絵を見慣れているせいで、デカい

ポスターといえば、やはり杉浦非水「東洋唯一の地下鉄道 上野浅草間開通」は忘れられないし、何度観てもイイ

昔懐かしい「ディスカバー・ジャパン」のポスターも展示されていたのですが、その説明書きに、

「ディスカバー・マイセルフ」「美しい日本と私」というコンセプトは、若い女性旅行者たちを筆頭に一定の共感を得て社会に浸透した。<中略> しかし一方で、都市生活者による地方搾取という非対称な構造を看過していると非難の声も上がる。

とあって、「いつの時代にも拗れた人がいるものだ」と思わず眉間に皺が寄ってしまいました
「都市生活者による地方搾取という非対称な構造を看過している」って何だよ…
このキャプションは、ChimPom (私、嫌い)「LEVEL 7 feat.『明日の神話』」と並んで、いやぁ~な気分にさせていただきました

気分を変えて、おぉ と思った作品その2。

児島善三郎「下板橋雪景」は、赤羽線(現:埼京線)沿線の石神井川と中山道に挟まれた辺りから北方向を描いた作品で、遠くを東北本線の列車が煙をたなびかせて上野方向へ走っています。
この辺りは、通勤何千回と通ったところで、土地鑑ありです。

Googleマップで見るとこんな感じ。

この作品が描かれたのは1921年で、当時は田畑が広がって、東北本線まで見渡せますが、現在では建物だらけで東北本線なんて見えっこありません

以上で、今年私が観た展覧会のTOP 3の発表を終わりにしまして、あすの「後編」では次点の展覧会を選出します。

つづき:2022/12/31 2022年の美術館・博物館めぐりの振り返り [後編]

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