三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

佐藤大介「米国・死刑取材の現場からの報告」

2016年09月29日 | 死刑

佐藤大介「米国・死刑取材の現場からの報告」(「フォーラム90」vol.149)は、アメリカの死刑事情についての講演録です。

佐藤大介氏は共同通信の記者です。
テキサス州で死刑囚にインタビューしています。

テキサスの司法当局のHPには、死刑の情報が一定程度公開されている。

収容されている死刑囚の氏名など写真入りの細かい個別情報、死刑執行のこれからの予定、執行前の最期の言葉、執行に立ち会った人のリストなど。

HPから死刑囚のインタビューを申し込むと、すぐに返事が来た。
死刑囚の中から3人を選んで送ると、死刑囚本人がOKだから、何時に来てくれと、話が決まる。

佐藤大介氏がメディアの人間かどうかの確認はしない。
死刑執行当日のスケジュール、普段の生活も教えてくれる。
自分たちは公務員として仕事をしているから、公開するのは当たり前だという姿勢。
死刑囚と面会するに際して、ICレコーダーとカメラは持って入ってもいいし、撮影用のライトをセットすることもできる。

400人近い死刑囚の執行に立ち会ったマイケル・グラチェクという記者にも話を聞いています。

マイケル・グラチェク記者はたぶん死刑には賛成だということですが、「政府のやっていることを監視するのが我々の仕事なんだから、これは立ち会わなきゃいけないんですよ」と言っている。

日本では死刑囚や執行について基本的に情報公開はないということを話すと、「例えば、その死刑囚が本当に死んだって誰が証明できるの」と言われる。
日本では絞首刑だが、首が切れたり、のたうちまわるとかいったことはないという法務省の説明を、どうして鵜呑みにするのかと聞かれて、佐藤大介氏は返事ができない。
当局が発表したことを、どうしてそんなに無批判に受け入れるのか、どうしてジャーナリストは疑問をはさまないのか、佐藤大介氏は自省します。

カリフォルニアで死刑廃止運動をしている人にもインタビューしています。
彼らは、有権者に問いかけるべき課題というのは具体的でなくてはいけない、感情的ではなく合理的に説明していく必要がある。と強調する。
たとえば、仮釈放なしの終身刑を導入することで、カリフォルニアでは年に1億5千万ドルの費用を節約できるというデータを示す。
そして、そのお金で、被害者への支援をする、あるいは犯罪を生み出さないよう、貧困問題や格差の問題、教育の機会などにお金を使うべきではないかと主張する。

日本の死刑の問題点
・死刑囚の実態が見えない
佐藤大介氏がテキサス州で会った死刑囚は、いろんな人と会ったり、文通をすることで死刑の恐怖から耐えることができている、全く面会者がいない死刑囚は頭がおかしくなっていると言っています。
・執行基準が明らかではない
なぜその死刑囚が選ばれたのかがわからない。

死刑廃止とは法律を変えることだと佐藤大介氏は言っていて、そうかと思いました。
法律を作り、国会の法務委員会で法案が了承され、国会で可決されないと死刑廃止はできない。
そのためには国会議員への働きかけが必要だが、それがなされていない。
なるほど、そのとおりです。

コメント (3)
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