三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

高橋昌一郎『反オカルト論』

2018年04月04日 | 問題のある考え

高橋昌一郎『反オカルト論』は「教授」と「助手」との会話で話がすすみ、読みやすくて面白く、ためになる本です。

・フォックス姉妹とスピリチュアリズム(心霊主義)
死者の霊と交流できるという霊媒師のトリックに一流の科学者やコナン・ドイルたち文化人がだまされた。
それに対して、霊媒のインチキを暴くフーディーニ。

あらゆる手段を尽くして観客を騙すことが、手品の目的なのである。

しかし、霊媒を信じ、擁護する人が多くいた。

科学者は、平気で信頼関係を覆してインチキをする人がいるとは考えない。
詐欺師である霊媒は、まさかそんなことはしないだろうということをする。
科学者、はいったん騙されると一般人以上に信じこんでしまう。

2000年に発覚した旧石器発掘捏造事件もその一例。
「神の手を持つ男」と呼ばれていた人物が、前もって発掘現場に石器を埋めておいて、それをあたかも発見したかのように捏造することを20年以上にわたってしていた。
そして、その捏造石器を資料として論文を書いた考古学者が大勢いた。

人は、苦悩が深ければ深いほど、その苦悩から解放してくれる話に、安易に飛びつきやすくなってしまう。


奇術師のジェームズ・ランディがユリ・ゲラーのトリックを暴いても、ユリ・ゲラーの超能力を支持し、物理学の基本法則を見直すべきだと考える科学者が今もいる。
その時代の一流知識人をトリックで騙すのは容易だということである。

・STAP事件
フーディー二が書いたとされる『狡猾な若い女性はいかにしてバカな「科学者たち」を騙したか』という冊子は、ある女霊媒師のトリックを暴露した。
その人間模様はSTAP細胞と小保方晴子氏を連想させる。

どんなに再現に失敗しても「STAP細胞は存在しない」とは言い切れない。いくら交霊会のトリックを暴いても「霊は存在しない」とは証明できないのと同じ論法だ。

その論法で人を騙すのが霊媒師だが、科学者も同じことをする。

常温核融合のマヤカシが明らかになり、ある物理学者は「安易に実験結果を信じる軽率な科学者、組織の名誉を汚す理事、税金を浪費する政治家、大衆を煽る浅薄なジャーナリスト、彼ら全員が、オカルトを生み出してしまったんだ」と嘆いていたという。

STAP事件は現代社会における「オカルト事件」なのかもしれない。


小保方晴子氏は、文章や画像を他者の論文やサイトから無断でコピペし、実験データの写真を切り貼りし、実験そのものを捏造した。
理研は、最終的に小保方晴子氏による捏造・改竄・盗用などの研究不正を認定した。
小保方晴子氏の博士論文は約100ページ中の20ページがコピペ、参考文献もコピペで、26カ所の研究不正が認定され、博士学位を剥奪した。

朝永振一郎『物理学とは何だろうか』にこのようにあります。

科学というものは、いつの時代においても、その前の時代のそれを踏まえて進められ積み重ねられてだんだんにできてきたものです。

STAP細胞はそうではなかったということです。

2014年度の理研の総予算が約834億円、2013年度の笹井氏の研究費は約5億8千万円。
STAP事件で株価操作やファイナンスで大儲けをした人がいる。
理研がSTAP事件の対応のために使った経費は8360万円。
2年間に小保方晴子氏に支給した研究費は給与以外に4600万円で、その大部分は税金だった。
しかし理研は、小保方晴子氏が理研を退職後に懲戒解雇相当にし、疑問をうやむやのまま、責任を取る者はいなかった。

なのに、いまだに小保方晴子氏を擁護する意見が少なくないどころか、小保方晴子氏は陥れられたといった陰謀説が唱えられている。
小保方晴子氏も『あの日』で、自分は陰謀の犠牲者だと自己正当化しているそうです。

私がES細胞を混入されたというストーリーに収束するように仕組まれているように感じた。実際に、これら一連の発表は、私の上司にあたる人たちによって、周到に準備され、張り巡らされた伏線によって仕掛けられた罠だったとも受け取れた。

その陰謀の黒幕が若山照彦氏だと、小保方晴子氏は告発しています。

『あの日』の売り上げは発売1か月以内で26万部を超えたそうです。
印税が1割と仮定した場合、1冊1400円(税別)×1割×26万部で、およそ3640万円の収入です。

アマゾンのレビュー858、平均4.2です。(2018年4月4日)
星5つ 60%
星4つ 11%
星3つ 9%
星2つ 3%
星1つ 17%

ところが、須田桃子『捏造の科学者』はレビュー195で、平均3.2。
星5つ 30%
星4つ 23%
星3つ 14%
星2つ 6%
星1つ 27%

星1つのレビューにこんなのがあります。
「何の知識もない、ただ成功していた小保方に嫉妬して狂った正義ヅラした悪人が書いた書籍。」
小保方晴子氏が犠牲者だと信じ、味方になっている人がいかに多いかです。

なぜか。

一般に、虚偽や幻想を真実であるかのように語る行為は、「詐欺」か「病気」の範疇に分類されるはずなんだがね。カルト宗教の教祖や、自己啓発セミナーの主宰者は、まさに「魅力的」で「ピシッとよどみない文」で断定する人物が多いんだよ。

妖精を信じるコナン・ドイルみたいだと、「助手」は言います。

なぜ人は荒唐無稽な話を信じてしまうのでしょうか。

人は、何でも妄信するように生まれついていると考える方がわかりやすい。

 

結局、人間は、見たいものを見て、信じたいものを信じるということだよ。


森友問題の文書改竄、イラク派遣部隊の日報隠蔽を大したことではないと言い切る人がいますが、通じるように思います。

コメント
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