三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

伊勢崎賢治『本当の戦争の話をしよう』(1)

2016年09月09日 | 戦争

伊勢崎賢治『本当の戦争の話をしよう 世界の「対立」を仕切る』は、伊勢崎賢治氏が福島高校の2年生に5日間、話をしたものをまとめた本です。
戦争をなくすこと、止めることはほんと難しいと思いました。
ほお~と思ったことはたくさんありますが、テロについて。

1975年、インドネシアは、「共産主義者に侵略された東ティモールの人民から支援を要請された」と口実をでっちあげ、東ティモールに軍事侵攻し、1976年、併合した。

独立派は反撃し、ゲリラ戦が始まる。
国連総会ではインドネシアによる軍事侵略と占領を非難する決議がなされたが、アメリカ、ヨーロッパ諸国、オーストラリアなど西側陣営はインドネシアを支持した。
24年間の占領で、約24万人の東ティモール人が殺され、世界の人権団体は、住民に対するテロ行為だとしてインドネシア政府を非難した。
しかし、インドネシア政府の側から見れば、独立派ゲリラこそがテロリストになる。

1999年、インドネシアへの併合か、完全独立かの住民投票が実施され、8割の有権者が完全独立を支持した。
インドネシア併合派民兵は破壊と殺戮を行なったため、多国籍軍が併合派民兵を鎮圧した。

東ティモール独立前の2000年から2001年にかけて、伊勢崎賢治氏は西ティモールとの国境地域にあるコバリマの県知事に任命される。
ある日、ニュージーランド軍の小部隊が国境付近をパトロール中、併合派民兵グループの待ち伏せ攻撃を受け、1人のニュージーランド軍兵士が殺された。
いきりたったニュージーランド軍と伊勢崎賢治氏は10名ぐらいの併合派民兵を全員射殺した。

この僕自身の経験から、明確に言えることがあります。「テロリスト」の人権は、考慮されないということです。別の言葉で言うと、人間を、その人権を考えずに殺すには、「テロリスト」と呼べばいいのです。


無人爆撃機による空爆で、多くの民間人が巻き添えになりますが、一説によると、テロリスト1人殺すのに、50~60人の何の罪もない民間人が犠牲になるといわれているそうです。
民間人にとって、空爆はテロそのものだと思います。

「Sein」vol.4に古市憲寿氏のこんな話が載っています。
今日語られる戦争のイメージは、現在世界中で起こっている戦争ではなく、太平洋戦争などの国と国との総力戦だと思われている。
しかし、21世紀は戦争で命を落としている人の数は少ないし、戦争の起こる数も減っている。
つまり、戦争のあり方が変わってきている。
実際に世界で起こっている戦争は、内戦や局地的なテロ行為が主流になっている。
安保法制で、政府は国を守るためだと言っているが、本当の意味で国を守ることになっているか。
4月に首相官邸にドローンが落ちたが、10日間以上、誰も気づかなかった。
これからの危機は、どこかの国が大挙して攻めてくるような危機ではなく、爆弾を仕掛けたドローンを東京ドームとかに落とすテロだとか、そういうものだと思う。

なるほどと思いました。
核軍備の縮小・撤廃に向けた国連作業部会で、国連総会に対し核兵器禁止条約の2017年の交渉開始を求めた報告の採択に日本は棄権しました。
アメリカの核の傘が日本を守ってくれているからということでしょう。
でも、そんな時代ではないわけです。

自分の国を自分で守らない日本は世界からバカにされているという人がいます。
しかし伊勢崎賢治氏によると、日本のイメージは決して悪いものではないそうです。

中東全体では、アメリカは嫌われているのに対し、中立と思われている日本のイメージはダントツにいい。
アフガニスタンを国益追求の道具にしないし、そのために武力を使わない日本の立ち位置が認められている。
日本国内がテロの被害にあっていないというのは、テロリストから、まだ、それほど敵に思われていないということでもある。

日本人は人畜無害とバカにされているのでは決してなく、自分たちのような犠牲者のマインドも理解する勇猛果敢な民族と捉えられているようだった。
どうも、僕たちは、アメリカと一緒に行動しているが、アメリカに対する不信感を共有できる同胞と見られているみたい。

でも、これからアメリカと一緒になって軍事行動をするようになったらどうなるのか、いささか心配です。

コメント
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