三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

『イソップ寓話集』

2007年08月05日 | 問題のある考え

本を読む時、何かに使えないかと思いながら読むことがあり、不純だと自分でも思う。
岩波文庫版の『イソップ寓話集』は話のタネに使えそうなものがたくさんある。

「守銭奴」
守銭奴が全財産を金に換え、金塊を買って、それを城壁の前に埋めると、しょっ中出かけて行っては検分していた。近くに住む職人が男の足繁く通うことに気づき、事の次第を推し量って、男が立ち去った後に金を盗みとった。
男は次にやって来ると、そこが空っぽになっているので、泣きわめき髪をむしった。身も世もあらず嘆いているのを人が見て、訳を知って言うには、
「お前さん、悲しむことはない。同じ場所に石を埋め、金だと思うことだ。有る時にも使わなかったんだから」
使わなければ持っていても意味がない、ということをこの話は説き明かしている。

金塊とは何か、いろんな話に使えそうである。
最後の教訓はしらける。
「使わなければ持っていても意味がない」というのではね。
『ナルニア国物語』の作者C・S・ルイスの『キリスト教の精髄』にある次の言葉のほうが気が利いている。

あなたが捨てなかったものは何にせよ、ほんとうにあなたのものとなることはできない。


ある人から「細木数子が、先祖供養をきちんとしないと何らかの因果が来ると言っている」と聞いた。
昔から細木数子のような人間がいることが、『イソップ寓話集』を読むとわかる。

「女魔法使」
魔法使の女が神様の怒りを解く呪文やお祓いを売り物にして、またそれがよく当たり、それで相当なお金をためこんでいた。ところが、人々はこの女を宗教の改革を企てる者だとして告発し、裁判を受けさせ、罪状を挙げて死刑判決を下した。女が裁判所から引き出されるのを見た者が言うには、
「おい、お前は神様の怒りを遠ざけると公言するくせに、どうして人間の説得ができなかったんだ」
大それたことを約束しながら、普通のことが出来ずに襤褸を出す詐欺女にこの話は適用できる。


人を脅して不安にさせ、金儲けする人に詐欺罪が適用できないのはおかしいと思うし、細木数子のたわごとを流しているテレビ局は許せんなと思う。

「占い師」
占い師が広場に陣取って、見料を稼いでいた。突然一人の男がやって来て、占い師の家の戸が破られ、中のものがみな持ち出されていた、と告げたので、大いに慌てて、跳び上がり嘆き声を発すると、事件を確かめるために駆けて行った。居合わせた一人がこれを見て言うには、
「やい、お前は他人のことはとうから分かると吹聴するくせに、自分のことは占ってみなかったのか」
自分の生活を満足に律せないくせに、赤の他人のことで気をまわす連中に、この話は適用できる。


イソップは宗教で金儲けする輩や占い師が嫌いなんだと思う。

「鍬をなくした農夫」
農夫が葡萄畑に溝を掘っているうちに鍬がなくなったので、一緒にいた作男の誰かが盗んだのではないかと、調べてみた。誰も取ったと言わないので、どうしてよいか分からず、誓約して言わせるため、全員を町へ連れて行くことにした。田舎に住む神々はぼんやりだが、城壁の中の神々は誤ることなく、すべてお見通しだ、と言われていたからである。
城門をくぐり、小物袋は横に置いて、泉で足を洗っていると、町の触れ役が大声で、神殿から盗まれたもののありかを教えたら、賞金千ドラクメ出すぞ、と叫んでいる。農夫はこれを聞いて言うには、
「やって来たのも無駄だったわい。自分のものを盗み出した犯人が分からず、知っている者はないかと賞金を出して探すような神様に、どうしてよその家の泥棒が分かるもんか」


最後にもう一つご紹介。

「神像売り」
ある男が木彫りのヘルメス像をこしらえて、市場へ売りに行った。さっぱり買い手がつかないので、人寄せをしようと、商売繁盛の福の神はいらんかね、と大声を張りあげた。すると、その場に居あわせた男が、
「おい、そんなにありがたいものをどうして売るのだ。自分でそのご利益にあずかればいいのに」と野次るので、答えて言うには、
「俺には手っとり早いご利益が必要なのに、この神様はゆっくりとしか儲けを授けて下さらないからさ」
恥ずべき儲けを追い、神々をも顧みない男にこの話はぴったりだ。
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