三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

神渡良平『中村天風人間学』(2)

2015年06月19日 | 問題のある考え

神渡良平『中村天風人間学』を下さった方は、この本が大変いいものだから、ぜひ読んでほしいということなのでしょう。
しかし私は、精神主義・スピリチュアル・ポジティブシンキング・自己啓発といった類いのものが好きになれませんし、危険な面もあると思っています。

いくら正しい言葉、いい言葉を使い、物事を肯定的に受けとめ、プラス思考で明るく生きていても、人生、山あり谷ありです。
そもそも人は老病死を避けることはできません。

神渡良平氏は、夫婦そろって中村天風の信奉者だけど、奥さんが49歳で乳ガンになり、56歳で亡くなった人を紹介しています。
神渡良平氏のフェイスブックにメッセージを送った、ロサンゼルスに住む日本人女性はスピリチュアル・マスターのセミナーに参加するような方ですが、夫は膵臓ガンで20年ぐらい前に亡くなっています。
こうした人たちは、中村天風の

宇宙霊の生命は無限である。不健康なるものは、宇宙霊の生命の中には絶対存在しない。
その尊い生命の流れを受けている私は、同じように安全で、人生の一切に対して絶対強くあるべきだ。

という言葉をどう感じているのでしょうか。

新興宗教の中には、病気などの不幸は邪教を信じているからだと責めるものがあります。
ポジティブシンキング、プラス思考を肯定することは、この方たちのように若くしてガンになり、そして死んでしまった人を非難しています。

もっとも、なぜ不幸になるのか、その言いわけはちゃんと用意されています。
ロサンゼルスの女性からのメッセージにこんな文章があります。

末期がんであるにもかかわらず、瞑想によって次々と過去世のカルマを解消していき、痛みまでも克服し、愛と光に包まれて、至福の中で笑みを浮かべ、歓喜の表情で高次の世界に戻っていったのです。主人は口癖のように言っていました。
『肉体は滅びても、魂は不滅で、存続するんだよ。死も生も本当はないんだよ。闘病生活はカルマの解消のまためにあるんだ。ぼくは早くカルマを解消し、新しい肉体に着替えて地上に戻り、人々を救済するために働きたい』

ガンや死別の悲嘆という苦によって、今まで作ってきたカルマが解消し、次はよりよい境遇に生まれ変わることができるということです。

カルマとは業(行為)という意味です。

ところが、カルマといえば、悪業、そして悪業の報いと説かれがちです。
カルマ(行為)には善い行為があれば悪い行為もあるし、どちらでもない行為もありますが、そもそも善い行為と悪い行為とをきちんと分けることはできません。
たとえば、戦争で人を殺すことは善いか悪いか、人によって意見が異なるでしょう。

あるいは、サイババの弟子サイマーに師事する気功師は、青山圭秀『理性のゆらぎ』『アガスティアの葉』を読んで、サイババに会いにインドに行きます。

みんなを祝福するサイババの柔和な目を見た瞬間、涙がこぼれた。またあるときはサイババが立ち止まって手をかざして祝福してくださった途端、雑念が消え、風にそよぐ木もあたりの景色もそのままで美しく感じられ、心の底から喜びが湧きあがってきた。

この気功師は、日常生活の目標を霊性の満足に置いていたら、ストレスが溜まったり、病気になることはあり得ないと断言しています。
このご夫婦や気功師はオウム真理教に入信しても不思議ではないなと思いました。
というのも、オウム真理教の教義の中心はカルマの法則であり、教祖である麻原彰晃が神格化されているからです。

これらは問題点の一部で、他にもすべてを自分の心の持ちように還元してしまい、現実社会や自分自身のマイナス面に目をつむってしまったり、神秘体験の絶対化とかの問題もあります。
もっとも、そうした問題点は既成宗教にも当てはまることで、他人事ではないのですが。

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