三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

スティーヴン・スピルバーグ 『スパイ・オブ・ブリッジ』

2016年01月12日 | 映画

スティーヴン・スピルバーグ 『スパイ・オブ・ブリッジ』は今年のベストワン候補です。

1957年、ソ連のスパイがFBIに逮捕される。
ジェームズ・ドノヴァンは弁護士協会からソ連のスパイを弁護するよう要請される。
国中から憎まれているソ連のスパイを弁護したらどんな非難を受けるか分からない。
妻は「家族を犠牲にするつもり?」と反対し、本人も躊躇する。

しかし、憲法にはどんな人間でも裁判を受ける権利が保障されているというので、弁護人になることを引き受ける。

ソ連のスパイに間違いないのだから弁護のしようがないのではと思いましたが、捜査令状がないのに家宅捜査したことは違法だと訴えます。

ところが、形だけ裁判をすればいいという考えの裁判長は、さっさとすませるよう注意する。
弁護士事務所の共同経営者なのに、仕事のことで無視される。
自宅が銃撃され、捜査に来た警官からは「どうしてあんな奴の弁護をするのか」と怒鳴られる始末。

四面楚歌状態なのに、CIAの職員から「被告が何を話したか」と聞かれ、「弁護士には守秘義務がある」と拒む。

「国を守りたいと思わないのか」と言われて、「あなたはドイツ系だろう。自分はアイルランド系だ。アメリカ人として共通するものは一つある。それは憲法だ」と答える。
最高裁に上訴するが、5対4で敗訴する。

ここがスピルバーグが伝えたかったことではないかと思いました。

憲法の理念を守るために困難にめげずにスパイを弁護したジェームズ・ドノバンを描くことが、アメリカの理想主義賛歌のように感じました。

アメリカ第二代大統領ジョン・アダムスは、アメリカ独立直前の1770年に起こったボストン虐殺事件で、イギリス兵の弁護をしたことを以前書きました。
ボストン市民の怒りはイギリス軍や被告人たちに、さらには被告人を弁護する人間にも向けられた中で、危険を顧みずに弁護人を引き受けたのがジョン・アダムスと友人の弁護士です。
陪審員たちはイギリス兵ら9人のうち2人を除いて無罪の判決を下すという冷静な判断をしています。

映画の冒頭、5人のバイカーに車をぶつけてケガ
をさせたのだから、5人に保険金を支払えと原告代理人が言うのに、保険会社の弁護士であるジェームズ・ドノヴァンは、事故は1件だから1件分しか支払わないと、詭弁を弄します。
こういう人物ですから、腹の中では何を考えていたか、単なる理想主義だけではないんでしょうが。
それでも、アメリカにはこういう伝統があり、それを守っていくべきだとスピルバーグは訴えているんだと思いました。

コメント
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