三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

小西誠・きさらぎやよい『ネコでもわかる? 有事法制』

2015年07月24日 | 戦争

某氏に『ネコでもわかる? 有事法制』という本があると教えてもらいました。
2002年の出版です。
有事法制とは何か、全く記憶になく、調べると、2003年に武力攻撃事態対処関連3法が、2004年に有事関連7法が成立しています。
ですから、『ネコでもわかる? 有事法制』が出版された時は、まだ案だったわけです。

1999年に成立した周辺事態法により、日本はアメリカ軍の全面的な後方支援を定めた。
武力攻撃と武力攻撃事態の定義
武力攻撃とは、我が国に対する外部からの武力攻撃をいう。
武力攻撃事態とは
①武力攻撃が発生した事態
②武力攻撃の発生のおそれがある事態
③武力攻撃の発生が予測される事態

「予測される事態」とはどういう事態なのか、2002年5月、衆院有事法特別委員会の議論。
岡田克也議員「武力攻撃が予測される事態とは」
中谷元防衛庁長官「防衛出動が予測される事態と同じ」
岡田克也議員「防衛出動が予測される事態とは」
中谷元防衛庁長官「武力攻撃の発生が予測される事態で、防衛出動を決断する前の段階だ」
言葉を換えて同じことを繰り返しているだけの中谷元防衛庁長官は現在の防衛大臣です。

武力攻撃事態と周辺事態との関係について、2002年4月、中谷元防衛庁長官は「周辺事態は我が国にとって武力攻撃の事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態だ。当然、周辺事態のケースはこの一つではないかと思う」と答弁している。
小西誠氏は「朝鮮半島有事、台湾海峡有事という事態に対して、従来、日本は米軍の後方支援に徹していたのだが、これからは、これは「武力攻撃が予測される時代」、すなわち「武力攻撃事態」として認定するということだ」と書いています。
武力攻撃事態での自衛隊の戦闘作戦行動は、アメリカ軍との共同作戦として並列して規定されており、「武力攻撃事態の対抗措置」は、自衛隊とアメリカ軍の共同作戦以外の想定は考えられていない。

後方支援のことを自衛隊では兵站といっている。
周辺事態法では、アメリカ軍への兵站を自衛隊が主に担うことになっている。
後方支援は前線と変わりない。
陸上自衛隊の戦略・戦術の基本書といわれる『野外令第2部解説』(陸上幕僚監部編集)という教範(教科書)には、「今や戦場に前後なく、すべてが第一線と考えるべきであり……兵站も単なる支援任務の遂行を第一義とした自衛戦闘の域にとどまっていては苛烈な現代戦の様相に適合することは困難」とある。

「長周新聞」2015年7月号に、こんな安倍批判発言が書かれてます。

「後方支援」についても大インチキで、戦争に前も後もない。食料だけでなく弾薬なども補給しようとしている。(略)まずは兵站を狙うのが常識で、第二次世界大戦でもアメリカはそれをやった。日本軍が上陸した南方戦線でも食料や弾薬が届かず、現地調達が命令されていた。(略)米軍の潜水艦が待ち構えていて、みな魚雷を撃って輸送船を沈めていった。

昔から戦場に前も後もないわけですから、後方支援が安全とは言えません。

有事法制では、戦死者の処置について法律を制定しており、戦死を現実のものとして予測しています。
有事法制関連三法案の中に、防衛出動を命じられた自衛隊員が死亡した場合、「墓地、埋葬等に関する法律」の適用除外とするという項目がある。
『野外令第2部』には、自衛隊が作戦行動時に部隊で独自に火葬場を作り、仮埋葬することが書かれている。
戦闘中に戦死者が出た場合、墓地での埋葬や火葬場での火葬などやっている暇はないし、自治体の許可を取る暇もない。

有事法制には「捕虜の取扱い」の規定もあり、捕虜を獲得するような戦争を予定しており、そのための「捕虜収集所」を開設しようとしている。

有事法制で準備する段階に至ったことは、日本が「戦争国家」へ移りつつあることを国際的に宣言するものにほかならない。

となると、靖国神社国家護持も安倍首相たちは憲法改正と合わせて日程に入れているのではないでしょうか。

有事法制下では、国民の自由も権利も全面的に否定されます。
自衛隊法では医療、土木建築工事、輸送に従事する者に業務従事を命ずるとされているが、これらの業種以外にも政令によって従事命令を受ける対象を広げることができ、これは強制である。

政府見解では、「思想・良心・信仰の自由」について、「内心の自由という場面にとどまる限り絶対的な保障である」が、「外部的行為がなされた場合には、それらの行為もそれ自体としては自由であるものの、公共の福祉による制約を受けることはあり得る」とする。
「沖縄の新聞をつぶせ」発言から思ったのですが、ベトナム戦争当時、アメリカでは反戦運動が盛んでしたが、有事法制、安保法制では政治批判などの言論の自由は認められなくなるのか心配になります。

有事法制とは戦時立法であり、これは戦前の国家総動員法と根本的には同じものと考えるべき。


有事法制に反対、もしくは慎重審議を求める自治体議会での決議は、2002年7月初めまでに463自治体だったそうです。
それなのに私は有事法制をすっかり忘れていました。
安保法制にも慣れてしまい、戦死者を英霊として祀ることに抵抗感をなくしていくのでしょうか。

コメント
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