ポール・シュレイダーの作品を最初に見たのは『ローリング・サンダー』。
ベトナムで8年間捕虜になっていた軍人が故郷のテキサスに帰る。
妻と息子を殺した強盗のアジトに、ベトナムでの部下と殴り込む。
『タクシードライバー』と同じく脚本だけです。
ポール・シュレイダーは東映ヤクザ映画のファンだそうで、真似をしていると小林信彦が批判的に書いていました。
次に見た『ハードコアの夜』は監督作品。
ミシガン州に住むオランダ系カルヴィン派の信者(ジョージ・C・スコット!)が失踪した一人娘の行方を捜すという話。
娘がポルノ映画に出ていることを知り、サンフランシスコでポルノ女優と一緒に娘を捜す。
これまた最後は殴り込みをかけて娘を取り戻します。
ハッピーエンドのようですが、父親は娘と家路につき、ほっとかれたポルノ女優は父親の後ろ姿を冷たい目で見るショットで終わります。
仲間以外の人間なんか知ったことではないという態度がはっきり表されたラストシーンでした。
ポール・シュレイダーもミシガン州の生まれで、カルヴィン派の家庭で育っています。
カルヴィンの教えでは、天国に行くか地獄に落ちるかは最初から決まってて、本人がいかに信仰しようが、いかに努力して善行を積もうが、救いとはまったく関係ありません。
『魂のゆくえ』の主人公トラー牧師は、妻が反対するのにもかかわらず、息子に自分や父と同じ従軍牧師になれと命じますが、息子は半年後にイラクで戦死。
アルコール依存症になり、妻とは離婚。
今はメガチャーチが経営する「観光客相手」の、ミサには10人ぐらいしか来ない教会の司祭をしています。
オランダ系移民が建てた教会で、ファースト・リフォームド教会という名前です。
ウィキペディアによると、改革派教会 (Reformed churches)は、ツヴィングリを指導者としてスイスのチューリヒに始まり、カルヴィンの神学と、それに基づく段階的な会議制を特徴とした教会組織で、「カルヴァン派」という通り名が用いられることがあるとあります。
メガチャーチや教会に多額の寄付をする金持ちが出てきます。
公害垂れ流し企業の社長をしており、人間の力より神の力がまさっているから、いろんな問題が生じても、最終的には神が人間のためになるようしてくれるといったことを話します。
聖書を自分の正当化に利用しているわけです。
メガチャーチの牧師はそれに対して何も言いません。
映画の最初に、環境問題に関わる夫を心配した妻がトラー牧師に相談します。
夫は公害企業の爆破を考えていたらしい。
環境テロです。
ベネディクト・エルリングソン『立ち上がる女』でも、環境を守るために一人でテロをする女が出てきます。
動機が正しければ何をしてもかまわないのか。
映画の最後でトラー牧師は何をしようとしたのかはっきりしません。
トラー牧師が影響を受けたというトマス・マートンはカトリックの神父で、黒人の人権運動、平和運動に関わった人。
たぶんここらがヒントかなと。
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