三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

子どもの貧困 1

2011年05月26日 | 日記

一昨年の11月、新宿に行ったとき、雨の降る寒い日だったが、都庁の建物を結ぶ渡り廊下(?)の下にホームレスが大勢寝ていた。
インドでは、高級ホテルのすぐ横がスラムだったり、ホテル玄関の前で寝ている人もいるのを見て、へえと思ったのだが、日本だって変わりない。
そのころ、石原都知事がこんなことを言っていた。
「東京・日比谷の「年越し派遣村」などの求職者について「就職世話しても、これも嫌だ、あれも嫌だ、要するに生活保護受けた方が楽だという、そういう価値観。甘えているところがある」などと発言した。会議終了後、知事は記者団に「生活保護というのは、人生に対する姿勢としていかがなものかと思う」と述べた」
(2009年11月)

仕事はいくらでもある、と言う人がいる。
でも、仕事の内容が問題で、生活ぎりぎりの給料だったり、過労死するようなところや、いつクビになるかわからないところに就職したくないのは当たり前だ。
先日もこんなニュースがあった。
3月中旬、大阪の釜ケ崎で「宮城県女川町 10トンダンプカー運転手 日当1万2千円 30日間」という求人があり、60代の男性が応募したところ、福島原発敷地内で原子炉を冷やすための水を積んだ車の運転などをしたという。
男性は「5号機と6号機から数十メートル離れた敷地内で作業した。安全教育はなく、当初は線量計もなかった。(約2倍の)計60万円受け取った」と説明している。(朝日新聞5月9日
こうした状況を考慮せずに人を責めるより、石原都知事には新宿のインド化を何とかしてほしい。

去年のことだが、堤未果氏の講演「アメリカの現実と日本の子どもの未来」を聞き、すごく面白かった。
アメリカでは、大人10人に1人、子ども5人に1人が貧困層以下で、フードスタンプは4000万人以上がもらっている。
失業率は実質17%。
個人破産するのは1年間に141万人で、そのうち医療費で破産するのは90万人。
CTの検査料は100万円もかかり、医療保険に入っていても、保険会社が支払わないので、保健に入っている人でも医療破産する。
医者も医療訴訟が多いので、そのための保険に入っているし、過剰労働で自殺が多い。
そして、返さなくてもいい奨学金が減り、代わりに学資ローンが増えた。
90年代、クリントン政権で、学資ローンの自己破産は認められなり、大学は出たけれども、返済不可能な借金が残ったという人が少なくない。

なぜこうなったかというと、人間に投資しなくなったからで、その代わりに市場に投資する。
そうして、今まで市場にさらされていなかった教育、医療、子育て、福祉といった分野が市場化されている。
企業が参入すると、利益優先となる。
教育の現場では、外食産業が学校給食に参入することで、コストカットのために人件費がカットされる、給食にジャンクフードが増えた、自販機が多く設置されるetc。
あるいは、2002年にブッシュ政権で落ちこぼれゼロ法が作られたが、その中身は、教育予算を減らし、学力テストで成績の悪い学校の予算を削減するというものである。
アメリカは小さい政府という伝統があり、国が関与する部分を小さくする代わりコミュニティが支えていたが、それが崩壊して、福祉が自己責任となっている。
貧困層には低賃銀の仕事しかなく、軍隊に入る者が多いという貧困徴兵制という問題がある。
戦場に派遣された兵士の8割が戦争後遺症なのだが、軍を辞めても他の職業に就けないので、75%が軍隊に戻る。
女性兵士が増えているが、子育てする時間がない。

こうした事柄は対岸の火事ではないのに、日本の政治家はなぜかアメリカの真似をしようとするし、経済界はアメリカに見習おうとする。
日本でも福祉の民営化に伴い、貧困ビジネスが増えている。
金を出す余裕がある人はいいサービスを選んで受けることができるが、金がないと選択の幅が狭まる。
そういえば、アメリカは医療市場の開放を日本に求めているという新聞記事を先日、読んだが、そうなれば貧乏人は医療を受けられなくなるかもしれない。
自己責任、自立というといいイメージだが、障害者自立支援法のように実態は予算を削っての弱者切り捨てだから、結局はしわ寄せが子どもや高齢者、障害者などにくる。
そういった話だった。

しかし、アメリカがそういう状態なのにもかかわらず、中米から命がけでアメリカに密入国しようとする人たちを描いたのが、キャリー・ジョージ・フクナガ『闇の列車 光の旅』という映画である。
聞いた話だが、フィリピンから日本に来るからゆきさんの手取りは月4万円だという。
限りなく下があるわけである。

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2 コメント

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Unknown (通りすがり・・・)
2011-05-26 23:22:56
こんばんは。日本の先行きが、というか自分の将来を危ぶむ思いにふけれる円様の良い記事を読ませていただきました。私も後先考えず働くしかない身分です。日々充実していけて、社会的弱者のために働ける自分でありたいと思いました。
…米本氏のブログでも、最近「通りすがり」という方がコメントを出していますが、私とは違う人です。米本さんはよく分からないですが、どうしてブログで他者を貶めてばかりいるのでしょうか。たまに拝見すると、嫌な気持ちになります。失礼しました。
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人権を大切に ()
2011-05-27 14:11:10
貧困など家庭環境が悪いことは、子どもにとって不利です。
すべてを平等にすることは不可能ですが、少しでも不利をなくすような政策を国や地方自治体はとってもらいたいです。
統一協会問題ですが、反カルトの弁護士さんは単に金儲けでやっているとは思えません。
それは貧困問題に取り組む弁護士さんたちにも言えることです。
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