『墓と葬式の見積もりをとってみた』(2015年)は、題名通りに神舘和典氏が墓や葬儀はいくらかかるかを実際に取材した本。
1 一般の墓地
都立青山霊園の敷地使用料は1㎡あたり271万4千円、管理料は610円で計算されている。
2014年度の募集では、もっとも面積の小さい1.55㎡の墓地は、420万6700円。
谷中霊園では、1.6㎡の使用料が268万8000円。
多磨霊園は、1.75㎡の使用料が153万8250円。
2 樹木葬
千葉県にある樹木葬霊園は、最初の1人が70万円、2人目からは40万円。
ペットも可で、納骨代はお気持ち。
管理費は年に5千円。
墓苑使用のほか、プレート代、名前の刻印、納骨代、戒名代、掃除代が含まれる。
最後の1人の納骨から33年後には、遺骨はみんな一緒の合祀墓に移される。
最初から合祀タイプを選ぶ場合は、1人につき50万円。
一緒に見学をした女性は、墓があるが、父親の骨壺に水がたまって骨が水浸しになっていた。
「私、なんて親不孝をしていたんだろうと、とても悲しい気持ちになりました」
そこで、土に還る樹木葬を検討しているというわけですが、どうして骨壺に水が入っていたら親不孝なのかわかりません。
品川区の樹木葬霊園では、13年間は鼻の下の土に眠り、その後10年は骨壺で安置され、合祀墓に移される。
家族タイプは4人分190万円から、夫婦タイプは2人分140万円から。
管理費はそれぞれ年間1万5千円と1万円。
都立霊園でも樹木葬の墓地が造られており、価格は安い。
樹木墓地は、木の周囲に一体ずつ遺骨を埋葬する。
樹林墓地は、共同埋葬のスタイル。
3 散骨
海洋散骨には3つのスタイルがある。
①委託型
散骨を行う会社に委託する。
5万円前後。
②合同型
複数の家族が同乗して散骨を行う。
10万~15万円くらい。
③プライベート型
一つの家族が船を借りて散骨を行う。
20万~30万円。
ハワイやグアムで散骨するのは、30万~40万円。
散骨を希望する理由
「自然に還りたい」
「墓参りをしなくてもいい」
「低コストである」
4 納骨堂
納骨堂は、主に4タイプある。
①機械タイプ
自動車の立体駐車場というイメージ。
②仏壇タイプ
二段に分かれていて、上段に位牌、下段に遺骨を納める。
③ロッカータイプ
銀行の貸金庫のように、遺骨がロッカーに納められている。
④墓石タイプ
墓地を室内に作ったスタイルで、室内墓地ともいわれる。
新宿にある立体駐車場のような機械タイプの納骨堂では、一基90万円、管理費は年間1万5000円。
都営霊園にも納骨堂がある。
建物内にカロートというスペースがあり、一か所に3人まで納めることができ、納骨してから20年間経ったら、合祀墓に移される。
青山霊園が60万1000円、谷中霊園が47万2000円で、管理料はない。
島田裕巳『0葬』に、2010年の調査によると、墓がある人は62.7%、ない人は35.6%で、2003年には、墓がある人73.2%で、ない人23.9%だったから、7年で墓がない人が10%も増えている、とあります。
樹木葬、散骨、納骨堂と、いろんなタイプの埋葬が生まれたのは、少子化と、人口の都市集中によって、墓地を代々継承するシステムが崩れ始めたからだと、神舘和典氏は説明します。
新宿の納骨堂には神舘和典氏の知人(40代の女性)の母親のお骨が入っている。
母親が他界して、父親が自分と妻の分を購入したが、墓参りに訪れても、そこに母親の遺骨があるとは感じないという。
ただ、矛盾するようですが、自分が入るお墓だったら、私自身は納骨堂を選ぶかもしれません。父がそう考えたように、自分の子どもに負担をかけたくないからです。母は、生前、子どもたちにお墓参りの負担すらかけたくなかったらしく、私の骨は海に撒いてもらいたいわ、と話していました。
負担とは何かというと、金と時間と労力でしょう。
この神舘和典氏の言葉、すごく深いと思いました。