多くの日本人が、犯罪が増加し、治安が悪化していることに不安を感じている。
ところが、河合幹雄『安全神話崩壊のパラドックス』(2004年の発行で、統計は2002年まで)によると、犯罪実数は本当は増加していないし、治安の急激な悪化も起きていない。
最近5年での認知件数の急増は、統計の取り方の変化などが原因で、実数の急増ではない。
各種統計を見ると、昭和30年代が主要7罪種(殺人、強盗、強姦、傷害、暴行、脅迫、恐喝)の事件発生率のピークで、その後次第に減少して90年から95年ごろが最低、97年からは微増に転じている。
犯罪による死亡者数は90年代半ばまで減少し続けており、ここ数年は横ばい。
殺人は年間1300件以上だが、殺人の統計には、殺人予備罪と殺人未遂罪が含まれており、殺人によって殺された被害者の数を調べると、最近は600人台。
この600件余りの内、最大のカテゴリーは心中である。
「無垢な被害者を人殺しが襲う事件はせいぜい100,200のオーダーであるように思われる」と河合幹雄は言っている。
加害者が家族なのが4割、顔見知りによる犯行が8割である。
日本社会は安全でなくなってきているという認識は、全くの誤りであり、日本社会は安全にうるさくなってきていると言うべきである。
どうして体感治安が悪化しているのだろうか。
内閣府のアンケート
不安になる理由(複数回答)は、「テレビや新聞で子供が巻き込まれる事件が取り上げられる」が85・9%と最多で、「地域のつながりが弱い」が33・2%、「子供が習い事で帰宅が遅い」が31・1%。
つまりは、マスコミはいたずらに不安感を煽り立ててているわけだ。
犯罪が増えているわけでもないし、治安が悪くなっているわけでもないのに、どうして「日本は犯罪の少ない安全な社会であるという安全神話」が揺らいでいるのだろうか。
河合幹雄は「安全神話の崩壊が、犯罪増加と無関係に起きたということである」と指摘する。
戦後、人々の規範意識が低下したために凶悪犯罪が増加したなどという言説は、まったく根拠を欠く。
そして、安全神話の第一の特徴は、犯罪を別世界の出来事と思っている人々のみが抱いているということである。
したがって、安全神話の崩壊とは、犯罪は別世界の出来事と思っていたのが、もはや別世界の出来事ではなくなったということにほかならない。
つまり、かつては犯罪の世界と日常生活の場とは切り離されており、はっきりとした境界があった。
たとえて言うと、夜の繁華街と昼の住宅街という境界である。
安全神話の崩壊とは、この境界の崩壊にほかならない。
もちろん、昔は境界があったから犯罪が少なく、治安がよかったというわけではない。
安心感と犯罪は別である。
たしかに私の子供のころなど、子供が行ってはいけない場所があり、夜は外に出ないのが当たり前だった。
ところが今は、小学生でも夜遅くまで塾へ行ってるし、住宅街のレンタルビデオ屋でもアンパンマンのビデオと一緒にアダルトビデオを借りることができる。
境界がなくなってしまっている。
さらに河合幹雄はこのように書く。
日本の刑罰は軽いかどうかはともかく、一般的な日本人が厳罰を求めるのだから、ネットで厳罰化の声が大きいのもうなずける。
もう一つ、なるほどと思ったこと。
犯罪=穢れ=非日常なのだ。
犯罪が穢れということは、在日、被差別といった差別ともつながってくる。
差別は排除であり、排除することで安心する。
犯罪を身近に感じないため防犯意識が薄いということは、十分に護られているから安全だということではなく、危険がない、つまり、自分の周りには「犯罪者=悪人」はいないと感じていることを意味すると、河合幹雄は指摘し、ハンセン病患者を例に出す。
ハンセン病患者に対する隔離、安心感、そして無関心という問題も、穢れ=非日常ゆえなのかと納得した。
土本氏は、6月20日のザ・ワイドで、「確定までどれ位かかるか」という司会の質問に対し「半年から1年」というコメントをしていましたが、
この発言には耳を疑いました。
最高裁で無期が破棄され、高裁に差し戻されたのは過去に2名(永山則夫と西山省三)いますが、永山則夫は差戻から確定まで約7年かかっていますし、西山省三は、1999年12月に差戻判決を受け、現在もまだ裁判中(最高裁係属中)です。
また、裁判が迅速化しているのは「公判前整理手続」や「期日間整理手続」が適用できる1審だけであり、2審は迅速化しておりませんし、
最高裁ももちろん迅速化しておりません。そして、最高裁では死刑事件は通常3年ほど寝かされますから、土本氏の「半年から1年」という予測は何の根拠もない極めて稚拙な意見と言わざるをえません。普通に考えれば、4年半~8年はかかります。
刑事法の専門家であり、最高検検事にいたような人が、なぜこんな恥ずかしいことを堂々と言うのか私は不思議でなりません。(わかっていながら、意図的に言っているのでしょうか。)
また、4月19日のみのもんたの朝ズバでは、「弁論が開かれてますから最高裁で無期懲役が破棄されることは間違いない」とコメントしておりましたが、たしかに、死刑求刑事件以外の事件では、弁論が開かれれば、原審判決が破棄されるといってよいかもしれませんが、死刑求刑事件だけを見てみると、決してそうではありません。
死刑求刑事件の検事上告審で弁論が開かれた過去全3件のうち、国立主婦殺害事件では弁論が開かれたにもかかわらず上告棄却にな
っていますから、弁論が開かれたことだけをもって」破棄は間違いないと言うことはできないのです。
最高裁が「安田弁護士の意見も聞かず弁論の延期申請を却下したこと」「出頭在廷命令を出したこと」を踏まえて、「最高裁は破棄差戻の心証を固めている。破棄差戻は間違いないだろう」と言うならともかく、弁論が開かれたことだけをもって言うのは、素人そのものです。
永山則夫・・・破棄差戻1983/7/8、高裁1987/3/18、 最高裁 1990/4/17
西山省三 破棄差戻1999/12/10 、高裁2004/4/23、 現在最高裁係属中
警察の捜査ミスによる複数殺人から死刑になった例もあるようですし、不公正な厳罰化でなはやめたほうがいいと思います。
光市の事件の場合、通常とは違って、裁判が始まれば結審まではかなり早いような気がします。
加害少年は見せしめというか、厳罰化の生け贄というか、そういう感じになっていますね。
>みいさん
>山口の事件が起きた7年前にはたしかに少年犯罪は凶悪化して(西鉄バスジャック、酒鬼薔薇など)いましたが、
1999年には話題になった事件が多かったのはたしかですが、他の年と比べて特に凶悪な事件が多かったのかどうかは、きちんと検討して判断すべきと思います。
なお、酒鬼薔薇事件は1997年、西鉄バスジャック事件は2000年です。
それぞれ、14歳は怖いとか、17歳は何するかわからないと、マスコミはレッテルを貼ったもんですね。
>最近は凶悪化というより簡単に人や自分の命を絶ち、お金に関しても簡単に手に入れようとする事件が多いと思います。
この点についても、みいさんの印象でしょう。
犯罪が急増している、犯罪の低年齢化、子供が危ない、というのも印象でして、事実ではありません。
http://homepage3.nifty.com/civilsocietyforum/page213.html
http://homepage3.nifty.com/civilsocietyforum/index.html
>社民党や共産党とツーカーなのか?
…そのひとたちがどういう人なのか知りませんが、ぜんぜんちがいます。ふつうの一般人です。
円さん
…印象ではなくて、実際いろいろ調べたことや、自分のこどもや、周りをとりまく環境や、こどもたちの性質がかなり世代間で格差のあることなどを実際に感じているからです。
携帯サイトでの犯罪やバーチャル社会のために起きた犯罪は増えています。
西鉄バスジャックの少年は2チャンネルの掲示板に投稿しているうちにそういう気分になったなど書いてあるページもあります。
ゆとり教育のひずみも大いに感じていますし。
円さんの書いてあることを読むと、同じ意見と思うんですが…。
ゆとり教育で家族の触れ合う時間が増えたかというとそうではなく、土日休みの家庭ばかりではなかったり、
レベルを下げた授業を補うために、塾や習い事で友達中心(それは自由なおとなのいない世界です)の子どもたちが、社会や友達の影響、TVの影響を受けやすくなっています。
個人の意思をたいせつに考える社会は、子どもたちに早計な判断をさせていると思っています。
ただ、「携帯サイトでの犯罪やバーチャル社会のために起きた犯罪は増えています」などと、あっさり言い切ってしまっていいだろうか、と感じます。
と言いますのも、多くの人は犯罪が増えている、凶悪化している、少年犯罪が低年齢化している、治安が悪化している、などと感じています。
しかし、実際は犯罪は増えていないし、凶悪化していないし、治安は悪化していない、ということをブログで紹介しました。
あるいは、ゲーム脳という理論がありますね。
あれはまるっきりのデタラメですが、ゲームをやるとキレやすくなると言われると、そうかもしれないと思いますよね。
というか、子供がゲームばかりをしている親にはまことに都合のいい説です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0%E8%84%B3
自分が感じていることが正しいかどうか、それをきちんと確かめないと、外国人(と言いつつ、じつはアジア人ですが)の犯罪が増えている、アジア人が近所に住んでいると怖い、と言う人と同じことになってしまうのではないでしょうか。
山口県光市母子殺害事件の犯人F君が死刑になっても。
いくら反省してようとあんなののさばらしたらいかんわ。
それに死刑なんてよほど非人道的なことやらない限り死刑になるのも難しい。
さて、最高裁から差戻し審の判決出るまで4年半から8年かかるなんて言ってる方もいますが、それは個々のケースにより様々であるから、早い場合もあり、またそれ以上に10年かかるものもあるから一概には言えない。
なお、永山則夫のケースだと、再審請求やら不服申\し立てやら弁護士の交替やらいろいろやったらしいから、長くなって当然。あと、再審の棄却判決や不受理の決定出すのに時間がかかる。
土本氏が言っているのは安田どもがそれらのミエミエの引き伸ばし工作をやらずに高裁審理や判決に至った場合のことを言ってるだろうし、事件自体事実誤認などが争われているケースではないから(当然彼らは引き伸ばし工作仕掛けてくるだろうけど)、あながちあなた達が全面否定する程間違ったことは言っていない。
ちなみに私個人の意見を言えば、本村さんのために、そういったくだらない引き伸ばし工作を即不受理にしたり、即刻棄却するよう検察官や裁判官に対して祈ってやまない。
安田みたいな人権をはき違えてる弁護士やその眷属たるあなた達がそういうことをするから、日本の裁判は長い、と内外から批判されるのだ。
弁護士の交替はともかく、再審は刑が確定してからじゃないとできないんですけど。
永山が再審の申し立てをしたのも当然死刑判決が確定してからです。
再審は執行を延ばすための手段にはなりえても確定を延ばす手段にはなりえません。
基本的な知識をつけてから書きましょうよ。
それに、西山省三は特に引き延ばし工作のようなことをしていないのに7年かかってるんですけど。
また、最高裁で無期が破棄され高裁に差し戻された事件や、情状面で慎重な審理を尽くす必要がある事件では、情状鑑定というものが行なわれ、これだけでも「鑑定人質問+鑑定+鑑定人の証人尋問」で6ヶ月近くかかります。
光市事件でもこの情状鑑定が形式的にでも行なわれるでしょうから、どれだけ早くても確定まで2年半強はかかります。これ以上早く判決が出ることはまずありえません。
まあ素人にはわからないでしょうけどね。
西山事件(無期懲役の仮出獄者による単純な強盗殺人事件)の差戻審(高裁)の判決文です。
情状鑑定についても触れられています。
ちなみに、情状鑑定というのは精神鑑定とは全く別のもので、責任能力には問題はないけれど、情状面について慎重な審理を行なう必要があるといった場合に行なわれます。
(まあ形式的なもので裁判所が死刑判決を出すための重要な資料に過ぎず、その結果で判決が軽くなったりすることはないのですが。)
なお、この情状鑑定は西山事件のほかに高裁で死刑判決が出た長良川リンチ殺人事件や9月に死刑判決が出ると言われている小林薫の事件でも行なわれています。
また、裁判官が判決を書くのには少なくとも1ヶ月かかりますし、高裁で死刑判決が出て被告側が上告する場合、最高裁は法律審ですから、弁護人が「上告趣意書」を作成する時間、検察がその「棄却相当」とする意見書を作成するための時間として、少なくとも5ヶ月が与えられますが、どうやったら半年~1年で判決が確定するのでしょうか?説明してもらえますか?
はったりに騙されてはいけませんね。
お坊さんのくせに卑怯だと思いません?
今更裁判がひっくり返って無罪判決出るわけでもないのにね。
貴方達はマスコミやみのもんた、土本氏の言葉の挙げ足取りをして喜んでいるようだけど、私には貴方達が人権派弁護士の世論操作に踊らされてるようにしか見えないのだが…
貴方達は小野悦男事件裁判の様な裁判をまたやりたいのか?
専門家の意見になるほどと思っただけのことです。
>やくざ坊主さん
・治安は悪くなっていない
・重罰化は効果ない
・マスコミや土本たちはいたずらに不安を煽っている
このことを紹介しただけです。