三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

布施勇如「アメリカにおける死刑の現状」

2015年07月08日 | 厳罰化

「FORUM90」VOL.142に、布施勇如「アメリカにおける死刑の現状」という講演録が載っていました。

アメリカでは死刑判決も死刑執行も減っている。
2014年に死刑を執行したのは7つの州だけ。
一審は郡(カウンティ)の裁判所でさばかれるが、死刑が存置されている州の郡全体の2%でしか死刑判決が言い渡されていない。
死刑判決も死刑執行も減っている原因の一つは、殺人率の減少である。

ここで思ったのが、日本の殺人件数、殺人率は1950年代が多くて(戦前の殺人率はもっと高い)、1966年の犯罪による死亡者数は3661人、殺人認知件数は2198人ですが、2013年の犯罪による死亡者数819人、殺人認知件数939人と3分の1程度にすぎないのに、なぜか死刑判決はどんどん増えていることです。

死刑判決は、
日弁連のHPには、1991年から1997年までの7年間と、2001年から2007年までとを比較すると、第一審で約3倍、控訴審で約4.5倍、上告審で約2.3倍になっているとあります。

殺人に限らず、犯罪が減っているのに、死刑判決が増えている理由は何なのでしょうか。
新聞を見てたら、こんな記事がありました。
少年法適用、18歳未満8割賛成
 毎日新聞が4、5両日に実施した全国世論調査で、選挙権年齢を「18歳以上」に引き下げる改正公職選挙法成立を踏まえ、少年法の適用年齢を「20歳未満」から「18歳未満」にすることへの賛否を聞いたところ、「賛成」との回答が80%に上り、「反対」は11%だった。(略)
今年2月に川崎市中1男子殺害事件で17〜18歳の少年3人が逮捕されるなど少年が関わった凶悪事件が相次いだうえ、6月には1997年に神戸市で起きた連続児童殺傷事件の加害男性が匿名で手記を出版して波紋を広げており、こうしたことが今回の結果に影響したとみられる。毎日新聞7月6日

自民党の稲田朋美政調会長は2月27日、「少年事件が非常に凶悪化しており、犯罪を予防する観点から、少年法が今の在り方でいいのか課題になる」と述べたそうです。
少年事件は減少傾向にあるし、殺人など凶悪犯罪も大幅に減っていることを、弁護士の稲田朋美氏は知らないとしたら勉強不足です。

どうして多くの人は厳罰を求めるのか。
その理由の一つとして知らないということがあると思います。

ある講演会で講師が「殺人が増えている。平気で人を殺す」とか、「親が子を殺し、子が親を殺す。昔はそんなことはなかった。今の日本はおかしい」といった話をしたら、みなさん、そうそうとうなずいていました。
いつ自分や家族が犯罪に巻き込まれるかもしれないという恐怖。
だからこそ、厳罰を求めるのでしょう。

もっとも、刑罰を厳しくすることによる犯罪予防効果は実証されていません。
稲田朋美氏のように治安の悪化を憂える人はこのことを知らないのかもしれません。
厳罰化を求めることは、自民党の文化芸術懇話会での言論統制発言にも通じるように思います。

コメント
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